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 タイは11月1日、63カ国からの入国について隔離を免除した。ワクチン接種証明や入国時のPCR検査に加え、待機のために指定ホテルに1泊することが必要で、観光客の受け入れ可能都市は限定されているものの、これまでに比べれば格段に門戸が広がった。その一方で、国境を違法に越えようとする者は後を絶たない。11月2日付のタイの英字紙バンコクポストは、社説でこの問題を採り上げた。

ミャンマー軍とカレン民族同盟(KNU)との闘いから逃げて国境を越えようとする人々に対するPCR検査の様子(2021年4月28日撮影) (c) 提供:Mae Hong Son Provincial Public Relations Office/AFP/アフロ

3万人が強制送還 
 社説によれば、カンチャナブリ県のミャンマー国境で11月1日、102人のミャンマー人が違法に入国しようとして拘束された。彼らは首都バンコク、チョンブリ、サムットプラカーンなどで働くために、一人あたり1万7000バーツ(約5万8640円)から2万バーツ(約6万9730円)を仲介業者に支払って違法に入国しようとしていた。その前日にも、ターク県で数十人、一週間ほど前にはカンチャナブリ県で10人のミャンマー人が拘束されたという。
 「わずか1週間でこれだけの違法入国者が拘束されたが、これらは大海の一滴に過ぎない。ミャンマーとタイの間の国境線は2401キロにわたり延びているのだから」
 国境警備を担う国防省によれば、今年1月からこれまでに約3万人に上る違法移民が本国に強制送還されたと社説は伝えている。また、国際移住機関(IOM)によれば、タイ国内の違法就労者は100万人から200万人に上り、その多くが新型コロナのワクチンを接種していないとみられるという。
 「違法移民の流入が後を絶たないのは、政府による対策が失敗している証だ。いまだに新型コロナの感染ルートが追跡できないケースもあるが、これこそがワクチン接種の推進に向け努力しているにも関わらず感染を抑えきれていない理由だ。違法移民が最も多く流入するチェンマイでは、彼らが違法に働く生鮮品市場で集団感染が発生したこともある。また、つい先日もノンタブリ県の建設現場で感染者が確認された。経営者が多くの労働力を必要とすればするほど、感染者が増える。違法移民は安くて手軽な労働力と考えられているのだ」

国防相と労働省の対応に警鐘

 こうした現状を受け、「政府は事態をより深刻に受け止めるべきだ」と、社説は訴える。
 「長い国境線を完璧に警備することは、事実上、不可能だと思われる。しかし、新型コロナ対策という観点から見れば、警戒レベルを上げることはできるはずだ。たとえば、感染拡大を防ぐためにバンコクとその周辺の建設現場が封鎖を命じられた際、国防省が兵士を現地に派遣しなかったことから労働者の多くが現場を離れ、集団感染を引き起こした」
 国防省だけではない。社説は、労働省もこの問題に真剣に取り組むべきだと述べ、「昨年の半ばから、労働省は、ワクチンを接種していない違法就労者が感染拡大のリスク要因であることを認識していた」と、指摘。10月になるまで政府が違法就労者の登録に同意しなかったのは遅すぎる、との見方を示す。
 「タイ政府は、2021年中にワクチン接種率70%を達成することを目指し、高価な医薬品をストックしようと多額の予算をつぎ込んでいる。しかし、違法就労者を取り締まるか、少なくとも彼らに一刻も早くワクチンを接種しなければ、いつ集団感染が再び発生してもおかしくない」
 新型コロナの感染拡大が抑制され、経済活動が再開しつつある今、労働力不足が深刻化しているのは社説が指摘する通りだ。しかし、だからと言って「コロナ以前」と同じ感覚で活動を再開すれば、再び同じ事態に陥る。コロナ禍を経て、私たちは「ウィズコロナ」という知恵を授かったはずだ。どんな分野、地域においても、「ニューノーマル」という考え方の定着を期待したい。

 

(原文https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2207891/weak-borders-need-fixing)

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