最新のWi-Fi 6ルーターも普及時期に入り、お買い得ミドルレンジモデルが花盛りという状況になってきた。その一方で、Wi-Fiルーターの電波エリアを広げる中継機やメッシュといった機器も、だいぶ導入しやすくなってきている。
そこで今回は「安価に導入するなら、どのような製品をどう選ぶか」をテーマに、製品選びを考えてみたい。
想定シナリオは「とにかく安いメッシュ環境」と「機能と速度を重視しつつ、メッシュの代わりに中継機を使う環境」の2つ。製品としては、中国深センを拠点とするネットワーク機器メーカーであり、圧倒的コスパの高さで世界的にも人気のTP-Linkから選んでみた。
「本体性能重視で中継機を使う」環境と、「とにかく安いメッシュ」を用意
今回のチョイスは、「メッシュではない中継機を使う環境」に「Archer AX50」と中継機「RE605X」の組み合わせと、「とにかく安いメッシュ環境」の「Archer AX20」と中継機「RE505X」の組み合わせの2つ。
カタチもスペックも、とても似通った組み合わせなので選択が難しいところ。AX50は5GHzで2402Mbpsと基本性能に優れているが、同社のメッシュ技術「OneMesh」に対応していない。これに対してAX20は5GHzで1201Mbpsに留まり価格が安いが、「OneMesh」には対応している。
Archer AX20 | Archer AX50 | Archer AX73 | |
実売価格※ | 7227円 | 8080円 | 1万2000円 |
CPU | クアッドコア | デュアルコア | トリプルコア |
Wi-Fi対応規格 | IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b | ← | ← |
バンド数 | 2 | ← | ← |
160MHz幅対応 | × | ○ | ← |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps | ← | ← |
最大速度(5GHz帯) | 1201Mbps | 2402Mbps | 4804Mbps |
チャネル(2.4GHz帯) | 1~13 | ← | ← |
チャネル(5GHz帯) | W52/W53/W56 | ← | ← |
DFS | ○ | ← | ← |
ストリーム数 | 4 | ← | 6 |
アンテナ | 外付け×4 | ← | 外付け×6 |
WPA3 | × | × | ○ |
IPv4 over IPv6(MAP-E) | ×(FWアップデートで対応予定) | × | ○ |
WAN | 1Gbps×1 | ← | ← |
LAN | 1Gbps×4 | ← | ← |
リンクアグリゲーション | × | ○ | ○ |
USB | USB 2.0×1(Time Machine、FTP、メディア、Samba) | USB 3.0×1(Time Machine、FTP、メディア) | USB 3.0×1(Time Machine、FTP、メディア、Samba) |
メッシュ(OneMesh) | ○ | × | ○ |
セキュリティ | × | HomeCare | HomeShield |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 260.2×135×38.6mm | 260.2×135×38.6mm | 272.5×147.2×49.2mm |
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AX50とAX20については、単体ですでにレビュー済みだ。価格に関しては大きく変わっているが、それ以外の詳細な機能はこちらを参照して欲しい。
どちらの組み合わせも、ファミリー世帯の1LDKや一軒家2~3階建ての自宅Wi-Fiに最適な組み合わせだ。メッシュWi-Fi機能を用いた拡張であれば、中継機をさらに追加し、もっとエリアを広げることもできる。
TP-Linkは中継機ラインナップが豊富
中継機は、RE605Xの方が2.4GHz帯もWi-Fi 6に対応していて、わずかに速度が速い。RE505XはWi-Fi 6対応が5GHz帯のみとなる分1000円ほど安い。
それ以外のスペックはほとんど同じで、いずれも「OneMesh」に対応しているので、RE505Xの方が一見お買い得にも見えるが、デュアルバンド対応のルーターと中継機を組み合わせる場合、2.4GHz帯でも通信するので速い方が有利だ。
RE605X | RE505X | |
