寝室やトイレなど、自宅でスマホや携帯電話がつながりにくい場所や、通話が途切れるといったことはないだろうか? 自宅の電波状況が悪いケースもあるが、実は身近なものが電波の障害になっている場合がある。今回は意外と知らない「電波のひみつ」をKDDIフィールドサポート部 サポート業務グループの下村 彰がわかりやすく解説しよう。
下村はauユーザーの自宅などの電波を改善する「電波サポート24」の元サポーター。
お客様の自宅を訪問した際に、つながりにくい状況を確認し、電波の性質を考慮したうえで、その家の環境に合わせた電波改善を提案する。そんな自宅での電波状況に詳しい下村が、4Gでの音声通話を例に、電波の性質や自宅でスマホがつながりにくい理由やその解決策を紹介する。
電波の性質①基地局から離れるほど弱くなる
――今や我々の生活には欠かせないスマホや携帯電話ですが、電波が届かないと当然、通話などができません。どうして電波の状況は悪くなるのでしょうか。
下村「まずは電波の基本的な性質を4つお伝えしましょう。最初は電波の伝わり方から。スマホをつなげるために基地局から電波を発射していますが、光や音が遠ざかれば遠ざかるほど弱くなるように、電波も発射している基地局から遠ざかるほど弱くなり、質が悪くなります。スマホのアンテナが立っていても、弱い電波ばかりを受信していると、電話がつながらないことがあります。」
――ありますね。電波が立っているのに電話がつながらないとき。それは弱くて質の悪い電波が原因だったんですね。
電波の性質②金属は反射してガラスは通り抜ける!?
下村「電波は障害物に当たると反射します。ただ、素材の種類や密度、厚さによっては反射しつつも、通り抜けるものがあります。電波の反射が大きいのは金属やコンクリートです。ガラスや紙、木などは通り抜けやすいです。そのため、金属やコンクリートに隔てられている空間は電波が届きにくくなる場合があります。」
――電波にも反射するものと通り抜けやすいものがあるんですね。だから、電波のつながりにくい場所が生まれていると。
下村「そうです。実は、電波は木の葉でも反射します。たとえば、キャンプ場などで夏は新緑で葉が多くてスマホがつながりにくい場合がありますが、それが冬になって葉が落ちて見通しがよくなると、スマホがつながりやすくなることもあるんです。
」
電波の性質③障害物を回り込む
下村「そして、電波は障害物にぶつかると、その裏側へ回り込む性質があります。たとえば、海で波が岩にあたると、岩に沿って裏側にも波が回り込みますよね。同様に、電波が障害物にぶつかるとその裏側に回り込むんです。」
――電波がビルにぶつかりながら、後ろまで回り込んでくるんですか?
下村「そうです。その際に障害物にあたって電波は分散するので、後ろに回り込んだ電波は弱まって質も悪くなります。」
電波の性質④電波同士は干渉する
下村「また、街中では複数の基地局から電波が送られていて、ビルなどで反射した電波も存在します。こうして複数の電波が重なり合うと、どうなると思います?」
――電波が重なり合うと……そのぶん、電波が強くなる!
下村「違うんです。複数の電波が重なり合うと干渉し、量と質が落ちることがあります。波をイメージしてもらうとわかりやすいのですが、波と波がぶつかると、互いに打ち消し合いますよね。同様に、電波が重なり合うと干渉して電波の量と質が落ちてしまうのです。」
――なるほど。電波同士はケンカをするんですね。
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■電波の性質まとめ
①電波は基地局から離れるほど弱くなる。
②電波は金属を反射してガラスを通り抜ける。
③電波は障害物を回り込む。
④電波同士は干渉する。
エコガラスを使った家は電波を通しにくい
――電波の4つの性質はわかりましたが、実際の暮らしではどんな条件だと電波がつながりにくくなるのでしょう?
下村「基本的に、一戸建てでもマンションでも電波が入ってくるのは窓からになります。同じ窓でも、普通の窓なら電波は通り抜けられるのですが、金属幕をコーティングしたエコガラス(複層ガラス)は電波を反射して通りにくくなります。
」
――ええっ!エコガラスって電波を通しにくいんですか!
