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理屈抜きに人気なものは人気なのである。1047 Gamesが初めて手がけたゲーム「Splitgate」が現在大きな注目を浴びており、大成功を収めている。わずかな資金で何年も活動してきた同チームは5月以降3回の資金調達を行い、最新の調達額はなんと1億ドル(約110億円)にまで達している。

共同創設者兼CEOのIan Proulx(イアン・プルース)氏は、この成功はひとえに熱心なコミュニティのおかげであり、また「シリコンバレー的なアプローチによるゲームビジネスの運営」が成功の理由であると話している。

1047 Gamesが設立された約5年前、ゲーム(Free to Play、無料でプレイ)のPCゲームはニッチなジャンルであった。もちろんアプリ内課金に依存するモバイルゲームも多くあり、「World of Tanks」や「Warframe」のようなゲームが成功を収めていたものの、当時は「フォートナイト」もF2Pがこれほどまでに大きな利益を生み出せるということを業界に示してはいなかった。

「5年前はヒットするかどうかにすべてを賭けるというやり方が主流でした。何年もかけて製品を開発し、莫大な資金を投入して発売し、それがどうか成功することを願うという方法です」とプルース氏は振り返る。「しかし我々は予算をすべて使い、失敗したら廃業してしまうようなリスクを負うわけにはいかないと考えました。そこで私たちはソフトローンチを行い、何が起きるかを見て学び、聞き、データを観察しようと考えたのです。成功するかどうかわからない製品のマーケティングにお金をかける必要はありません。そもそもお金は大して持っていなかったのですが、もしお金を使うのなら、優れた指標やKPIを持つ製品に使うべきです」。

馴染みのない読者のためにご説明しよう。Splitgateは「Quake III Arena」や「Unreal Tournament」、「HALO」といった昔ながらのアリーナシューティングゲームのDNAを受け継いだ、多人数参加型オンライン対戦シューターだ。上述のゲームも十分に熱狂的なゲームではあるが、Splitgateではその名も「Portal」と呼ばれるポータルで空間を曲げる機能が追加されており、アクションにとんでもない機動力が加わっている。

画像クレジット:1047 Games

プルース氏によると、Splitgateがバトルロイヤルやヒーローシューティングなどの人気ジャンルに対抗できるとは思えないという理由で、同氏は投資家から何度も門前払いを食らったという。しかし、おなじみの方式をアップデートしたこのゲームは必ず成功すると確信を持っていた同氏。需要は確実にあるのに、人々はそれを忘れてしまっているだけなのだと。「若い頃、みんなこういったゲームをプレイしてきたのです。この市場が死んでしまったのは、みんながこういったゲームを愛さなくなったからではありません。大きな動きやイノベーションが起きず、大衆に受け入れられるものが存在しなかっただけなのです。『Quake Arena』はとてもすばらしいですが、とても難しいゲームです。『フォートナイト』好きの12歳の子どもはプレイしてくれないでしょう。私たちはこの空白を埋めることができるのです」。

古典的なシューティングゲームによく似ているSplitgateだが、プルース氏によると「Rocket League」が比較対象としてより近いものだという。Rocket Leagueはすばらしいコンセプトを可能な限り安価で実現したゲームで、アイテムやその他のオプションの特典で収益を上げるという、ゲーム界の大成功例である。

「Splitgateはただ楽しんで、頭を空っぽにしてプレイすることができますが、スキルはどこまでも向上させることができます」と同氏。

とはいえ、同ゲームは2019年に同社から完成形を持って登場したわけではない。まずは最小限の機能で楽しめるゲームをリリースした。「とても楽しいゲームでしたし、基本はできていました。しかしビジネスやフリープレイを運営するには、ただ単に楽しいゲームを作るだけでは十分ではないということを学びました」。

どんなゲームでも、単純に人々がプレイしなくなってしまうというのが最大の危機である。そこでチームは「シーズン」や「新機能」「新マップ」など、Splitgateを何年も続けられる「無限のゲーム」にするために、リテンションとコミュニティからのフィードバックに重点を置いたのだ。

当初のMVPでのリリースでは、最初の1カ月間で約60万件のダウンロードを達成。そして2021年夏、マルチプラットフォームでの大規模なリニューアルが行われ、まだ「オープンベータ」ではあるものの、7月には1000万件以上のダウンロードを記録し、大きな話題となった。

突然の逆転劇が起こり、同氏の言葉を借りると、1047 Gamesに「奇跡的な成功」が起きたのだ。

「半年前の最初のラウンドは非常に困難でした。地球上すべての投資家に声をかけましたが、答えはすべてノーでした」。しかしその努力は報われる。「幸運なことに、やっとのことで完璧なパートナーに恵まれました。彼らがどれほど協力的であったかはいくら強調しても伝えきれません」。

そしてSplitgateが軌道に乗り始めた頃、2回目のラウンドがHuman Capitalと確定。この回は電話での問い合わせから資金調達までがすべて週末の間に進んだ。3回目のラウンドは1047 Games の選び放題である。Lightspeed Venture Partnersが主導し「Insight Partners、Anthos Capital、以前のシードラウンドの投資家であるGalaxy Interactive、VGames、Human Capital、Lakestar、DraperDragon、Draper University」が参加した(プレスリリースより)。

10人にも満たないチームが1億ドル(過去2回のラウンドを含めると1億1600万ドル[約128億円])もの金を使って何ができるのだろうかと疑問に思われるだろう。しかし、投資家らは同社が突然「アサシン クリード」を作るというようなことに賭けているわけではなく、ユニークなゲームをプレイしている1000万人もの人々の心を開発者が掴み続けることができれば、潜在的に大きなチャンスになると考えているのである。多くのゲームにとってこのハイプ後の時期は死の谷であり、ストリーマーや好奇心旺盛なカジュアル層が去った後、開発者は現金に飢えることになる。しかし、今回の資金調達によって同社は猛烈な勢いで人材を雇用をすることができ、事業を強化することができるようになるだろう。

「やれることの幅が格段に広がりました。小さなチームで小さな予算しかなかったために考えられなかったことが、今ではすべて手の届く範囲にあるのです。私たちは長期的な視点で見ており、今このゲームは25%完成の段階だと思っています。すぐに『フォートナイト』のように化ける必要はなく、今は次のRiot Games、次の大きなゲームビジネスを構築することが重要だと考えています」と同氏は話している。

その一方で、Splitgate自体はまだ1.0への道のりを歩んでいる最中である。チームは現在、自分たちとコミュニティが何年にもわたって形作ってきたゲームを、本当の意味で実現しようとしているところなのだとプルース氏は話している。多くのプレイヤーが何年もの間チームを見放すことなく、このゲームをともに作り上げてきたと同氏は感じており、彼らの意見は今もなお重要なものであり続けていると話している。

「書かれていることすべてを読んでいますし、耳を傾けています。私たちは今でも、コミュニティと密接な関係を保たなければならないインディーチームのようにして活動しています。変わったことと言えば、とんでもない額の資金を手に入れたということだけです」。

画像クレジット:1047 Games

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)