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 新型コロナのワクチン接種を終えた人が人口の8割を超えたにもかかわらず、新規感染者が増加し続けているシンガポール。9月30日付の英字紙ストレーツタイムズは、社説でこの問題を採り上げた。

(c) Nataliya Vaitkevich /Pexels

行動制限の強化、再び
 
 現地からの報道によると、シンガポールで新型コロナのワクチン接種を終えた人は82%に上り、同政府は行動規制の緩和を進めてきた。しかし、主に感染力が強いとされるデルタ株による感染が広がり、9月末には1日あたりの新規感染者が2000人近くに上った。このためシンガポール政府は9月27日から行動規制を強化。飲食店での食事は「5人まで」から「2人まで」に減らし、企業は原則として在宅勤務となった。どうしても勤務する必要がある人は、毎週、新型コロナの検査を受けることが奨励されているという。
 こうした状況の中、社説は、国民の意識調査を紹介している。
 「感染者が増加していることにより、シンガポール国民は、より感染リスクを強く感じているという調査結果が出た。調査対象者の半分近くが運動を減らし、73%が外食を控えているという。また、それに伴い、4分の3の人々が、気分が落ち込み、37%の人々が家庭の財政状況が悪化したと答えている」

「ウィズコロナ」という覚悟

 しかし社説は、「シンガポール国民が感染爆発の現実を把握しているかどうかは、分からない」と指摘する。
 「国民の意見は、社会的な活動を再開させたい人と、そう思わない人に二極化されているようだ。調査によれば、回答者の半分近くが、レジャーや旅行を来年の終わりまでには再開したいとしている。また、46%の人々が2週間から3カ月間程度なら病院の外来に行けなくてもいいと答えている。こうした背景には、新型コロナにまつわる制限には<終わりがある>という考えがあると考えられる。しかし、そうとは限らない。感染拡大は予測ができないものだからだ」
 ワクチンを接種しても、感染者が増えるという現実。これは、新型コロナを社会から排除できない可能性が高い、という現実でもある。社説は、「まずは医療態勢を確立し、感染者が急増した場合にも医療崩壊を起こさないよう準備してから活動制限を緩和すべきだ」と、訴える。
 「シンガポール政府は、今後、さらなる感染者の拡大に対応するために病床を増やしている。新型コロナが消滅することなく、ウィズコロナの社会になることに備えているのだ。医療の状況が落ち着けば、外国からも受け入れを再開できる」「その一方で、人々の生活に大きな影響が出ないよう、ニューノーマルに対応していけるように適切にアドバイスする必要がある。一人一人が自分を守り、一刻も早くワクチンを接種し、マスクを着けるといった予防措置を続ける必要がある。先の道のりは長い。落ち着いて、事態に柔軟に対応していくことが何よりも大切だ」
 未知のウイルスとの闘いが終わった国は、まだない。未知のウイルスのすべてを解明した国も、まだない。社説が言うように、私たちは「ウィズコロナ」下のニューノーマルを生きる覚悟をしなくてはならないのかもしれない。

 

(原文https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/staying-realistic-in-dealing-with-covid-19)

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