このたびパラミロン研究会では、本年1月に実施した「第1回不安疲労実態調査」に続き、コロナ禍における不安と疲労の最新実態を把握するために、本年9月に20~70代の男女1,200人にアンケート調査を実施しました。
長引くコロナ禍で感染拡大が繰り返されています。新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、新規感染者数はピーク時より落ち着きつつあります。しかし、変異株の流行や感染症シーズンによる感染再拡大への不安に加えて、生活の制限や人と繋がる機会も非常に限られた生活が続いており、出口の見えない日常の中で、社会全体に不安や疲労感が蓄積していることが推察されます。
今回の調査で、コロナ禍で顕在化している疲労「不安疲労」を感じる事が増えた人は全体で54.5%(前回比1.8pt増)に上りました。また男性(48.8%)に比べ、女性(60.0%)の方がより不安疲労を抱えている実態が明らかになりました。「不安疲労」が特に顕著なのが「高校生の子供をもつ母親」(67.6%)です。学校や家庭での感染クラスターが増加するなかで、家庭で家族を守る母親の「不安疲労」が増大していることがうかがえます。また、20代女性の非正規社員の「不安疲労」が75.0%と極めて高く、社会的に不安定な方々へのケアも優先課題と言えます。また、今やりたいことは「国内・海外旅行に行きたい」がトップとなり、外出規制緩和後の人々の行動が示唆される結果となりました。
※「不安疲労」とは、生活の変化によりストレス・不安を感じることが多くなり、何となくだるい・気持ちが重いなど疲労感を感じている状態。
今年実施された「第17回日本疲労学会総会・学術集会」<7月28日(火)~8月31日(火)>にて発表・課題提起された。
■調査トピックス
1. コロナ禍で「不安疲労」が増えたと感じる人が54.5%と半数を超える。男女別では、女性の6割が「不安疲労」が増えたと自覚。
2. ワクチンを2回接種した人でも半数以上(50.9%)が「不安疲労」が増えたと感じている。
3. ワクチン接種2回完了した人が最も感じている不安は、「感染拡大が繰り返されること」(55.6%)。そのうち64.8%が、第5波でより不安が強まったと回答
4. 特に「高校生以下の子供を持つ母親」の「不安疲労」が顕著!3人に2人(67.6%)が「不安疲労」を抱えている
5. 高校生以下の子供を持つ母親の不安疲労の関連症状が深刻化!62.9%が「不安疲労」に関連する症状を感じており、そのうち93.9%が第5波以降に不安疲労の関連症状が強まったと回答
6. 20代女性の非正規社員の75.0%が「不安疲労」を感じている。他年代に比べ高い割合を示す。
7. 今やりたいことは「国内・海外旅行に行きたい」が48.1%でトップ!行動制限緩和後の行動が予測される結果に。
●1. コロナ禍で「不安疲労」が増えたと感じる人が54.5%と半数を超える。男女別では、女性の6割が「不安疲労」が増えたと自覚。
当研究会では、“生活の変化によりストレス・不安を感じることが多くなり、疲労感を感じている状態”を「不安疲労」と呼んでいます。「不安疲労」は長引くコロナ禍によって顕在化している精神的疲労と身体的疲労が結びついた心身の不調と言えます。回答者に「不安疲労」を説明したうえで「不安疲労」を感じているか伺ったところ、全体の54.5%が「不安疲労を感じることが増えた」(前回より1.8pt増)と回答しました。
また男性(48.8%)(前回より1.1pt増)に比べ、女性(60.0%)(前回より2.3pt増)の方がより不安疲労を抱えている実態が明らかになりました。
●2. 不安疲労に関連する不調「疲労感/倦怠感」、「意欲低下」、「ストレス」、「睡眠不調」が上位を占める。女性が心身の不調をより多く抱える傾向
次に、最近感じている心身の不調について聞いたところ、1位は「疲労感/倦怠感」(33.7%)、2位は「なんとなくやる気が出ない・体を動かす気が起きない」(31.8%)、3位「ストレスを感じやすい」(28.7%)、4位「よく眠れない」(18.6%)と「不安疲労」と関連する症状が上位を占めました。男女で比較すると、不安疲労に関連する4つの症状「疲労感/倦怠感」、「意欲低下」、「ストレス」、「睡眠不調」すべての項目について女性のポイントが高くなっており、女性の方がより強くコロナ禍の影響を受け心身の不調を感じていることが明らかになりました。
●3. 不安疲労に関連する症状を感じる人は全体の57.0%。そのうち84.1%が、この夏のコロナ感染第5波以降、さらに症状が悪化したと回答
