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圧力や温度などさまざまな条件で作製されたカーボンガラス
Credit:Yuchen Shang et al.,Nature(2021)

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ガラスはその扱いやすさから非常に人気のある材料ですが、耐久性には問題を抱えています。

そこで研究者たちは、高い硬度を持った強いガラスとして、カーボン(炭素)をガラス状にした材料の作成に興味を持っています。

中国吉林大学の研究チームは、通称バッキーボールと呼ばれるサッカーボールのような構造の炭素分子に高い圧力と温度をくわえて崩壊させ、ダイヤモンドよりも硬いカーボンガラスの作成に成功しました。

これは最近報告された「AM-Ⅲ」というカーボンガラスに次いで、世界で2番目に硬いガラスです。

研究の詳細は、11月24日付で科学雑誌『nature』に掲載されています。

目次

  • ダイヤモンドより硬いガラスを作る
  • ダイヤの代わりにサッカーボールを崩す

ダイヤモンドより硬いガラスを作る

非常に硬いガラスを作るということは、材料研究を行う研究者にとって1つの目標となっています。

今回の研究チームの1人、カーネギー科学研究所のイングヴェイ・フェイ(Yingwei Fei)博士も「3次元結合を持つアモルファスカーボン材料の合成は長年の目標だった」と語っています。

ガラスについては、よく「液体でも固体でもない状態」という不思議な説明を聞いたことがあると思います。

この特殊な構造がガラスを特別な物質にしている原因で、これを科学の世界では「アモルファス構造」と呼びます。

アモルファスは、通常の固体が作るきれいに配列した結晶構造を持たず、無秩序な配列をしています。

こうなると普通は液体になりますが、アモルファスはその無秩序な配列で固体となっているのです。

アモルファスは成形しやすい、多くの優れた機械敵特性を備えるため、材料としては非常に魅力的です。

このため、さまざまな素材でアモルファス材料を作り出す研究が進められているのです。(通常のガラスは二酸化ケイ素(SiO2)を主成分としています)

ただ、アモルファス材料の合成は条件が難しく、なかなか実現されていないのが現状です。

なかでも注目されるのは、ガラス状の炭素、カーボンガラスの作成です。

炭素はダイヤモンドをはじめ、非常に多様な構造を取ることが可能な元素であり、作り出された材料に非常に硬い優れた特性をもたせることができます。

アモルファスダイヤ(右)とダイヤモンド(左)の原子構造
Credit:Zhidan “Denise” Zeng,Carnegie Science

硬い物質は、原子が短距離で非常に整った配列を持っているために実現されます。

ダイヤモンドは、3次元の強い結合を持っているために、優れた均一な硬度を得ています。

フェイ博士が目指すような、優れた三次元結合を持つアモルファスを作ろうとした場合、ダイヤモンドのような優れた結晶を出発点にして、それに圧力をくわえて変形させて作成することになります。

しかし、ダイヤモンドの融点は4027℃と非常に高温のため、これを出発点にガラスを作るというのは非常に困難です。

そこで、研究チームはダイヤモンドの代わりとして、炭素の別の優れた構造体を利用することにしたのです。

ダイヤの代わりにサッカーボールを崩す

別の炭素の優れた構造というのが、通常バッキーボールと呼ばれる炭素構造です。

バッキーボールとは、正式名を「バックミンスターフラーレン」といい、60個の炭素原子が、20の六角形と12の五角形で二十面体を構成した構造のことです。

これはいわゆるサッカーボールと同じ構造です。

バックミンスターフラーレン(通称バッキーボール)の構造
Credit:Wikipedia

ちなみにこの構造の発見は1996年にノーベル化学賞を受賞しています。

今回の研究チームは、このバッキーボールを加熱して圧力をかけて構造を崩していきました。

そして、中~短距離ではダイモンドのような優れた秩序を保ちながら、局所的には無秩序に配列されているアモルファス構造を作り出したのです。

実験ではさまざまな条件で、この合成を試していますが、1000℃、20GPa(ギガパスカル)という条件でも作成に成功しています。

完成した材料は1mmという小さなサイズでしたが、ピッカース硬度試験では102GPaという優れた硬度を達成していました。

研究ではマルチアンビル装置を使用してフラーレンC60をダイヤモンドガラスに変換した
Credit:Yingwei Fei,Carnegie Science

一般的なダイヤモンドの硬度は、50~70GPa程度のスコアになるということを考えると、これはダイヤモンドよりもはるかに硬い優れたガラスということになります。

これは以前、中国の別の研究チームが報告した「AM-Ⅲ」というカーボンダイヤに次いで2番目に硬いガラスです。(AM-3の硬度は113GPaだった)

実験では「マルチアンビル装置」という高温高圧をかける機械を使ってバッキーボールを圧縮加熱して、この材料を生み出しました。

今回の研究は、比較的低温で、超硬質ダイヤモンドガラスを合成することに成功していて、「この成果はこうした材料を大量生産するための足がかりになるだろう」と、研究者は語っています。

今後はこうした発見をもとに、もっと大きな塊を作ることが課題となっていきます。

超硬ガラス材料が実現されれば、傷がつきにくい携帯画面など、私たちの身近なところでも活躍する可能性がありそうです。

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参考文献

New Ultrahard Diamond Glass Synthesized
https://carnegiescience.edu/news/new-ultrahard-diamond-glass-synthesized
Say goodbye to smashed phone screens! Scientists create ‘ultrahard’ GLASS that’s even harder than a diamond
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10242651/Materials-Scientists-create-ultrahard-GLASS-thats-harder-diamond.html

元論文

Ultrahard bulk amorphous carbon from collapsed fullerene
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03882-9