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ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、アメリカのキャデラックブランドがラインナップするSUVの最小モデルに試乗し、キャデラックの現状を暴く?

※こちらは「GetNavi」 2021年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】キャデラック/XT4

SPEC【プラチナム】●全長×全幅×全高:4605×1875×1625mm●車両重量:1780kg●パワーユニット:2.0Lターボエンジン●最高出力:230PS(169kW)/5000rpm●最大トルク:35.6kg-m(350Nm)/1500〜4000rpm●WLTCモード燃費:非公表

570万(税込)〜670万円(税込)

 

日本の市場ではウケないが、“アメ車らしさ”を貫いたハイスペックな1台

安ド「殿! 今回は久しぶりのアメリカ車です!」

 

永福「さようか」

 

安ド「キャデラックの一番小さいSUV、『XT4』です!」

 

永福「キャデラックとはデラックスだな」

 

安ド「サイズもさすがにデラックスです。これで最小とはさすがアメ車ですね!」

 

永福「いや、実際かなり小さいぞ。トヨタのRAV4と大差ない」

 

安ド「ええっ!? もっとデカいような気がしましたが……」

 

永福「それはアメ車に対する思い込みだ。しかし実は私も車庫入れで苦労した。というのも、左ハンドル車なのでな」

 

安ド「殿はフェラーリなどで、左ハンドル車に慣れているのでは?」

 

安ド「左ハンドル車には慣れているが、SUVの左ハンドル車にはあまり慣れていなかった。最近は輸入車でも、左ハンドル車はフェラーリやランボルギーニくらいになっているのでなぁ」

 

安ド「なるほど! それにしてもキャデラックって、いまでも全モデル左ハンドルなんですね。なぜでしょう?」

 

永福「アメリカの最高級車としての誇りもあるだろうが、なによりもアメリカ以外ではあまり売れないことが大きいのではないか」

 

安ド「つまり、右ハンドルを作るほど売れないってことですね」

 

永福「2020年に日本で売れたキャデラック車は、合計479台。ランボルギーニより少なかった」

 

安ド「そういえばランボルギーニも左ハンドルだけですよね!」

 

永福「いや、ウラカンやウルスには右ハンドルがあるぞ」

 

安ド「エエ〜〜〜〜ッ! ランボルギーニですら右ハンドルがあるのに、キャデラックは左ハンドルだけなんですかぁ!」

 

永福「ランボルギーニは、左側通行の日本やイギリスでの販売比率がかなり大きいのだ」

 

安ド「キャデラックも右ハンドル車を作れば、日本でもっと売れるんじゃないですか?」

 

永福「まぁ多少は増えるかもしれないが、大したことはあるまい」

 

安ド「このクルマ、カッコ良いし走りは快適だし、エンジンも2Lターボで扱いやすくてパワフルだし、デジタル系の機能も最新だし、内装の質感も高いのに、なぜあまり売れないんでしょう?」

 

永福「う〜ん、イメージだろうな。いま日本でキャデラックを欲しがる人がどういう人か、想像がつくか?」

 

安ド「……つきません!」

 

永福「輸入車の新車を買うってことは、高級デパートで服を買うことと同様。大事なのは布地の良し悪しよりもブランドだ。キャデラックというブランドは、昔の高級車というイメージで、洋服のブランドで言うと……何だ?」

 

安ド「わかりません! 僕はユニクロやGUでしか買いませんから」

 

永福「私にもわからん。最近はワークマンやサミットでしか買わないからな」

 

【GOD PARTS 1】ドライブモード

アメリカらしい?「ツーリング」モード

センターコンソールのスイッチを押すことで、ドライブモードが選択できるようになります。「AWD」は4WD固定、「スポーツ」と「オフロード」もありがちですが、「ツーリング」は珍しいです。アメリカらしい表現とも言えます。

 

【GOD PARTS 2】20インチホイール

大径で迫力があり、質感高くスポーティ

上級2グレードでは20インチホイールが採用されていて、デザインも高級感がありながらスポーティです。「コンパクト」を謳うSUVでありながらも、しっかり大径ホイールを採用するのは、見た目重視で良い感じですね。

 

【GOD PARTS 3】エンブレム

グレード名ではない謎の数字の正体は?

ボディ後方には「XT4」と「350T」という2つのバッジ(エンブレム)が付いています。前者は車名ですが、後者は何かと考えてみると最大トルクの数値ですね(350Nm)。トルクに価値を置くあたりは、SUVの本場・アメリカらしいです。

 

【GOD PARTS 4】ワイヤレスチャージャー

スマホを置くだけで充電できる便利装備

近年、日本車でも多く採用されているスマホのワイヤレスチャージャーが、XT4にもこっそりと肘掛けの下に隠されていました。しかもスマホのサイズに合わせてスケールを変更できる仕様がフレンドリーです。

 

【GOD PARTS 5】エアコン

ユーザーフレンドリーな室内空間を実現

グレードにもよりますが、イオン発生除菌機能付きのオートエアコンが採用されているというのは現代的で、まるで日本車のような配慮です。また、このスイッチ類が真横に一直線に並べられた姿は壮観でもあります。

 

【GOD PARTS 6】左ハンドル

あくまでも左を貫きプライドを守る思想

同じGM傘下のシボレー(コルベット)でさえ右ハンドル車があるというのに、キャデラックは左ハンドルのみの設定です。それでも日本でSUVラインナップを取り揃えるあたりは、もはや頑固さを超え、高潔ささえ感じます。

 

【GOD PARTS 7】リアハッチオープナー

ドアに付けられた謎のダイヤルの正体は?

ドアに付いていたこの小さなダイヤル。なんだろうと思っていじってみたら、リアハッチゲートの開閉スイッチでした。わざわざドア内部まで配線を通さなくてはならないため作る側も面倒だと思うのですが……。インパネに付け忘れてしまったのでしょうか。

 

【GOD PARTS 8】エンジン

小型でもアメ車らしい豪快な走り

2.0L直列4気筒のエンジンはツインターボで230馬力を発揮するパワフルなユニットです。アメ車のエンジンといえば大排気量とイメージされがちですが、小さなターボというのもまたヤンチャで楽しく、好ましいです。

 

【GOD PARTS 9】ヘッドライト&リアランプ

シャープな形状はブランドアイデンティティ

フロント、リアともにシャープでアクロバティックな形状のライトが採用されています。このところキャデラック車の顔は、目から涙が溢れているようなイメージで統一されていて、それは兄貴分のXT5やXT6などでも貫かれています。

 

【これぞ感動の細部だ!】シート

面積たっぷりでゆったり乗れる

アメリカ車のシートといえば、大柄でゆったりしていて座るだけで優雅な気分になれます。このXT4のシートもまたしかり、上級グレードではマッサージやヒーター、ベンチレーションなどの機能も付いていて、セレブ感があふれています。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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