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2021年。今年も様々なゲームがリリースされました。

 

そこで今回は、ホラーゲーム作家/ゲームライターとして活動する田中一広が、2021年を代表するような作品や、ゲーム史の節目となるような作品6作をピックアップして、皆さんに紹介します。もちろん、紹介作はすべて自腹購入でプレイ済み。どの作品も、遊んで楽しい作品です。

 

シリーズの節目となる一作!『バイオハザード ヴィレッジ』(PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X/S/Xbox One/Steam)

 

『バイオハザード』シリーズのナンバリング最新作。本作で描かれているのは、前作『バイオハザード7』のその後。前作で救出した妻・ミアと平和な日常を送っていた主人公・イーサンでしたが、突如自宅が襲撃されてしまいます。その襲撃の首謀者は、なんとクリス・レッドフィールド……!

 

そう、シリーズを代表するヒーローであるとともに、前作でイーサンを救った人物。冒頭から脳裏に「どうして?」が浮かぶ本作の物語は、ほかにも様々な疑問を生みながら展開。しかし、あらゆる疑問は本作ラストですべて回収。イーサンの物語に区切りがつきます。

 

作品のテーマという観点からみると、バイオハザード7と本作は2つで1作といってもいい作品。なので、年末年始の休みを利用して一気にプレイするのがオススメ。「怖い」だけでなく、「勇気」や「希望」「感動」といった様々な感情が心に刻まれることでしょう。2021年を代表する一作であるとともに、ゾンビゲームの金字塔シリーズの節目となる一作です。

 

TYPE-MOONファン待望のリメイク! 『月姫 -A piece of blue glass moon-』(PlayStation 4/Nintendo Switch)

 

伝説のゲームと言われる『月姫』をリメイクしたノベルゲームです。『月姫』というタイトルに聞き覚えがない人も、『Fate(フェイト)』シリーズというタイトルは聞いたことがあるのでは? 伝奇ゲームのシリーズで、人気のスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』も、このシリーズの一作です。

 

このシリーズを手がけているゲームブランドTYPE-MOONが、同人サークル時代にリリースしたノベルゲームが『月姫』。もちろん同人ゲームとしてリリースされたのですが、その人気によりアニメ化やコミカライズが実現。こうした経緯から、商業展開されたアニメやコミックには手軽に触れられるものの、本編であるゲームは同人版で手に入らない…という状況が続いていました。

 

だからこそリメイクが待ち望まれ続けており、今回の発売はまさにファンにとっての“悲願”といえるでしょう。

 

作品としてはFateシリーズと同様“伝奇もの”。設定にやや近い部分はあるのですが、世界観は別。「物の壊れやすい線」が見える特殊な力を持った主人公・遠野志貴が、吸血鬼の女性・アルクェイドと出会ったことから、異能を持つものたちの戦いへ巻き込まれていきます。

 

同人版『月姫』とリメイク版で基本的な設定は一緒ですが、グラフィック演出はもちろん、映像演出、文章表現まで大幅にグレードアップ。ただ残念な点として、リメイク版は前編・後編の2タイトルに分けての発売となりました。今回発売されたのは前編。同人版で5つあったルートのうち、2ルートが含まれています。ただ、それでも同人版5ルート分を凌ぐボリュームなので、プレイしていて物足りなさを覚えるということはないでしょう。

 

長い歴史を持つRPGシリーズの最新作! 『真・女神転生V』(Nintendo Switch)

 

コアな人気を誇るRPG『真・女神転生』シリーズのナンバリング最新作。真・女神転生シリーズは、『ペルソナ』シリーズを生み出した元祖・悪魔RPG。……なのですが、正直“人を選ぶ”世界観なので、派生作である『ペルソナ』シリーズの方が有名。なので、真・女神転生シリーズはプレイしたことがないという人も少なくないでしょう。

 

一体何が人を選ぶのか? というと、そのダークさ。悪魔によって神が殺され魔界となった東京を舞台に、悪魔を仲間=「仲魔」にしながら冒険の旅を繰り広げていきます。

 

仲魔にする方法はコミュニケーション。戦闘中に悪魔と会話を行い、時におだて、時におどし、時にはお金やアイテムを貢いで仲間になるよう説得します。そして、仲魔が一定数以上集まったら合体! 複数の悪魔の命をひとつに合体することで、より強力な悪魔を生み出します。必死で口説いた仲魔を次々合体の材料にしていくこの背徳感! モンスターを仲間にできるRPGは数あれど、ここまでダークなものはなかなかありません。そもそも、モンスターを仲間にするRPGの元祖が、真・女神転生のもととなったファミコン版『女神転生』。オリジナリティが高いのも納得。

 

ちなみに、コミュニケーションが重要なのは戦闘だけじゃありません。イベントの際の会話には選択肢が出現。このとき選んだ内容によって、世界のあるべき姿が変わってきます。崩壊しつつある世界でどう生きるのか? 世界をどう変えていくのが正しいのか? そもそも「正しい」とは何なのか? 重いと思う人もいるかもしれませんが、だからこそプレイし甲斐があるのも事実。年末年始の休みをディープに過ごすなら、うってつけな一作です。

 

