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これにより、電気自動車メルセデスAMG EQS 53は、まごうかたなきAMG製のEVモデルとなった。

この初の電動AMGは、EQS 53のパワーアップに加え、技術的な面でも大幅な変更が加えられている。ドライビングインプレッションを含むすべての情報。

メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+のハイライト:
• 最高出力761馬力、最大トルク1000Nm
• 0-100km/h加速3.4秒
• 価格は152,546ユーロ(約1,980万円)から

市場投入と価格: スタート価格は150,000ユーロ(約1950万円)以上

メルセデスは「Sクラス」において、常にラグジュアリーさとスポーティさを両立させてきた。
AMGとして高級サルーンがスポーツカーになったわけだが、このバランス感覚は、Sクラスの電動バージョンと言える「EQS」でも実現されている。
限定車「SLS AMGエレクトリックドライブ」に続き、「メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+」は、AMG初の量産型オール電動モデルとなる。

「EQS」はV8サウンドが鳴らなくとも、本物のAMGフィーリングが伝わるはずだ。
アファルターバッハに本拠を置く会社は、大きなスパナをかけて、従来までの技術をひっくり返したのである。
この電動サルーンの価格は152,546ユーロ(約1,980万円)から注文可能で、「EQS 53」は、2022年にディーラーのショールームに並び始める予定だ。

走りと性能:「ダイナミック+」パッケージで最高出力761馬力を実現

「EQS 53」は、フロントアクスルに174kW、リアアクスルに310kWの2基の電動モーターを搭載している。
どちらもソフト面、ハード面で改良が加えられ、合わせて484kW(約660馬力)を発揮する。
オプションの「ダイナミック+」パッケージでは、出力は560kW(761馬力)、トルクは1000Nm以上となり、この数値は「ポルシェ タイカン ターボS」のオーバーブーストパワーに匹敵するものだ。
この値はレーススタート時にしか達成できない(ローンチコントロール)のものだが、0から100km/hまでを3.4秒で疾走する。

EQS 53は最大200kWで充電し、19分で300kmの充電ができる。

2.6トンもの車重を持つ高級セダンとして、これは十分すぎるほどの価値あるものだ。
そして、最高速度は250km/hだ。「ダイナミック+」がない場合は、最高速度は220km/hとなり、それでも「EQS 580」より10km/h速い。
電力は、改良され、安定して長くパワーを呼び出せるようになった、107.8kWhのバッテリーから供給される。また、冷却性能も向上している。
それによる航続距離は最大586kmだ。

「ダイナミック+パッケージ」であなただけの音の世界へ

ちなみに、自動車の音にこだわる人もご安心を。
AMGは「EQS 53」に、走行状況に応じて音を変化させる、いわゆる「オーセンティックサウンドワールド」を装備しているからである。
「ダイナミック+」パッケージでは、サウンド体験をさらに研ぎ澄ますための「パフォーマンスサウンドワールド」が別途追加されている。
この音がどう聞こえるかは、今のところ、まだ検証できていない。
しかし、少なくとも、価格相応のサウンドは供給してくれることだろう。

ドライビング: 2.6トンなのにEクラスのような軽快なフットワーク

AMGは、0から100km/hまでに、標準の「EQS 580(523馬力)」より1秒弱速い3.4秒で到達する。
最高速度が210km/hから250km/hになったのも嬉しいが、それは「AMGダイナミックプラス」パッケージを追加で注文しないと、220km/hで止まってしまう。
それよりも、エアサスペンションと後輪操舵を標準装備したシャシーの最適化の方が印象的だ。

もちろん、V8の深いエンジン音とは比べものにならないが、それでもかなりカッコイイ音がする。

「ノーマル」の「EQS」もストレートでは文句なしに素晴らしいが、2.5トンを超える重量はカーブでは重く、しかもエッジまで力強く押し出す。
一方、AMGは、まるで数百kgの軽量化を果たしたかのように、軽快にコーナーを回り、最大9度までステアする後輪のおかげで、与えられたラインを守り、「Eクラス」並みの軽快なフィーリングを実現している。
AMGのエンジニアリングの成果には素直に脱帽だ。

希望に応じて、AMGはアスファルトの上を柔らかくスプリングすることができる。
アファルターバッハの技術者たちは、単に下部構造を固めただけのような安易なことはしていない。
「AMG GT 4ドア」と同様に、ダンパーの外側に取り付けられた2つの圧力解放バルブにより、エアスプリングの減衰力をそれぞれの運転状況に合わせてより正確に調整することができ、伸側と縮側のステージが互いに独立していることが保証されている。
よく言われるスポーティさと快適性のバランスはさらに向上し、AMGモデルはアスファルトの上でもバターのような柔らかさでスプリングする。
また、サスペンションコントロールユニットのチューニングを見直し、減衰力の最小ラインと最大ラインの距離を長くするなど、同じ目標を追求している。

さらに、AMGはリアアクスルビーム、サブフレームとエンジンのサスペンションマウントを完全に再開発し、横方向のスタビライザー、ホイールキャリア、コントロールアームを見直している。
「EQS」には、スムーズな運転、快適な運転、スポーティな運転、ダイナミックな運転(スポーツ+)の4つのドライビングモードがあらかじめセットされており、さらに、「インディビジュアル」モードで個々のパラメーターを、自分の好みに合わせて組み合わせることができるようになっている。
音もそれに合わせて調整され、静かな路面電車のささやき音と未来的なワープドライブの音響の間で変化し、実際に「EQS」にとてもよく合うだけでなく、ドライバーの耳に正確なフィードバックを送る。
そして、それによって自分のスピードを理解することができるようになっている。