不安疲労に関連する症状「疲労感/倦怠感、意欲低下、ストレス、睡眠不調など」を一つでも感じている人は全体の57.0%に上りました。そのうち第5波以降にその症状が悪化していると回答している人は84.1%を占めました。繰り返す感染拡大の中で不安疲労が蓄積し、不安疲労と関連する症状がより深刻化していることがうかがえます。
●4. ワクチンを2回接種した人でも半数以上(50.9%)の人が「不安疲労」が増えたと感じている
「不安疲労」についてワクチン接種との関連を分析したところ、「1回目接種が完了した」人の64.4%、「接種したいがまだ接種していない」人の61.7%が「不安疲労」が増えたと感じており、ワクチン接種を希望しながら未接種の人と、ワクチン2回接種が完了していない人に「不安疲労」の割合が高い結果となりました。一方で、「2回目接種を完了した」人も50.9%が不安疲労が増えたと感じており、ワクチン接種を終えた人にとっても「不安疲労」は身近な不調であることがうかがえます。
●5. ワクチン接種の有無に関わらず、半数以上が感染への不安を抱える。コロナ禍における不安は、「自分がウイルス感染すること」(53.8%)「感染拡大が繰り返されること」(50.5%)。
不安疲労の大きな要因について聞いたところ、「自分がウイルス感染すること」(53.8%)、「感染拡大が繰り返されること」(50.5%)、「家族がウイルス感染すること」(48.6%)が上位に並びました。今までにない第5波の感染急拡大を経験して、「コロナ感染」への不安が増大していることがうかがえます。 「自分がウイルス感染すること」 への不安は、「接種したいがまだ接種していない」人の55.3%、「1回目接種が完了した」人の57.1%だけでなく、「2回目接種が完了した」人も53.8%が感染への不安を感じています。
●6. ワクチン接種2回完了した人も不安を抱えている。最も感じる不安は、「感染拡大が繰り返されること」(55.6%)。そのうち64.8%が、第5波でより不安が強まったと回答
ワクチン接種を2回完了した人も、コロナ禍で不安を感じていることが分かりました。「感染拡大が繰り返されることへの不安」を、最も多くの人が挙げており、55.6%に上りました。そのうち64.8%の人が、この夏の第5波以降不安が強まったと回答しており、ワクチン接種を終えても、収束が見えない「感染拡大」への不安を多くの人が抱えている実態が浮き彫りとなりました。
●7. 特に「高校生以下の子供を持つ母親」の「不安疲労」が顕著!3人に2人が「不安疲労」を抱えている
新型コロナ変異株「デルタ株」の感染拡大に伴い、10代、20代の若年層にも感染が広がっています。その一方で、10代、20代のワクチン接種は遅れているのが現状です。こうした状況を反映し、女性のなかでも「高校生以下の子供」を持つ母親に「不安疲労」が多くみられ、3人に2人(67.6%)が「不安疲労」が増えたと感じていることが明らかになりました。
●8. 高校生以下の子供を持つ母親は、「家族が感染すること」(55.2%)「子供が感染すること」への不安を強く持っている(54.3%)
高校生以下の子供を持つ母親が感じる不安の上位は、「自分がウイルス感染すること」(56.2%)、「家族がウイルス感染すること」(55.2%)、「子供が感染すること」(54.3%)がほぼ同じ割合で上位に並びました。特に、「子供が感染すること」への不安を感じている母親の82.5%が、第5波以降に、「子供が感染すること」への不安がさらに強まったと感じています。感染クラスターは、第5波以降家庭や学校でも多くみられるようになっています。高校生以下の母親にとっては、子供の感染への不安は依然として根強く残っていくことがうかがえます。
●9. 高校生以下の子供を持つ母親の不安疲労関連症状が深刻化!62.9%が「不安疲労」に関連する症状を感じており、そのうち93.9%が第5波以降不安疲労関連症状が強まったと回答
高校生以下の子供を持つ母親のなかで、不安疲労に関連する症状「疲労感/倦怠感、意欲低下、ストレス、睡眠不調など」を一つでもを感じている人は全体の62.9%に上りました。そのうち第5波以降にその症状が悪化していると回答している人が93.9%と非常に高い傾向を示しました。第5波による医療体制のひっ迫を肌身で感じ、家庭での家族や子供の感染予防に苦慮した体験を通じて、母親層に不安疲労が蓄積し、不安疲労関連症状が深刻化していることがうかがえます。
不安疲労に関連する症状=疲労感/倦怠感、何となくやる気が出ない・体を動かす気が起きない/ストレスを感じやすい/よく眠れない
●10. 20代女性非正規社員の75.0%が「不安疲労」を感じている。他年代と比べ高い割合を示す。
