声優アーティストのトップランナー・水樹奈々さんが約1年ぶりとなるニューシングルをリリース。新曲「Get up! Shout!」は、水樹さんも玉村たまお役で出演しているテレビアニメ『SHAMAN KING』の第2弾OPテーマ。20年の時を経て、今『SHAMAN KING』という作品の主題歌を担当することへの思いなどを聞きました。
◆水樹さんは2000年版のテレビアニメ『シャーマンキング』にも出演していましたが、当時の思い出は?
とにかくそうそうたるキャストで、当時は「私がここに名を連ねていいのか」と、毎日お腹が痛くなるくらい緊張していました。阿弥陀丸役の小西克幸さんが声をかけてくださって、アフレコ終わりに皆さんとご飯を食べに行って、そこでいろいろなお話をさせてもらえたことが刺激的でしたね。
◆そんな緊張でいっぱいだった水樹さんが、約20年後の今回、OPテーマを担当することになりました。
「本当に私でいいんですか…?」と聞き返しました(笑)。これまで、林原めぐみさんが主題歌を担当されていたので、緊張とプレッシャーで震えました。
◆そんなOPテーマの「Get up! Shout!」は、疾走感のあるナンバーです。
私からは、歌始まりであること、古き良き日本を感じるような昭和テイストを織り交ぜてほしいとお願いして、コンペで決めました。歌始まりは、林原めぐみさんが歌われていた歴代主題歌と構成を揃えたいと思ったんです。そして昭和テイストは、『SHAMAN KING』の世界観のベースになっていて。この「Get up! Shout!」は、ストレートなロックサウンドと歌謡曲のエッセンスが融合していて、満場一致で決まりました。その後、疾走感だけでなくフックになるような部分も入れるなどブラッシュアップしていきました。
◆『SHAMAN KING』という作品の個性を曲でも表現しようしたんですね。
この作品は見方によっては、「正義も悪になる」という大きなテーマを扱っていて、心をえぐられるシーンがたくさんあります。それを楽曲でも表現したかったんです。
◆作詞のテーマは?
シンプルに言うと「愛」です。アニメに寄り添いつつ、現実にも置き換えられるようなバランスで「愛」を描けたらと思いました。作品としては、葉とハオの想いを主軸に置きつつ、ホロホロや蓮、リゼルグなど様々なキャラクターの想いを重ねられるものにしたくて。でも、曲の構成自体はシンプルだから、難しい言葉や遠回しな比喩表現を入れると伝わりにくくなってしまう。なので、できるだけストレートな言葉で書くことを意識しつつ、読み手によって捉え方が変化するような、シンプルなのに何層にも感じられるようにしたいと、とかなり熟考しました。
◆キャラクターが個性的すぎて、多角的に描くのは難しそうですが。
主人公の葉は、みんなが“ラク”に生きられる世界を作りたい人で、全てのことに「愛」で向き合うキャラクターなんです。どんなに自分が傷つけられてもやり返すのではなく、受け止めて、どうしたら自分がその人のために動けるのかを考える。物事に柔軟に向き合える姿勢、その共存の仕方を届けられたらいいなと思いました。葉以外のキャラクターもみんな根底には「愛」があるので、彼らが伝えたいメッセージを少しずつ織り込んでいった感じです。
◆レコーディングはいかがでしたか?
思うままに歌いました。頭で考えずにその場で生まれるもの、パッションを大事にしましたね。
◆テレビバージョンでは聞けない、フル尺だからこそのお気に入りポイントは?
歌頭はソリッドな形で切り込んでいるのですが、その後、ジェットコースターのように山あり谷ありで、一気に引き込まれていくのがポイントです。2番終わりのギターソロはめちゃくちゃかっこ良くて、自分の限界を突破できそうなエネルギーに溢れているパートなので、そこからの大サビへの流れがすごく好きです。
◆歌詞の最後に「Over soul」というワードが入っていますね。
最後の3音を聞いて、ここに入るのは「Over soul」しかないなと思って(笑)。『SHAMAN KING』という作品で欠かせないワードですし、2000年版の最初の主題歌が「Over Soul」ということもあり、そのリスペクトを込めて、書かせていただきました。
◆「Get up! Shout!」というタイトルには、どんな意味が込められているんですか?
今は、叫びたくても叫べないというフラストレーションが溜まっている状況が続いているので、早くみんなで叫び合いたい! という思いを込めて付けました。作品の中でも、それぞれが果たしたい目的や抱えている思いを爆発させて戦いを繰り広げているので、その姿にシンクロすると思いました。
◆カップリングには、玉村たまおのキャラクターソング「花、星、空」のリアレンジセルフカバーも収録されますね。
20年ぶりのアニメ化、そして今回初めて主題歌を担当させていただくということで、このタイミングにぜひ! と。以前から、この曲をセルフカバーしてほしいというリクエストをたくさん頂いていたので、ついに実現できてうれしかったです。
◆久しぶりに歌った感想は?