実売価格※ | 7992円 | 6222円 |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps | 300Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 1201Mbps | ← |
アンテナ | 2 | ← |
メッシュ(OneMesh) | ○ | ← |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 74×46×124.8mm | 74×46×124.8mm |
※Amazon.co.jp調べ
なお、RE605Xは、上位機種である「Archer AX73」との組み合わせでもレビューを掲載している。予算を若干追加しても少し上の機能が欲しいなら、こちらの組み合わせがお勧めだ。さらにAX73より少しだけ速度を落とした「Archer AX4800」というモデルもあり、こちらもリーズナブルだ。
TP-Linkの中継機には、Wi-Fi 6対応のRE605XとRE505X以外にも、Wi-Fi 5対応モデルについても、4ストリームで最大1733Mbpsの「RE650」、3ストリームで最大1300Mbpsの「RE550」と「RE450」、2ストリームで最大867Mbpsの「RE330」、「RE305」、「RE300」などラインナップが豊富だ。
このうち、OneMeshに対応するのは、RE605XとRE505Xの他、RE550、RE450、RE300、RE305で、ルーターには最大4台まで接続できる。既存のWi-Fi 5のルーターでエリアを少し広げたい場合や、OneMeshではなく中継機としてルーターに追加する場合、接続先はTP-Link製に限らず、どのルーターとも組み合わせられる。
なお、TP-LinkのメッシュWi-Fi技術「OneMesh」は、対応ルーター同士は組み合わせられず、対応するルーターと中継機を組み合わせでのみ動作する点には注意したい。
そのため、少しスペックのいいルーターを選んだ方が快適に使えるだろう。また、あくまでもWi-Fiの電波エリア内に中継機を追加する方法となるので、バックホールを有線LANで接続することもできない。
スマホアプリ「Tether」で簡単に設定できる
Wi-FiルーターのAX50とAX20のインターネット回線への接続と、Wi-Fiのセットアップは、専用のスマホアプリ「Tether」を使い、画面に表示される手順に従っていけば完了する。
手順通りに実行すれば、電源投入>初期SSIDへの接続>ログイン用パスワード設定>Wi-FiのSSIDと暗号化キーの設定>設定後のSSIDへの接続の順で、スムーズに進められるようになっている。もちろんPCなどでウェブブラウザーを使って設定を行っても構わない。
なお、AX50をTetherアプリで設定したままの場合、iPhoneでWi-Fiに接続したときに「安全性の低いセキュリティ」と表示されてしまう[*1]。
可能なら、初期設定後にウェブブラウザーで設定画面にアクセスし、[詳細設定]タブにある[ワイヤレス]を5GHz帯、2.4GHz帯ともにデフォルト設定の「自動」から[WPA2-PSK(WPA3があるモデルではWPA3)]と[AES」へ切り替えれば、iPhoneで安全性が低いと表示されなくなる。なお、AX20ではデフォルトでAESが選択されているため、この問題は起きない。
[*1]……Wi-Fiの暗号化方式の設定でTKIPでの接続が可能なときに表示される。WPA2でAESのみ、もしくはWPA3に設定すると表示されなくなる
中継機の接続やメッシュの構築も、Tetherアプリから同じように行える。中継では個別のSSIDが設定され〟骨頂
(D)Wi-Fiルーター単体で離れた状態。一軒家だとよくあるシーンだ。下手をすると中継機経由より高速
(E)Wi-Fiルーター単体でかなり離れた。通信可能だが、動くと位置によって快適でなくなる。AX20はやや不安定
大きな差はないので細かな数値の違いを見る程度にとどめておくのがよいが、2つの環境で傾向をみると、今回のスマホ接続での速度差はほとんどない。1つの大きな部屋で、居場所がしょっちゅう変わる場合には、OneMeshの方がストレスなく自動的に切り替わっていくので使いやすいはずだ。
逆にエリアを少し(一部)拡張するだけであれば、AX50と中継機の組み合わせも悪くない。また、中継機を使わないAX50単体での接続(E)では、遠くても比較的安定していることが分かる。どちらにつながっているのかも明確なので、部屋間の移動が少なく、接続先の切り替えをいとわないなら、逆に使いやすいかもしれない。