高良一(たからはじめ)という人がいた。明治四十年(一九〇七)那覇市うまれ。警察官の父は転勤が多く、県内を転々とした。大人になったら沖縄本島北部の本部村(もとぶそん)(現在の本部町)に住みついて、海運業、倉庫業、旅館経営など、手びろく事業をおこなった。仲間からは「高良のラッパ吹き」と言われた。大言壮語するという意味で、実際、彼は酒が入ると、「私は鯨だ。君たちはスルルグヮーだ」とよく言った。スルルグヮーとはきびなごのこと。体長十センチほどの小魚で、なるほ 全文
産経新聞 11月29日 07時00分
もっと詳しく