※本記事は「クロージャの機密ファイル」のネタバレを含みます。閲覧にはご注意ください。
ソーシャルゲームでは往々にしてネットミームが生まれます。『アークナイツ』においては「ロドス・アイランド製薬がブラック企業」というもの。ストーリー上、主人公であるドクターやヒロインのアーミヤが休まず働いているような描写が多く「主人公たちの所属するロドスはブラックである」というネタが生まれ始めました。
とはいえあくまで二次創作の範疇……と思いきや、2021年より公開され始めた公式ミニアニメ「クロージャの機密ファイル」が“ブラック企業”というネットミームにのっかり話題になっています。
9話まで配信中(2021年8月29日現在)の本作。主人公たちが所属する組織「ロドス」について購買部でおなじみのキャラ「クロージャ」(本来はエンジニア)が解説するミニアニメです。ところが話が進んでいく結果、ブラックなロドスが明らかに……。
今回は、「クロージャの機密ファイル」において“ロドスは本当にブラックなのか”検証していきたいと思います。
ネットミームとしての「ブラック企業ロドス」
まず、ネットミームとして語られる“ブラック企業ロドス”についての簡単な解説を。主にCEOとしてのアーミヤの発言、および頻繁に語られる業務の多さが関係しています。
アーミヤは若いヒロインですが、主人公たちの所属するロドス・アイランド製薬の「CEO」、最高責任者です。つまり主人公たちの上司なのですが、ネットミームではよく「パワハラ上司」扱いされています。ホーム画面でのセリフが原因の一つ。
「休むことが許されない」というイメージの上に、アークナイツではシステム上スタミナが理性で表現されることから「働いて働いて理性が無くなれば許される」とも解釈可能。それが転じて「理性なくなるまで働かせるアーミヤCEO」というイメージが誕生しました。
公式HPでファンキットとして配布およびLINEスタンプで販売されている「ひたすらアーミヤ」などでは“パワハラ”じみたプレッシャーに変化することも。では今回の「クロージャの機密ファイル」において、アーミヤは“ブラックな上司”であるのでしょうか。
「クロージャの機密ファイル」第1・2話目から見るロドスの忙しさ
記憶を失ってロドスに戻ってきたドクターに対し、アーミヤがクロージャにロドスを案内させようという序盤。アーミヤはCEOですので時間がないのも事実。メインストーリーでも暇そうにしているところを見たことがありません。
隙あらば購買部で金を使わせようとするクロージャに対して、アーミヤが圧をかける姿が特徴的です。
さて、人事労務用語辞典の「ブラック企業」の項目から一部引用すると、「(ブラック企業とは)本来業務とは無関係な部分での非合理的負担を従業員に強制したりする企業や法人を指します」とあります。今回はクロージャが(結果的に)仕事に乗り気になっており、かつ業務に関係性があることですのでブラックな状況ではないでしょう。
「クロージャの機密ファイル」においてアーミヤはあくまでクロージャのストッパーで、上司としての責務を全うしているだけです。アーミヤはブラックな上司ではありません。
ただ、仕事量が多いということは語られています。「クロージャの機密ファイル」は時系列として「レユニオン編」直後でしょうから、事後処理などが残っているのかもしれませんね。
第3~5話 ボッタくるクロージャ、AIに対してのパワハラ……!
アーミヤの監視をまいたとたんに暴走を始めるクロージャ。ドクターの資源をかっぱらったりロボットたちに反乱を起こされたりと散々な状態をひきおこし、彼女はブラックな人間として描かれています。アーミヤが把握していない以上企業としての問題ではなさそうですし(把握してないことは問題です)、そもそも順法精神に関わってきます。限りなくブラックな人間です。
しかしクロージャとドクターの力関係は不明。上司と部下の関係性でない以上「ブラック企業」の原因ではなく、別の意味での“ブラックな人間”でしょう。今のところクロージャもブラック企業の一因ではないと結論付けます。(順法精神を除いて)
しかし、もしAIに人権が認められるのであれば彼らに対する言動は確実にアウトです。ロボットたちのほうはルールを順守したうえで(自爆以外)人道的にドクターを保護しています。
ちなみに筆者が気になったセリフがこちら。
つまり「クロージャの購買部」は「正規の購買部」ではない……?
では、ロドスはブラック企業ではない? 次々と過労で倒れていく仲間たち。
「ロドスはブラックであるか?」というテーマで検証してきましたが、アーミヤもクロージャも、“仕事量が多い”という一点だけで企業としてブラックとは言い切れませんでした。ではロドスはブラック企業ではないのか。その答えに「クロージャの機密ファイル」第6話のタイトルが答えてくれます。「ブラックすぎる工場――製造所」。やっぱりロドスはブラック企業でした。
これらはゲーム内の「基地システム」紹介も兼ね、ゲームシステムと話がリンクしています。キャラたちを基地に配置して自動で資源を生産してもらうというシステムで、金銭面からレベルアップの素材まで生産可能。地味ですが大いに役立ちます。
そのかわり配属した仲間たちの体力はガンガン削られていくので定期的に休養させる必要があります。よくある事態としてうっかり交換を忘れていたら体力ゼロのままひたすら働かせているという事態に。「ロドスがブラック企業」たる由縁の一つです。
ゲームシステムから生まれたネットミームが公式アニメに反映されるという離れ業を見せる「クロージャの機密ファイル」。ここにきて次々と頼れる仲間たちが過労で倒れていき、地獄のブラックストーリーに変貌します。
第9話、クロージャも現状に心を痛めていた……。
第9話では事態改善を求めるニアールが登場。さすが耀騎士ニアール。
そしてポロっと漏れるクロージャの本音。まるでブラック企業の経営者が呟くような一言を。残業をはじめとした現状に心を痛めているようです。(「Castle-3」は反逆の結果、発電所でBATTERYにされていますが)
ふと疑問に思う点がひとつ。CEOであるアーミヤを差し置いてクロージャの権限はどこまで及んでいるのでしょうか? アーミヤが現状を知りながら放置していたとしたのなら(もちろん知らなくても)組織のトップとして責任は免れません。
ただ、ここでメタ的な視点で見てみましょう。
この「クロージャの機密ファイル」において“クロージャの権限”は“プレイヤーの権限”と同格に扱われています。基地システムを回すのはプレイヤーであって、資源を購買部に勝手に投入できるのもプレイヤーのみ。「ドクター」が作中にいるから勘違いしてしまいそうですが、「クロージャの機密ファイル」において“プレイヤーサイド”なのはクロージャのほうです。
そういう点を踏まえれば「クロージャの機密ファイル」において諸問題の責任はクロージャにあり、ひいてはプレイヤーが問題と言えるでしょう。アーミヤCEOは悪くありません。
結論、ロドス・アイランド製薬はブラック企業でした。ただし「クロージャの機密ファイル」がベースの場合です。
ここでのクロージャはプレイヤーに近い存在です。こまめに基地運用を心がければ少なくとも「クロージャの機密ファイル」で語られる「ブラック企業ロドス」は誕生しないかもしれません。