下村「はい。防犯や安全のために強化された網入りガラスも、網の部分が金属ワイヤーのため電波が通りにくくなります。裏側に金属の膜を固着した遮光カーテンや金属糸が縫いこまれたサンシェードも同様です。シャッターも金属を使用しているので電波を反射します。」
――最近の家はエコガラスが標準搭載になりつつありますが、そのせいで電波が悪くなってしまうなんて……。そう考えると、家には電波が通りにくいものがたくさん使われていますね。
下村「そうなんです。だから外では電波状況が良いのに、家の中ではスマホがつながりにくいといったことも起こるのです。」
コの字型マンションの内廊下側は電波がつながりにくい
――ほかにも電波がつながりにくいケースはありますか?
下村「コの字型のマンションの内廊下側の部屋がつながりにくくなることがあります。これは基地局から飛ばした電波はマンションの窓から入り、廊下を通るのですが、奥の部屋まで届きにくいという状態です。」
――同じマンションでも、位置によって電波が届きにくい部屋と届きやすい部屋があるんですね。
下村「はい。部屋の中でもリビングのように開けた場所は電波が通りやすくなりますが、寝室やトイレなど閉鎖的な空間になるほど、障害物が増えて電波が届きにくくなります。」
家の2階がつながって1階がつながりにくいのはなぜ!?
下村「ほかにも周辺に建物が多い場合に、2階では電波がつながっても1階では電波がつながりにくいことがあります。これは目の前の家やマンションが障害物となり、1階まで電波が届きにくくなっているからです。」
――ということは、自宅の向かいに新たなマンションが建つと電波が悪くなることがある?
下村「ありますね。逆に、それまで電波環境に問題がなかった家でも、家の前にあったマンションがなくなることで、電波同士が干渉してつながりにくくなるというケースもあります。ほかに、タワーマンションの高層階も電波がつながりにくいことがあるんです。電波を遮断するものがない高層階では、さまざまな電波が入り乱れて干渉し合っていて、質が落ちてしまうことがあります。」
電波の受信と送信の出力の違いに注意
下村「スマホを使用する際、基地局から出る受信電波とスマホから出る送信電波とでは、強さが違います。基地局から出る電波はエリア全体をカバーするため、出力は大きいのですが、スマホから電波は決められた出力までしか出せないので、基地局からの電波よりも出力が小さくなります。
そのため、「受信はできるけど送信ができない」といった現象が起こります。たとえば、相手の声は聞こえるけど自分の声が相手に届かない「片通話」が起こることがあります。」
――相手の声だけが聞こえる現象ってそういう理由だったんですね。
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■家の中で電波がつながりにくいケースのまとめ
①エコガラスを使った家は電波を通しにくい。
②コの字型マンションの内廊下側は電波がつながりにくい。
③周辺に建物が多いと家の1階がつながりにくくなることがある。
④電波の受信と送信の出力の違いで「片通話」になることがある。
自宅の電波が悪いときは「電波サポート24」に申し込みを
――電波について知れば知るほど、家には電波が届かない条件や環境があることがわかりました。でも、引っ越したあとに家の電波が悪いとわかったら残念ですよね……。
下村「auのお客さまの場合は、電波がつながらない場合の解消法として「電波サポート24」というサービスがあります。スマホやケータイなどの電波がつながらない際に問い合わせると、電波サポーターが自宅を訪問して、今回ご紹介したようなつながりにくい原因を確認して、4Gの電波状況を改善する提案を行います。
たとえば、「auレピータ」は電波の量を増やす増幅器です。電波の入りやすい窓際に設置して、外から届いた電波の量を増やすことで改善します。」
下村「「auフェムトセル」は、インターネット回線を利用した自宅専用の小型携帯電話基地局です。電波を発射して電波状況を改善します。」
――自宅に機器を設置して電波状況を改善する提案をしてくれるんですね。
下村「はい。電波サポート24のサービスは無料です※。auホームページやauショップ、電話で申し込みができるので、ぜひご確認ください。
※訪問調査費用・機器本体費用・機器設置費用は無料ですが、機器にかかる月々の電気代はお客さまにご負担いただきます。」
――わかりました。今日はありがとうございました。
自宅の電波がつながりにくい理由はさまざまだが、だからといって「仕方がない」とあきらめず、改善する方法はある。auをお使いで自宅でスマホや携帯電話がつながりにくいときは、一度「電波サポート24」に相談してみよう。