デザイン: AMGラインEQSに極めて近いビジュアル

「53」は、ノーマルの「EQS」から「AMGライン」のボディをほぼそのまま受け継いでいる。
理由は、「AMGライン」だけが、Cd値0.2を達成しており、「53」の数値もそれに近づいているはずだ。
フロントでは、標準装備のデジタルライトと、AMGのパナメリカーナグリルを思わせるフロントマスクの縦型ストラットの変更にとどまっている。
リアには、ダウンフォースを高める大型のスポイラーリップと、よく見るとエプロンサイドに2本のクロームストラットが追加されている。
AMGは、リアにある対応するレタリングによって、間違いなく認識することができる。
フロントには、当然ながら内燃機関仕様の「Turbo」のレタリングが省略されており、その代わりに「4MATIC+」が備わっている。
写真の車両と同様に、ブラックアクセントとダーククロームトリムを採用した拡張ナイトパッケージがオプションで用意されている。

オプションのナイトパッケージを装着すると、ブラックのEQS 53はさらに邪悪な印象を与える。リアの変更点はスポイラーとクロームトリムである。

内装: カスタムディスプレイを標準装備したハイパースクリーン

コックピットでもオリジナルからの変化が見られる。
特別な装飾ステッチを施した広範囲なレザー張りに加え、マイクロファイバー、カーボンインレイ、AMGロゴ、ドアシルパネルのイルミネーションAMGレタリングなどが多用されている。
スポーツステアリングホイールには、滑り止めカバー付きの異なるリムのほか、ドライビングモードや、ESPを設定するための2つのコントロールサテライトが装備されている。
AMGによれば、後者は完全に停止させることができるそうだ。
また、ハイパースクリーンも標準搭載され、「53」ではデジタルコックピット用に2つの表示面を追加している。
また、スタジオ車両にはまだ搭載されていなかったが、助手席のスクリーンには独自のグラフィックが搭載される予定だ。

ハイパースクリーンは、AMGに標準装備されている。マイクロファイバーとカーボンがコックピットにスポーティな華やぎをもたらしている。

装備: AMG GT 4ドアのダンパーを使用

また、AMGのエンジニアは、サスペンションとその周辺を微調整している。
「53」は、基本的な車高に変更はないものの、フェイスリフトされた「AMG GT 4ドア」のエアサスペンションとダンパーユニットを採用し、個別に伸縮減衰力を調整することができるようになっている。
さらに、リアアクスルビームを改良し、より硬いアンチロールバーを装着している。
そして、ワイドなホイール(21インチと22インチの3種類)と同じサイズのタイヤで、より高いグリップ力を実現している。
一方で、フロントアクスルに強大な440ディスクを備えたセラミックブレーキがオプションで用意されている。

電動63Sもありうる

メルセデスによると、「AMG EQS 53」は、明らかにサーキット用ではなく、公道でスポーティなドライビングエクスペリエンスを提供するために設計されているとのことだ。
「63」という数字がわざわざ省略され、現行の「EQ」モデルで使われなくなるのは、こうした事情もあるのだろう。
しかし、AMGはすでに独自の電動プラットフォームを開発中であるため、後々「63」という数字が採用される可能性は高い。
そしてその頃には、レーストラックに特化した、初のオール電動車「AMG 63」が登場すると思われる。

結論:
AMGは「EQS 53」を単にパワーを上げるだけでは物足りなかったのだ。というのも、初の大型電動AMGは、アファルターバッハのフィーリングが大きなV8だけに生きているのではないことを示すことを意図しているからだ。
そして、最初のドライブが示すように、この車のパフォーマンスは十分に説得力のあるものだった。

そもそもAMGとは1967年代に、ハンス ヴェルナー アウフレヒトが創業した会社で、ツーリングカーレースに「300SEL 6.8」で、うんぬんかんぬん・・・という話は、今のAMGユーザーにはもはや関係のない話で、2021年の現在、メルセデス・ベンツの高性能モデル、あるいはスポーティバージョンのコスメティックを施されたモデルの呼称がAMGである。
マイバッハがラグジュアリーのラインナップならば、スポーティなほうのラインナップがAMGなわけで、こういう展開をメルセデス・ベンツがメーカーとして行うのは、言ってしまえば収益が高い(儲かる)から、である。なんとも身も蓋もない話ではあるが、事実なのだから仕方がない。
今後数年で完全EVメーカーとなるはず(本当かいな)のメルセデス・ベンツとしても、(儲かる)AMGをなくすわけにはいかないし、じゃあどうしたかというと、EVを(航続距離が減ることなどお構いなしに)、とびきり高性能化し、それっぽいお化粧を施し、わざわざ内燃機関風の音を合成音で作って演出するという方向のモデルを成立させる、その第一段が、今回の「AMG EQS 53 4MATIC」である。
地球温暖化とかSDGs(これまた広告代理店の策略にしか感じられないけど)といったエコロジー対策だったはずのEVなはずなのに、それを一般道では使い切れないほどの高性能にして、音まで作って、3トン近い自動車を強引に電気エネルギーで走らせることに、いったいどんな意味があるのか僕にはさっぱりわからないが、メーカーとしては儲かるんだからやめられない・・・。そんな自己中心的で矛盾に満ちたEVが、これからも乱発されるのだろうと考えると、いっそう内燃機関への想いが高まってしまうのは私だけだろうか。

Text: Michael Gebhardt, Andreas Huber und Moritz Doka
加筆:大林晃平
Photo: Daimler AG