北米時間2021年10月27日,Intelは,開発者向けオンラインイベント「Intel InnovatiON」を開催し,イベント内でデスクトップPC向けの第12世代Coreプロセッサ(開発コードネーム Alder Lake-S)を正式発表した。
Alder Lakeは,Intel製のPC向けCPUでは初めて種類の異なるCPUコアを組み合わせたのが特徴で,最上位製品となる「Core i9-12900K」では,8コア16スレッド対応の高性能コア(P-core)と,8コア8スレッド対応の高効率コア(E-core)からなる16コア24スレッド対応のプロセッサとなっている。
製品ラインナップを表にまとめておこう。なお,モデルナンバーの末尾に「KF」と付いているのは,統合型グラフィックス機能(以下,統合GPU)を搭載しないモデルである。
なお,第12世代Coreプロセッサの技術的特徴は,米田 聡氏による解説記事に詳しくあるので,そちらを参照してもらうとして,本稿では,イベントで明らかになった新CPUのポイントを見ていく。
Intelによると,第12世代Coreプロセッサは,8+8コアの異種混載CPUコア,OSのスケジューラと協調動作してCPUコアにスレッドを割り当てる「Intel Thread Director」の採用,同社独自のGPUアーキテクチャ「Intel Xe」ベースの統合GPU,さらにAI処理アクセラレータを統合したプロセッサで,「World’s Best Gaming Processor」(世界で最も優れたゲーマー向けプロセッサ)であるという。
さらに,既存のDDR4メモリモジュールよりも高速に動作する「DDR5」メモリモジュールへの対応や,グラフィックスカードとの接続に使える16レーン分のPCI Express(以下,PCIe)インタフェースが,最新のPCIe 5.0に対応するなど,メモリやインタフェース周りが強化された点もポイントだ。
CPUパッケージとソケットは,新しい「LGA 1700」に対応しており,CPUと組み合わせるチップセットには,「Intel 600」シリーズチップセットが用意されている。Intel 600シリーズの第1弾製品としては,「Intel Z690」があり,マザーボードメーカー各社が対応製品を発表する予定だ。
さて,第12世代Coreプロセッサで気になるゲームにおける処理性能だが,Intelによると,前世代のハイエンド製品である8コア16スレッド対応の「Core i9-11900K」と比較して同等〜1.5倍,AMDのデスクトップPC向け最上位である16コア32スレッド対応の「Ryzen 9 5950X」と比べても同等以上の性能を発揮できるという。
また,ゲームのスレッドとゲーム以外,たとえばOSや動画配信ソフトのスレッドをP-coreとE-coreで分担して処理できるため,第11世代Coreプロセッサまでと比べて,動画配信時のフレームレートを大幅に向上できる点も,第12世代Coreプロセッサの利点であるとIntelはアピールしている。
そのほかにも第12世代Coreプロセッサは,オーバークロック関連機能の強化も特徴で,Intel純正のオーバークロック設定ツール「Intel Extreme Tuning Utility 7.5」を使用することで,P-coreとE-coreそれぞれ個別にクロック倍率を設定できる。
また,メモリのオーバークロック規格「XMP」(Extreme Memory Profile)における最新仕様である「XMP 3.0」に対応しており,DDR5メモリモジュールの柔軟なオーバークロックが可能となっているのも特徴だ。
ただし高性能な半面,第12世代Coreプロセッサは,消費電力もかなり高い。定格消費電力こそ125Wだが,最大消費電力にあたる「Maximum Turbo Power」になると,Core i9-12900Kは241Wという電力を消費するという。今回発表の6製品は,すべてクロック倍率がロックされていないアンロック版であるが,アンロック版の第12世代Coreプロセッサは,定格消費電力を最大消費電力と同等まで引き上げることで最大の性能を引き出すことも可能とのこと。その場合,241WでCPUがブン回るわけで,システム全体でどれだけの電力を消費するのか,ちょっと恐ろしいくらいだ。
消費電力はともかく,第12世代CoreプロセッサはこれまでのPC向けCPUにはない新要素を導入したCPUだけに,ゲームにおける実力が楽しみでもある。製品の登場が待ち遠しいところだ。