コロナ禍では特に女性の非正規社員がシフト減による減収や不安定な職場環境等により不安を抱えていると言われています。今回の調査でも、女性非正規社員で「不安疲労」を感じる人の割合は64.0%と、女性全体(60.0%)と比べ、4.0pt高いことが分かりました。特に20代女性の非正規社員の「不安疲労」を感じる人の割合が75.0%と顕著に高いことが明らかになりました。新型コロナウイルスの感染不安に加えて、コロナ禍による収入の減少など生活への影響が指摘されていますが、20代の非正規社員は外食産業や小売店舗でのパートタイム就労する割合が比較的高く、身近に家族のいない単身世帯の方も多いため、出口の見えないコロナ禍が続くなかで、先行きに対する不安感が高まっていることが推察されます。
●11. 今やりたいことは「国内・海外旅行に行きたい」が48.1%でトップ!行動制限緩和後の行動が予測される結果に。
今やりたいことについて聞いたところ、「国内・海外旅行に行きたい」が48.1%でトップとなりました。やはり、長引く自粛生活の反動で、旅行に行きたいという思いは強いようです。ワクチンの接種証明や検査の陰性証明を活用し、外出制限を緩和していくことも視野に入ってきた中で、行動制限緩和後の人々の行動が予測されるような結果となりました。
■調査総評<予防医療専門医・パラミロン研究会 理事 久保 明先生>
繰り返される新型コロナウイルス感染拡大の中で、私たちは1年以上に渡りコロナ感染への不安を日々抱えながら暮らしています。コロナ感染への不安だけでなく、日常生活の制限や、コミュニケーションの希薄化など、心身の不調に繋がりやすい社会環境のなかでの生活を余儀なくされています。
パラミロン研究会では、研究の柱の一つとして疲労研究の立場から、長引くコロナ禍による日本人の心身の不調についての実態を調査してまいりました。本年1月実施の調査では、コロナ禍で感じる不調は、「意欲低下」「疲労感/倦怠感」「ストレス」が特徴であることが分かりました。これらの症状は、まさに「不安疲労」による症状であり、過半数の方が不安疲労を抱えている実態が明らかになりました。
第5波の感染拡大の渦中にある本年9月に第2回目の調査を実施したところ、「不安疲労」がさらに深刻化している実態が明らかになりました。ワクチン接種が進んでも多くの方が「感染拡大が繰り返されること」への不安を抱え、「疲労感/倦怠感、意欲低下、ストレス、睡眠不調」を感じておられます。特に「不安疲労」が顕著なのが「高校生の子供をもつ母親」の方々です。学校や家庭での感染クラスターが増加するなかで、子供たちの学習や交流の機会を与えたいという母親としての願いと感染への不安との板挟みで「不安疲労」が増大していることがうかがえます。これから受験シーズンが本格化する折、子供たち本人とともに母親へのケアが重要なテーマといえます。また、20代女性の非正規社員の「不安疲労」が極めて高い事実からも、社会的に不安定な方々の心身の不調への目配りや、行政や企業などでの健康管理なども重要課題と言えます。
「不安疲労」を感じている人は身体的・精神的どちらの不調も感じやすい状態にあります。継続的なストレスや不安によって自律神経の乱れが続くと、自律神経のバランスが元に戻りにくくなり、常に疲れやすく免疫力の低い体になってしまいます。「不安疲労」は放置しておくと“うつ”に移行する危険性もあるので、「不安疲労」を感じたら、早めの対処が大切です。過度に「不安疲労」を溜めないためにも、生活のリズムを一定にする・不安要素となる情報を必要以上に見ない・緊張を解くために適度に体を動かす…など自分でできる範囲で「不安疲労」を軽減する工夫をしてみるとよいと思います。
【久保 明先生 プロフィール】
内分泌・糖尿病専門医/医学博士
慶應義塾大学医学部卒業。専門は予防医療とアンチエイジング医学。
銀座医院院長補佐・東海大学医学部客員教授・日本臨床栄養協会副理事長。
『カリスマ内科医と組み立てる DIY健康大全』(晶文社)他、著書多数。
■調査概要
期間 :2021年9月3日~5日
対象 :20-70代 男女
回答数:1,200人
エリア:関東(1都6県)・関西(2府4県)
手法 :インターネットリサーチ
機関 :株式会社クロス・マーケティング
■『パラミロン研究会』について
パラミロン研究会は、様々な研究領域の研究者が集い、2017年に発足しました。パラミロンの機能性についての多面的な研究を行い、パラミロンの機能性と関りの深い精神的・身体的疲労について継続して研究を行っています。パラミロンは、ユーグレナ属のみが細胞内貯蔵物質として生成する多糖類で、食物繊維の一種です。
会長 : 矢澤一良(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門 部門長)
WEBサイト: https://paramylon.jp