仮想現実で活躍するキャラクターを等身大サイズで現実世界にも登場させることができる大型LEDパネルを使ったシステムを松山市内の電気材料販売会社が開発した。ライブ会場での運用を始めたところ、CGキャラクターのアバターを使って動画配信をしている「VTuber」らから問い合わせが相次いだという。アバターを等身大で映し出すことができることから、イベントや展示会などでの会場案内といった使い方もあるという。
LEDに着目
開発したのは松山市の「三五屋」。白物家電やラジオのアンテナといった電気材料の卸販売会社だったが、LED技術に着目した。
3代目社長の徳岡大治郎さんは「うちはずっと町の電気屋さんが顧客だったが、今は電気屋さんは衰退する一方。このままではいけないと思っていた」と話す。
開発したのは「モノリスシステム」という商品。モノリスと呼ぶ縦194cm、横57.6cmのLED画面で幅は2.5cmほど。表示材を含めた重さは36kgほどで、キャスター台で簡単に移動できる。同社はこれを5台保有し、レンタル事業を始めた。
「大手メーカーが作る大型のLEDパネルはとても高価で、大人数を動員できるスタジアムのような会場でなければ需要がない。イベントの主催者がすぐ手の届くような手ごろなLEDパネルは既製品ではなかなかなかった。うちは等身大で勝負しています」と徳岡さんは話す。
盛り上がるライブ
レンタル料は1日30万円からに設定した。VTuberのライブイベントで実証実験を行ったところ、反響の大きさに驚いた。情報発信力の大きい「インフルエンサー」でもあるVTuberによる宣伝効果は抜群で、同社には問い合わせが約千件も寄せられたという。
モノリスシステムには、実際の人の動きをデジタル化するモーションキャプチャーシステムを組み合わせており、遠隔でVTuberのCGキャラクター(アバター)を操作。バンドミュージシャンたちが演奏する中、舞台中央に置かれたモノリスにキャラクターが映し出されると、会場は大いに盛り上がったという。
大阪・ミナミの光る階段
三五屋は大阪市北区のグランフロント大阪にサテライトオフィスを置き、知的創造・交流の場「一般社団法人ナレッジキャピタル」に参画。開発拠点にしている。
同市中央区にある若者文化の発信地として知られる通称「アメリカ村」にあるファッションビル「心斎橋ビッグステップ」でも、階段照明などを手掛けた。
新型コロナウイルスの感染拡大で、予定していた仕事がなくなるなど苦しい状況ではあるが、「道の駅」などの農産物販売所にモノリスを置いて、生産者がご当地キャラとして登場し、青果物について説明するといった使い方を提案しているという。
「光りものが好き」と若い頃はマイカーをネオン管で飾り立てて走っていたという徳岡さん。「LEDパネルは進化している。ランダムに光らせるだけでなく、グラデーションをつけるなど、光をコントロールするところまで来ている」と話していた。(村上栄一)