楽しかったです! 実は4テイクしか録っていないんですよ。以前レコーディングをした時のことは今でも鮮明に覚えていますし、イベントやライブで歌っていたこともあって、体に染み込んでいるんだと思います。自然にスイッチが入って、かわいくとか若々しくとか一切考えず、この曲に出会ったばかりの初々しい水樹奈々として歌えました(笑)。もちろん、今回はたまおではなく私自身として歌っているので、この20年の経験や思いが乗っている部分もあると思います。
◆アレンジもあってか、すごく前向きな歌声に聞こえました。
それは藤間仁さんの、ノスタルジックさと現在を融合させる、華やかなアレンジのおかげです。思いが届かないもどかしさや切なさよりも、あなたに出会えてうれしいという喜び、例えかなわない恋でも、こんな気持ち経験できて私はとても幸せですという、前向きな解釈になりました。
◆もう1曲のカップリング「Phase 21」についても教えてください。
実は、最初に収録が決まっていたのが、この曲なんです。昨年の春は、初めての緊急事態宣言が出て、自分たちに何ができるだろうと模索していた時期だったので、この曲と歌詞がスッと入ってきて。不安や壁にぶつかることもあるけれど、今だからこそできることを探して、新しいフェーズに適応できるように更新していこうという気持ちにピッタリで。どんな状況でも自分自身と向き合って高めていけるように頑張っていきたいという思いを込めて、制作しました。タイトルには2021年にリリースされること、そして私も歌手活動21年目に突入し新たなフェーズを迎えているという意味も込めています。
◆今回、ジャケット写真はいつもと雰囲気が違いますね。
中央の水樹奈々から、2人の水樹が分身しているような構成なのですが、今にも溢れ出しそうな魂の叫びを表現しています。実は今回、初めて振付師さんに入ってもらったんです。自分にない動きを取り入れることで、“オーバーソウル”状態のような表現ができるんじゃないかと思って。ライティングもライブの照明のようで、今までのジャケ写にない表情が撮れました。
◆『SHAMAN KING』が20年の時を経て復活し、水樹さんもアーティスト活動20年を超えましたが、20年前と比べて今の自分がパワーアップしていると思う部分はありますか?
心身ともにタフになりました! 20年前は、朝が苦手で、休日は昼まで寝ているなんてことも。でも今は寝ているのがもったいない! と飛び起きます(笑) それこそ20年前は、ライブも1本やるので精一杯で。ライブ後半戦でバテてしまうことが悔しくて、とにかく体力を付けなきゃとトレーニングに励んだ結果、今は当時より圧倒的に体力があると思います。
◆「Get up! Shout!」のタイトルにちなんで、今叫びたいことは?
「ライブやりたい!」「ツアーに行きたい!」「愛媛に行きたい!」ですね!(笑) 2020年に予定していた「LIVE RUNNER 2020」は愛媛スタートで、20周年の記念ツアーを地元からスタートできるんだと本当に楽しみにしていたんです。最近は実家にも帰れていないので、いつか全てリベンジしたい!
◆水樹さんが今、あらためて感じる『SHAMAN KING』の魅力は?
やはりキャラクターたちの生様ですね。主人公の葉は、暇さえあれば寝ているようなマイペースな人なのに、自然と人が集まってくる。それって、人間力があるからだと思うんです。私も、もっと要領よく生きられれば楽なのにと思うことがあるし、抜くところがなくて疲れることもあります。だから葉に惹かれるのかもしれません。葉のようになりたいと思う人もいれば、そうではない考えの人もいる。でも人を惹きつけるという点では、同じで。自分の意見や正義を押しつけたりせず、みんなそれぞれ考え方が違っていてもいいと言ってくれる、そのスタイルが時を経ても多くの人に響くのかもしれないですね。
PROFILE
水樹奈々
●みずき・なな…1月21日生まれ。愛媛県出身。主な出演アニメ作品は、『SHAMAN KING』玉村たまお役、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』うずまきヒナタ役、『ハートキャッチプリキュア!』花咲つぼみ/キュアブロッサム役、など。2022年1月3日、4日に、さいたまスーパーアリーナで「NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022」を開催予定。
リリース情報
「Get up! Shout!」
2021年10月27日(水)発売
1320円(税込)
公式サイト: https://www.mizukinana.jp
公式Twitter:@NM_NANAPARTY
公式チャンネル:https://www.youtube.com/user/mizukinanaKING
photo/関根和弘 text/野下奈生(アイプランニング) hair&make/松田よりこ styling/KATAYAMA SAYURI