Live2Dによるクリエイター向けイベント「alive 2021」が2021年12月4日に開催されました。2014年にスタートして今年で8年目を迎える本イベントは、昨年の「alive 2020」に引き続きオンラインイベントとして開催され、多くの関係者や業界志望者などが視聴しました。
ゲームやVTuberを通じ「Live2D」という技術が広まっていくことで、多くの人々に「動くはずのなかったものが動き出す」という衝撃を与えることになりました。
その衝撃を受け取るのはゲーマーなどのユーザーだけではなく、キャラクターを描くイラストレーターさんやプログラマーらにとっても同じことでした。
「もしも自分が描いたキャラクターが動き出したなら…」と興味を持つかたがたは後を絶たず、現在では漫画家/イラストレーターとして働きながらも、Live2Dという技術をも自身の技として磨き上げたクリエイターが多く存在します。
このトークセッションでは「Live2Dを仕事にする -Live2Dプロクリエイターはこうして生まれた!-」と題し、いま最前線で活躍する3人のLive2Dクリエイターであるけっふぃーさん、ナナメさん、fumiさんが登壇し、自身のこれまでの活動からLive2Dクリエイターを目指す方々に向けたトークセッションとなりました。
3人全員が何らかの形でイラストレーターやデザイナーとして活動を続け、Live2Dとの出会いが転機となった3名です。3名の簡単なプロフィールを掲載します。
<プロフィール>
けっふぃー:Live2Dモデラー/Live2Dアニメーター
現在でも企業に勤務しゲームアプリの2Dモーションを制作している。
Live2D制作:風真いろは/角巻わため/アキ・ローゼンタール/Takanashi Kiara/Kureiji Ollie/桐生ココ/尾丸ポルカ/Ouro Kronii(全てホロライブ関連)などを担当。滑らかな動きと可愛らしさを両立されたモデリングは大きな評価を得ている。fumi:Live2Dデザイナー/イラストレーター
キャラクターデザイン制作:葉山舞鈴(にじさんじ)Live2D制作:服巻有香/御園結唯(共にブシロード)/96猫/鹿乃などを制作。その他大手ゲーム会社やPV用Live2Dモデリングやディレクションなど担当。書籍『10日でマスター Live2Dモデルメイキング講座』を発表し、専門学校に非常勤講師として務めるなど、多くのLive2Dクリエイターから支持を得ている。ナナメ:イラストレーター/デザイナー/Live2Dモデラー
Live2D制作:不知火フレア(ホロライブ)/アステル・レダ/夕刻ロベル(共にホロスターズ)、ぞん子(ZONeエナジー公式アンバサダー)/ななひら/ひらい(アメリカザリガニ)/樫野創音ほか。noteを通じてLive2D関連の様々な情報を発信してきた。
最初のお題は、「Live2Dに興味を持ったきっかけ」について。
けっふぃーさんは、Pixivで流行っていた「#うごイラ」からLive2Dを知り、ナナメさんはスマートフォン用ゲーム作品『デスティニーチャイルド』で多くのキャラクターが動いていることに興味をもってから、fumiさんは専門学校の卒業制作を通じてLive2D社(当時のサイバーノイズ社)に自分から話を持ち掛けた、とそれぞれのきっかけが語られました。
次の話題は、「Live2Dの学習方法」について。数年前という割と身近な時期とはいえ、当時はほとんどクリエイターがいない状況。少ない情報をかき集めながら、模索し続けてきた3人ということもあり、やはり学習方法についてはほぼ同じ。
・Live2D社が発表している公式マニュアル・資料を参考にする。
・YouTube動画やTwitterでノウハウを拾い集める。
これに加えて、実際の制作をこなし続けることもあるでしょう。ナナメさんは、それまで勤めていた会社の身近なプログラマーのなかでは情報共有をしていくのが当たり前だったこともあり、「Live2Dを使うクリエイター」向けの記事や情報を多く発信し続けてきました。司会を務める音咲ユナさん、キューブくん、登壇者のけっふぃーさんとfumiさんもナナメさんの記事を参照したことがあると即答。Live2Dクリエイターの発展に大きく貢献したともいえます。
