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中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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