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10年ぶりに2作品ずつ選ばれた芥川賞と直木賞の贈呈式が27日、東京で開かれ、4人の作家が受賞の喜びや今後の抱負を述べました。

第165回の芥川賞と直木賞は先月の選考会で、芥川賞に石沢麻依さんの「貝に続く場所にて」、李琴峰さんの「彼岸花が咲く島」、直木賞に佐藤究さんの「テスカトリポカ」、澤田瞳子さんの「星落ちて、なお」がそれぞれ選ばれました。

芥川賞と直木賞にそれぞれ2作品が選ばれたのは10年ぶりになります。

27日、東京で賞の贈呈式が行われ、受賞した4人に記念品と賞金の目録が贈られたあと、スピーチが行われました。


ドイツからオンラインで参加した芥川賞の石沢さんは「今回の受賞について畏怖の気持ちも強いですが、本当に感謝しています。受賞によって書き続けることが楽になったわけではなく変わらず厳しいものだと思っています。受賞によって見えてきたものは鮮やかだけれど険しく困難な道ですが、それでも私は逃げることなく書き続けることだけは貫いていきたい」と今後の抱負を述べました。


同じく芥川賞の李さんは「きょうまで生き延びることができたのは知識と文学のおかげであり、文学は表現の手段を与えてくれ、怒りや苦しみといった感情を消化することができました。デビュー作では主人公が、ある奇跡に恵まれ死を回避しましたが、今回の芥川賞の受賞が、生き延びるための奇跡の一つとなることを強く願っています」と話していました。


直木賞の佐藤さんは「作品で描いたアステカの王国が滅びてことしで500年となるので、それを読者に感じてもらえればという思いで書いていましたが、一つのものが滅びることが身に迫って差し迫るという状況にある中、作品を通じてこれまであったものが滅びないという保証はないと教えてもらったような気持ちです。そんなことを考える契機となった直木賞に感謝しています」と述べました。


また、直木賞の澤田さんは「作家にとって賞というのはゴールではなくて通過点にすぎず、この経験を生かしてどのように歩み出そうかわくわくしています。知識と文学はすべての人に開かれた存在で、私自身も助けられてきたのでそれによって助けられる人を少しでも増やしたい。そのために私にできることは書くことしかありません」と今後に向けた決意を語りました。