現在ではLive2D社内のデザイナーチームが主導となって、Live2Dを学ぶオンライン講座「Live2D JUKU」を開催。月額990円でLive2D社内のデザイナーから直接学べるという内容、これは非常に破格の内容と価格設定だと言って良いでしょう。
次の質問は、「Live2D案件を獲得した経緯」について。けっふぃーさんは「Twitterで素直にVTuber案件を受けたいとツイートした」と語り、2017年~2018年ごろはLive2Dを用いたVTuberが数多く登場していたのを見て、思い切ってツイートをしてみたといいます。ナナメさんは、知人から案件を頂いたり、Twitterで思い切って呼び掛けたり、様々な懇親会で名刺交換したりするなど多岐に渡ってアピールしていたことがきっかけのようです。fumiさんは、TwitterにLive2Dを動かしている映像を載せていたのをカバー社のスタッフに見てもらったことがきっかけだったと語ります。
当時は個人VTuberという言葉すらないころ、しかもLive2Dを動かせるクリエイターもごく少数ということもあり、全員顔見知りレベルだったと懐古する3人。3人に共通するのは、なんといっても「Twitter経由で仕事を頂いた」という点です。現在ではLive2Dクリエイターも数多くいるなかで、必要な会社は応募をかけることもあるでしょうが、彼らスタッフはTwitterもしっかりとチェックし、腕利きのクリエイターを日夜探しているのではないでしょうか。
4つ目にあがったのは「Live2D案件で苦労したこと」です。
3人に共通していたのは、オファーを頂いた中でレギュレーションが数多く、「レギュレーションに合わせる」ことに注意しつつも、「自由に動かす」「自分らしい表現」を模索し続けていること。この点、語り口は別々ながらも共通した話題を挙げているのが印象的でした。
その他にも、担当者として個人名があがることのプレッシャー、先のことを踏まえて制作に臨むなかで素材分け・データ管理・仕様などをどのようにしていくか、海外人気に伴って海外からの依頼が多くコミュニケーションに四苦八苦している点が挙げられました。現在注目を集める分野で活躍され、3人とも一度は会社員としてアプリやゲーム制作会社に勤めていた経験もあるからこその悩みを語りました。
現在では企業・個人問わずに案件を頂く3人ですが、依頼主側にLive2Dに対する知識などがないことが多く、密にコミュニケーションを取るパターンもあるとのこと。特に現在増加傾向にある海外からの依頼など、やはりコミュニケーションが重要になってくると強く語っていました。
トークセッションのラストには3人が「プロのLive2Dクリエイターを目指す方」に向けたメッセージを送りました。そのメッセージをそえて、この記事の締めたいと思います。
けっふぃー「Live2Dを触ると途方もない道のりだと感じることも少なくないと思いますが、そこに注いだ熱量や時間は裏切らないはずです。情熱や経験の数だけ真価を発揮するのがLive2Dだと思うので、少しずつでも挑戦してみてほしいです」
ナナメ「Live2DはVTuberだけではなく、ゲームやアニメなど活動の場が広がっている状況です。学びの場が増え始めていて挑戦しやすいと思います。ちょっとでも制作したものはすぐに公開して、クリエイター同士で刺激し合えるといいと思います」
fumi「Live2Dを学ぶ機会が多く、色んな情報を手に入れられるようになりました。まだやったことがなく悩んでいる方がいるなら、実際に手を動かして制作してみてください。学生さんなら専門学校を覗いてみるのも一つの手だと思います。考えるよりも行動したほうが良い時代になっていますので、怖れずにぜひチャレンジしてみてください」
本公演の詳しい内容については、YouTube上に動画がアップされているので、こちらに掲載させていただきます。