レトロゲーム的文化とインディーゲーム文化を結ぶ一作! 『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズ(iOS/Android/Steam)

 

日本を代表するRPG『ファイナルファンタジー』シリーズ。そのI~VIまでをリメイクしたのが『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズです。2021年は『ファイナルファンタジーV』までの5作品がリリースされました。

 

『ファイナルファンタジー』(FF)は人気シリーズなので、これまでも度々リメイクされています。しかし、様々なハードでリメイクされてきたため、仕様が一貫しておらず、またプレイしようにも今では購入できないタイトルも。こうした状況に対し、一貫した仕様で6タイトル全てをリメイクしようというのが、ピクセルリマスターシリーズの趣旨。

 

そのポイントは、タイトルにも書かれた“ピクセルリマスター”。ピクセルと言うのは「ピクセルアート」、ファミコンやスーパーファミコン時代のいわゆる「ドット絵」を意味しています。筆者のようなファミコンキッズにとっては、「ドット絵」=「懐かしいレトロなビジュアル」という印象。ですが、近年はインディーゲームなどを中心に、「ピクセルアート」はアートスタイルのひとつとして定着してきています。こうした状況を踏まえ、ピクセルアートの技法でリメイクしたというのが、本作のポイント。

 

FFシリーズのI~VIは、まさにファミコン、スーパーファミコンでリリースされた作品。このため、ビジュアル的には非常に懐かしいテイスト。一方、「ピクセルアート」は昔のドット絵から技術的に進化しており、光の処理や粒子(パーティクル)の処理といった現代ならではのアート表現を使うことができます。この2つをミックスさせたピクセルリマスターシリーズは、古いのに新しい、レトロなのに現代風という独特な味わい。年末年始の休みに、I~Vまで一気にプレイするというのがオススメ。

 

未来への希望を感じさせる一作! 『FANTASIAN』(iOS)

 

レトロなのに現代風という意味で、『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズとコインの裏表のような関係にあるのが本作、『FANTASIAN』。月額制サブスクリプションサービスの「Apple Arcade」からリリースされたiOS専用RPG。このため、プレイしたことがないという人も多いでしょう。

 

本作を手がけたのは、FFシリーズの生みの親、ミストウォーカーの坂口博信氏。音楽もFFシリーズでおなじみ植松伸夫氏。FFを現代技術でよみがえらせたのが『ピクセルリマスター』なら、FFのクリエイターが現代技術で作った最新作が本作です。

 

そんな本作でまず目を引くのが、ビジュアル。本作のビジュアルからは、懐かしいのに新しい、独特な印象を受けるのではないでしょうか。これは、本作の背景素材がリアルなジオラマとして作られ、それを実写取り込みする形で作られているため。つまり本作は、3DCG全盛の現代において、特撮的な手法で作られているのです。“ピクセルリマスター”とは異なる意味で、懐かしさと新しさを感じさせてくれる本作もまた、クリエイターが見せてくれる新たな時代への期待を込めて、年末年始の休みにプレイする価値がある一作です。

 

ゲーム史に節目として残る一作! 『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(Nintendo Switch)

 

『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』が発売されたのは2018年12月7日。このため、今年リリースされたゲームではありません。しかし間違いなく、今年を代表する一作! というのも、本作リリース後継続的に行われていたダウンロードキャラクターのリリースが、今年終了したからです。

 

『ペルソナ』のジョーカーに『鉄拳』のカズヤ、『マインクラフト』のスティーブなどなど、ゲーム業界の様々なタイトルからリリースされたダウンロードキャラクターたち。その大トリとなったのは、『キングタムハーツ』シリーズの主人公、ソラ。ユーザーからの参戦希望ナンバーワンキャラクターでありながら、もろもろの事情でリリースが難しいとされてきたキャラクターが最後にリリース。さらに、ソラは奇しくも本作のデベロッパー「ソラ」と同じ名前。これ以上ないくらい、最後を飾るに相応しい“ファイター”となりました。

 

ソラのリリースによって同作の登場キャラクターは80体以上。単純なキャラクター数だけ見ても大規模ですが、様々なゲームタイトルのコラボレーションということを考えると、確実にゲーム史に残るレベルの規模。節目という意味ではこれほどピッタリな作品はありません。まだプレイしていないという人はもちろん、以前はプレイしていたけど最近はプレイしなくなった……という人も、この2021年末、プレイするに相応しい一作です。

 

2022年はインディーゲームがさらなる盛り上がりを見せる……?

個々のゲームタイトル以外に目を向ければ、2021年は、集英社や講談社といった大手出版社が、インディーゲームクリエイターの支援プロジェクトを立ち上げたり、バンダイナムコスタジオがインディーゲームレーベルを立ち上げるなど、インディーゲーム分野で大きな動きを見せた年です。こうした動きは2022年以降、具体的なゲームタイトルとなって世に出てくるのは間違いありません。なので、2022年以降はインディーゲームがさらに盛り上がりを見せるでしょう。ゲームファンは要チェックです!

 

ちなみに筆者も個人でゲームを作るホラーゲーム作家なので、2022年に新作インディーゲームをリリース予定。微力ながら、ゲーム業界を盛り上げていきたいと思います!