スクウェア・エニックスの新作スマホアプリ「ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ(BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS,以下BDBL)」(iOS / Android)は,「ブレイブリー」シリーズの10周年記念企画として発表されたスマホ向けRPGだ。
「ブレイブリー」シリーズは,2012年に発売されたニンテンドー3DS向けソフト「ブレイブリーデフォルト」を皮切りに,世界累計出荷数とダウンロード販売本数が計300万本を突破しているスクエニIPだ。
直近では,Nintendo Switch向け最新作「ブレイブリーデフォルトII」が2021年2月26日に発売。初代BDと同様,楽曲をRevo氏(Sound Horizon / Linked Horizon)が担当したことで話題を呼んだ。
そして10周年記念企画となるBDBLについてだが,その大きな特徴は本作オリジナルキャラクターをはじめ,過去のシリーズ作品の登場人物や世界がクロスオーバーしているところである。
それも「お祭り的に詰め込みました」ではない。過去作のシナリオも手がけてきた網代恵一氏の手により“物語としても設定としても世界が入り交じることの必然性”からしっかりと練られているものだった。
おなじみのバトルシステム「ブレイブ&デフォルト」も健在で,スマホ向けに最適化された戦略的なバトルももちろん完備。
今回はこのBDBLのAndroid向けクローズドβテストが,2021年7月28日まで行われたため,先んじてプレイした感触を紹介していこう。
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ルクセンダルクやエクシラント大陸まで広がる,
クリスタルをめぐる新たな冒険へ
舞台は,ヴェルメリオ大陸にある壁に囲まれた都市「錬金の街ブラス」。この大陸では約20年前に起きた,クランブスル共和国と戦闘民族国家ザレルの戦争の爪痕が今なお残り,大地は荒廃の一途をたどっていた。
ブラスは錬金学を筆頭に,多彩な学問を学び,探求する学者たちの街で,都市中央にはそれらの象徴である学塔が建立されている。
クランブスル共和国に属する街としては都に次ぐ規模を誇るが,住民らは日々の地震や火山,日照りなどの自然現象に悩まされていた。
そんなある日,未知の“光の球”とともに異世界――「ルクセンダルク」や「エクシラント大陸」から「来訪者」が現れた(※)。
※過去のシリーズ作品で描かれていた世界から,シリーズファンにはなじみのある登場人物たちが飛ばされてきてしまった,の意
ブラスに住む錬金術師の少女「クレア」(CV:楠木ともり)は,彼女を護衛する元盗賊「スティール・フランクリン」(CV:斉藤壮馬)とともに,かつて錬金術の中心地となっていたピラミッドを調査する。
そこで彼女らは,ルクセンダルクの冒険者「サンドラ・カサンドラ」(CV:伊藤 静),エクシラント大陸にある魔法の国ウィズワルドの魔法学者「ルーファス」(CV:近藤 隆)と出会った。
クレアたち4人は,ピラミッド地下の遺跡から聞こえてくる不思議な声に誘われ,錬金の妖精「ルミナ」を見つけた。
小さき彼女はその口で“8つの希望”――火・水・風・土の「クリスタルの息吹」を二つずつ集めることで,この世界の荒廃を止められると告げる。しかし,ヴェルメリオ大陸には当のクリスタルが存在しない。
そこで4人はルミナの導きにより,こことは異なる世界,ルクセンダルクやエクシラント大陸でクリスタルの息吹を探すことになった。
一方,クレアたちブラスの者とは敵対関係にある国ザレルでも,クリスタルの命脈を求め,異世界へと旅立つ計画が着々と進行していた。
ザレル側も先の戦争にまつわる,クランブスルへの遺恨があるようだが,クリスタルを狙う理由はそれだけではないようで。
4人は旅立った先,エクシラント大陸のウィズワルドで,クリスタルを取り戻すべく戦っている「ブレイブリーデフォルトII」のセス,グローリア,エルヴィス,アデルと出会う。
そこで,クレアたちもクリスタルの息吹を手に入れるべく行動を開始するのだが……というのが序章から一章までのあらましだ。
