今年3月に建て替えを発表した「帝国ホテル 東京」。その新本館のデザインアーキテクトに、フランス・パリを拠点に活動する田根剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects代表)が起用された。新本館は2036年に完成予定だ。
低層部は31mラインに高さを揃え、高層部は雛壇状に
帝国ホテルは10月27日にプレス発表会を開き、「2036年に完成予定の帝国ホテル 東京 新本館建設に向け、フランス在住の建築家 田根剛氏のデザイン案を採用」と発表した。国内外の複数の建築家に声をかけてコンペを実施し、2019年11月に、田根氏に決まった。
帝国ホテルの定保英弥・代表取締役社長は「当ホテルの歴史や理念をしっかり継承しながら、未来に向けて『新しいグランドホテル・迎賓館』をつくることに、一緒に挑戦できる若い建築家に頼みたかった」と話す。定保社長は2018年に、田根氏がアートディレクションを務めた「FUROSHIKI PARIS」展の新聞記事を見て、同氏のことを知ったという。
現時点では、田根氏が「新本館の外装デザイン」を手掛けるということが決まっている。田根氏が提案したコンセプトは「東洋の宝石」。フランク・ロイド・ライトが設計した2代目本館(ライト館)を形容するのに使われてきた言葉だが、これを継承し、未来につなげたいという。
現在公表されている外観イメージは、低層部は重厚感を持たせつつ日比谷通り沿いの31mの表情線に揃えた高さとし、高層部は雛壇状にして街に圧迫感を与えないようにするというもの。使用する素材として、田根氏はライト館で石の文化が取り入れられたことを挙げ、「石を扱いながら建築をどうつくれるか、それにチャレンジしたい」と語った。
帝国ホテルは1890(明治23)年に開業。設立発起人総代の1人だった渋沢栄一は、開業以来19年間にわたり経営を舵取りし、初代会長を務めた。初代本館を設計したのは渡辺譲だ。
2代目本館のライト館は1923年に竣工。現在の本館は高橋貞太郎の設計により、1970年に竣工した。高橋は神田の学士会館や日本橋の髙島屋東京店、静岡・伊東の川奈ホテルなどの設計でも知られる建築家だ。
帝国ホテルは2024年から、まずタワー館の建て替えを進め、本館は2031年から36年にかけて建て替えを行う予定だ。同ホテルは「内幸町一丁目街区」再開発計画の一画を占めるが、定保社長によると「その中での位置付けはまだ分からない」という。
田根氏は本プロジェクトについて「人生をかけたチャレンジになる」と意気込む。同氏の最新プロジェクトでは、パリのオテル・ド・ラ・マリーヌ館内に「アール・サーニ・コレクション」の展示ギャラリーが11月にオープンする。こちらも楽しみだ。(長井美暁)
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