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 こう指摘するのは、厚生労働省の専門家助言組織「アドバイザリーボード」のメンバーで、国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)だ。「あのメッセージ」とは、菅首相の冒頭の発言だ。いったい何にもとづいてこの発言がされたのか。

 東京都医学総合研究所が出している「都内主要繁華街における滞留人口モニタリング」の分析によると、緊急事態宣言後の直近2週間では、宣言前の1週間と比較して、夜間滞留人口は18・9%減、昼間滞留人口は13・7%減。前回の宣言よりも減少は半分以下にとどまっているという。和田教授はこう見る。

「人流は確かに減っているが、減りが甘い。この減り方で感染者数が下がるかまではわからない。いま私たちは感染力が強いデルタ株と対峙しており、これまでのやり方だけで感染者数が減るのかまだわからない状況です。首相の発言は楽観的過ぎます。感染者が思ったよりも減らないこと十分にも考えられ、より厳しい対応を取る可能性があることも言っておくべきでしたね」

 菅首相は27日、「(五輪を続けることについて)車の制限であるとか、テレワーク、そして正に、皆さんのおかげさまによりまして、人流は減少していますので、そうした心配はない」と強調。東京五輪を中止する可能性を否定していた。

 しかし、感染者が3177人となった28日、菅首相は西村康稔経済再生担当相、田村憲久厚生労働相ら関係閣僚と緊急に協議。その後、記者団にはコメントを一切、出さず、取材にも応じなかった。