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産経新聞


 【ニューヨーク=平田雄介】米ニューヨークの連邦地裁は24日、米司法省と中国通信機器大手、Huawei副会長兼最高財務責任者(CFO)孟晩舟(もう・ばんしゅう)被告の司法取引成立を認めた。同省の要請でカナダ当局が拘束し詐欺などの罪で起訴された孟被告は、2022年末まで合意の条件を守れば起訴猶予となる。カナダから米国へ身柄を引き渡す要求は取り下げられ、カナダの裁判所は孟氏の釈放を決定した。

 孟氏は、中国人民解放軍出身の華為技術創業者、任正非(にん・せいひ)氏の娘。中国は孟氏を帰国させるよう繰り返し求め、米中対立の一因となっていた。孟氏はカナダからオンラインで出廷したこの日のニューヨークの連邦地裁の証言でも「無罪」を主張したままで、米紙New York Times(電子版)は「バイデン政権は懐柔的な対中接近のシグナルを送った」と伝えた。米司法省は孟氏が「責任を認めた」と起訴の効力を停止した理由を説明している。

 孟氏は18年12月、米政府の要請に基づき、カナダ西部バンクーバーの空港で拘束された。米国の対イラン制裁を逃れるため銀行に虚偽の説明をしたなどの疑いが持たれており、19年1月に起訴された。その後、保釈され、カナダの裁判所は身柄を米国に移送すべきかを審理。判決の言い渡しが10月21日に予定されていた。

 孟氏の拘束をカナダに要請したのは当時のトランプ米政権。米国の法律で孟氏を裁くべきだと主張し、中国との対立が深まった。一方、カナダ当局が孟氏を拘束した直後、中国当局は国家秘密を探った罪などで中国に滞在していたカナダ人2人を逮捕。孟氏を拘束したことへの報復とみるカナダ政府を巻き込んだ外交問題に発展した。

 カナダ人2人のうち、実業家のマイケル・スパバ氏は21年8月、中国の裁判所で懲役11年などの判決を言い渡された。もう1人はカナダ外務省を休職中のマイケル・コブリグ氏。今後、カナダ政府が中国に求めてきた「2人のマイケル氏」の帰国が実現するかも焦点となる。

 一方で、法人としてのHuaweiに対する米司法省の訴追手続きは継続する。バイデン政権は前政権と同様に華為技術を「安全保障上の脅威」とみなし、禁輸措置を続けている。Huaweiを中心とした米中のハイテク摩擦は続くとみられている。