マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、柔軟でセンシング機能を備えた3Dプリントデバイスを開発した。加わった力の向きや大きさが分かり、電子機器の入力デバイスや福祉用具、スマート家具などへの利用が期待される。研究結果は、2021年10月10日~14日にオンライン開催された「UIST 2021」で発表している。
技術の進歩に伴い、3Dプリントは外側の形状設計だけでなく、内側の構造設計にも利用できるようになってきた。近年は、物体の内部を分割して周期的な格子状にし、パラメータを変えることで、外側の形状や素材を変えることなく、さまざまな機械特性を付加できる「メカニカル・メタマテリアル」に注目が集まっている。
研究チームは、メカニカル・メタマテリアル構造と電極を統合して、センシング機能を持つ3Dプリントオブジェクトを開発した。メタマテリアル物体に力が加わると、柔軟な格子の一部が伸びたり縮んだりする。これを利用して、研究チームはベースとなる「導電性せん断セル」を作製した。4面ある壁のうち、向かい合った2面は導電性フィラメント、残りの2面は非導電性フィラメントでできている。導電性の壁は電極として機能する。
デバイスに力が加わると、導電性せん断セルは変形し、対向する電極間の距離と重なる領域が変化する。静電容量センサーを使ってその変化を測定し、加えられた力の方向と大きさ、回転と加速度を算出できる。
研究チームは、検証としてジョイスティックを作製した。ベース部分、上下左右4か所に導電性せん断セルを組み込んでいるので、ジョイスティックを動かすと、その方向と大きさが分かる。このジョイスティックで、ゲーム「パックマン」をプレイする様子を公開している。その他、加速度計や音楽プレーヤーなども作製した。
「ユーザーに特別なセンシング要件がある場合は、そのニーズを満たすようにデバイスをカスタマイズできる」と、研究チームは語る。例えば、ジョイスティックへの力のかけ方が分かるので、ユーザーが使いやすいように形状や大きさを変えたりできる。人が座ったら「TVをつけますか?」と聞いてくるスマートソファもできるかもしれない。
研究チームは、設計ソフトも開発し、導電性せん断セルを自動で最適な場所に配置できるようにした。配置が決定すると、マルチマテリアル3Dプリント用にデータファイルを出力できる。
今後は、設計ソフトのアルゴリズムを改良し、よりシミュレーションの性能を上げたいとしている。さらに、より大きなデバイスに何百、何千もの導電性せん断セルを組み込めば、人とモノとの相互作用を高解像度かつリアルタイムに視覚化できると研究チームは考えている。
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