10月1日は、国連が定めた「国際高齢者デー」だ。高齢化の波は、先進国だけではなく、新興国や途上国にも及んでいる。ネパールでも高齢化問題が現実的になってきた。9月30日付けのネパールの英字紙カトマンドゥポストは、社説でこの問題を採り上げた。
流出する若者たち
「成功を求めて、若者たちはネパールを出て世界へと向かう。子どもたちが成長するにつれ、年老いた親たちは故郷の村や町に取り残される。ネパールのような国では、都市部以外は、若者たちに十分なキャリアのチャンスや、物質的な豊かさを与えることができない。国に残る者たちと、移住した者たちとの経済格差は広がるばかりだ」
社説は、ネパールにおける若者たちの海外流出をこのように表現した。国に残る者たち、とは、すなわち高齢者だ。
さらに、「新型コロナの感染拡大によって、格差がさまざまな側面で浮き彫りになっている」と、指摘する。
「新型コロナの犠牲者は60歳以上が多かった。真っ先に生命の危険にさらされたのは高齢者たちで、彼らは感染拡大によるロックダウンによる経済的な損失にも苦しめられた。ネパールでは、社会保障システムも確立されておらず、多くの場合、寄付など善意に頼るしかない状態にある人も多い」と述べ、高齢者が新型コロナの最大の被害者となっていると指摘した。
取り残される高齢者
医療技術は、日々、進歩し、人間の寿命は延び続けている。
「1950年時点の平均寿命は46歳だったが、2010年には68歳に延びた。世界各地で高齢化が進んでいるが、最もその伸び率が大きいのは、東アジアと東南アジアだと言われている。高齢者の人口も2019年の段階では2億6100万人だが、2050年には5億7300万人にまで増えると予想されている」
高齢者の増加に伴い、医療の提供も必要だが、ネパールの医療システムは不足しているという。
「高齢者は失禁や認知症などを発症し、介護も必要だが、ネパールではそうした体制が整っていない。さらに、医療保険システムも欠如しており、高齢者の多くは最適な医療を受けることができない。高齢者人口は今後も間違いなく増え続けるため、適切で効果的な計画を立てることは、社会や国家の重大な責任だと言える」
今年の高齢者デーのテーマは、「Digital Equity for all Ages (あらゆる年齢層に公平なデジタル社会に向けて)」だった。高齢者は人口の多くを占めているにもかかわらず、情報から取り残されることが多い。こうした視点から、来るべき高齢社会の在り方を議論すると同時に、老いることについて改めて考える機会にしたい。
(原文https://kathmandupost.com/editorial/2021/09/30/who-will-take-care-of-the-elderly)
The post ネパールの社説が高齢化社会について問題提起 first appeared on dotworld|ドットワールド|現地から見た「世界の姿」を知るニュースサイト.