本稿ではストーリーラインの要約にとどめているので,紹介していない登場人物や彼ら彼女らの心境も,実際はたくさん詰まっている。
BDBLではその戦記的な切り口をはじめ,異なる世界の人間が存在していることもあってか,ゲーム開始直後からヴェルメリオ大陸の歴史・文化的な背景がこれでもかと丁寧に解説されていく。
それぞれの国の成り立ち,先の戦争はなぜ起きたのか,それはどのように終結し,現状どうなったのか。これらがつぶさに語られていく。
国家,怨恨,思想などが入り乱れた事情はかなり細かく説明されるので,最初はなかなか覚えられないかもしれない。
ただ,基本的にはシリアスなのに,ところどころで真面目な空気が抜けるようなやり取りがはさまる,独特なテンポ感も心地いい。
重厚な物語好きにはたまらない設定が次々と飛び出す一方で,そういうのはちょっと目が滑るかも……という人も,登場人物たちのユニークなかけ合いでガス抜きされ,興味関心が引かれていく。
ビジュアル面も見たとおり“ブレイブリーさながら”の出来栄えとなっており,全面的にBDらしく仕上げられている印象だ。
伝統のブレイブ&デフォルトを駆使して,
手ごわいボスを戦術的に撃破
ここからゲーム面の話を進めよう。BDBLではキャラクター4人でパーティを組み,物語と戦闘を交互してメインストーリーを進めていく。
各キャラクターはHP+防御が高い「防御(前衛)」,攻撃力が高い「近距離(前衛)」,攻撃力が高く被撃しにくい後衛「遠距離(後衛)」,味方の回復やサポートを得意とする「支援(後衛)」の4タイプに分けられており,それぞれ「物理」「魔法」の属性も存在する。
これらの特性を把握し,敵に合わせてパーティを編成するわけだ。
彼らキャラクターの入手方法は,いわゆるガチャではない。
ホーム画面から「錬金の街ブラス」をタップすると,さまざまな施設(=機能)へのアクセスに加え,広場の来訪者たちと“1日1回だけ誰かと会話”できる。ここで話相手に選んだり,贈り物を渡したりするとそれぞれの友好度が高まり,最大値になると仲間が加入する仕組みだ。
ただし,広場に現れるキャラクターは毎日ランダムのため,仲間にしたいキャラと連日会話できるとは限らず,時間も相当かかる。
CBT時の感覚で言えば,「1人あたり30回〜40回ほど会話できれば加入(出現はランダム)」「加入済みの仲間と話すと贈り物がもらえ,対象に渡せばブースト可能」「広場の来訪者は未加入が最低1枠。加入済みの仲間が多いほど贈り物を集めやすい」という所感であった。
手っ取り早く仲間にしたい場合は,ガチャなどで使用するゲーム内通貨「ミスリル」を使い,リソースと直接交換で雇用できる。
なお,ガチャではキャラクター専用武器をはじめとする装備品を入手できるので,キャラを増やすか,武具を増やすか。非常に悩ましい。専用装備の入手が先で,後からキャラという流れもありうる。ついでに,ミスリルで購入するアイテムセット類のラインナップも魅力的なので,いずれにせよマネタイズの主軸はガチャ一辺倒ではないイメージだ。
それに,キャラクターごとの強弱はあまり感じられず(通常攻略においての話),SRとSSRといった区分けもない。差と言えば戦術や運用といった観点のもので,明確な上下はない印象だ。レアリティに該当する☆の覚醒(ランク上げ)も,ゲーム内獲得アイテムで完結する。
そのため,クレアたち初期メンバーも“RPGにおける正規メンバー”のようにまっとうに強い。仮にシリーズファンではなく,過去作の登場人物を知らないからあまり興味が持てなくても,クレアたちが主人公のRPG作品,それこそコンシューマRPGのようなスタンスで楽しめる。
ゲームはスタミナ制のクエスト形式で,ストーリーの合間などに人や魔物たちとのバトルが発生する。ときには来訪者と同じく,光の球から異世界の魔物が現れることもある。ブレイブリーシリーズということで,バトルの手応えはなかなかのものである。
戦闘は,オーソドックスなコマンド選択式のターン制バトルで,通常攻撃を含む,MP消費で放つ各キャラクター固有の「コマンドアビリティ」を選択し,Wave制で出現する敵パーティの全滅を目指す。
コマンドアビリティは全キャラが最初から三つ備えていて,強力なものほど消費MPも増える。単体攻撃や列攻撃,ときにはランダム対象など効果もさまざまなので,どの局面でなにを使うかよく考えよう。
そしてシリーズのバトルシステムの基幹とされているのが,特殊コマンド「ブレイブ」と「デフォルト」の存在だ。ファンには説明いらず,かつ未経験者でも「OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)」などの同社作品に触れていれば,似た概念と思っておけばいい。
バトル中,ブレイブを選ぶと特殊なポイント「BP」を消費して,最大3回まで行動回数を増やせる。基本行動1回+BP3で追加行動3回とすれば,1ターンで最大4アクションも可能だ。逆にデフォルトを選ぶと敵から受けるダメージを50%軽減しながら,BPを1増やせる。
端的に,攻撃・回復のための“消費とタメの二択”というわけだ。
覚えておくべきは,ブレイブはBPが0でも“値マイナス3まで使用可能”なこと。BPはマイナス値になると,BPが0になるまで1回復=1ターン行動不可となるが,このシステムのおかげで「勝利前提でBPを注ぎ込みラストターンとする」といったバトルの終わらせ方が可能である。
BPをためてボス戦を攻撃連打で畳みかける,マイナスにしてでも回復&サポート連打でしのぐ。このブレイブ&デフォルトをどのように捉え,扱えるかが,プレイヤー次第の戦略となっている。
なお,バトル中の行動キャラクターは敵味方ともに順番が決まっていて,次に回ってくる手番は画面左のタイムラインで確認できる。
ストーリーを進めていくと要所でボスが出現する。本作にはオートバトルも搭載されているものの,BDBLのボスは「オートで戦っては全滅必至」なくらい強いので,なるべく手動で堅実に戦う必要があった。
また,レベルが足りない場合やリソース集めには,クエストマップ上にある「周回用クエスト」を利用し,スタミナが続く限り自動で周回するのもいい。こちらは1日に挑戦できる回数が決まっているが,効率的に経験値やゲーム内通貨「pq」を獲得できる。
このほか,各種アイテムが手に入る「強化クエスト」も存在する。
キャラクターはバトルで経験値を得てのレベルアップのほか,ガチャやバトル報酬で手に入る装備品,対象キャラ専用の「アーティファクト」を装備して,コマンドアビリティなどの性能をアップできる。
さらに,キャラはそれぞれ「○○の石板」を使用して最大レベルを引き上げられるほか,「○○の教本」でコマンドアビリティをレベルアップ,バトルで入手できるJPを消費して習得する「サポートアビリティ」,このほか装備品関連の強化システムも充実している。
コンテンツ面も,キャラクターを送り出して経験値やアイテムを手に入れる「遠征」,素材アイテムを使って別のアイテムを作り出す「錬金」,経験値獲得量アップなどの恩恵を受けられる「チーム」,最深部を目指してフロアを進んでいく「ブラス地下遺跡」,ソロやマルチで強力なボスに挑む「レイド」などもある。CBTでは未開放であったが,キャラストーリーや闘技場なども楽しめるようだ。
これらの機能は,ストーリー進行で徐々に開放されていくものだ。
BDBLに実際に触れてみたところ,ゲーム開始当初から空気感を伝えてくる骨太なストーリー,シンプルながらも歯ごたえのあるバトル,多くのテスターの前に立ちふさがったであろう2章ボスに,相変わらずの爽快なBGMといった“ブレイブリーらしさ”を押さえつつ,スマホナイズしたRPGの手軽さもしっかりと構築してきたという印象を受けた。
とくに“過去作の世界で起きた数年後の状況”なども垣間見えてきて,いずれかの作品を遊んだ人には驚きもあるかもしれない。
発表から間もなくのCBTであったが,ゲームはすでにかなり作り込まれていて,正式リリースもそう遠くなさそうな気がする。
初代BDの発売から10周年。スクウェア・エニックスのRPGという定評を差し引いても,一つの作品がシリーズ化し,ここまで途切れることなく定期的に新作が送り出され,支持され,続いてきた。それはゲーム業界ではたたえられるべき信頼の証明だ。そのうえでBDBLに関しては間違いなく,「スマホで正統なブレイブリー」と評される予感がしている。