もっと詳しく

サステナビリティ(またはSDGs)は時代のキーワードとして世界中に広がり、コロナ禍においても各国で積極的な取り組みが見られます。2021年にこの分野で起きたことを、買い物・モビリティ・食品・金融に分けて振り返ってみましょう。

↑この一年間でさらに進んだ世界のサステナブル化

 

【買い物】ブラックフライデーのサステナブル化

欧米では、11月末のブラックフライデーやサイバーマンデーにクリスマス向けの買い物をする人たちが大勢いますが、2021年のこの時期、英国では例年と少し違う動きが見られました。ある調査によれば、消費者の約7割がサステナビリティや気候変動への取り組みを意識した商品に注目しているとのことで、特に若い世代の間でこの意識が高まっています。同国が2021年秋に国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開催国となったことも、サステナビリティの広がりに一役買った模様。

 

どの店舗もいつもはこの時期に大々的な割引で大量消費を促しますが、2021年は英国の独立系小売店が集結。ブラックフライデー割引は実施しない代わりに、当日の売り上げの一部を慈善団体に寄付して植樹を行うという「グリーンフライデー」活動のニュースも報じられました。

 

【詳しく読む】

クリスマスにも影響!? 英国で起きる「ブラックフライデー」のサステナブル化

 

また、英国ではクリスマスプレゼントもサステナブル商品が人気を集め、食品からファッションまで幅広い分野で持続可能性を意識した商品が取り揃えられました。使用済みのガラスをリサイクルして作られたワイングラス、くり返し使える蜜蝋ラップ、自然に優しいコスメなどが注目を集めています。再生紙を利用したラッピングペーパーも増えていて、ギフト包装にリサイクル素材を採用した高級ジュエリーブランドが現地メディアでも取り上げられていました。

 

【詳しく読む】

クリスマスツリーの代わりにサステナビリティ? 英国の最新クリスマス事情

 

【モビリティ】気候変動の影響が生み出す新たな商品

 欧米の比較的教育レベルが高い40代以下の層では、環境への影響が少ない生活スタイルを好む傾向があります。また、ここ数年、リチウム電池の小型化といったテクノロジーが進化していることもあり、ドイツでは「eバイク(電気自転車)」の人気が上昇。専用レーンの整備が進み、購入に補助金を出している自治体もあるほどです。

 

なかでも注目を集めているのが、スタートアップ企業が作るハイテクな「スマートeバイク」。各社が販売するスマートeバイクは外観がスタイリッシュというだけでなく、それぞれ違いはあるものの、機能性が高いことが特徴です。後輪の小さなボタンを蹴ればロックが完了するという、鍵いらずの施錠システムや、取り外しができるバッテリー、盗難防止用のアラームや追跡システムの完備など、利便性や安全性を備えた機能が搭載されています。さらに専用アプリを使えば、アシストの強弱、自動ギアシフト、スピード上限などが設定できるのに加え、走行距離や経路、時間、速度の自動記録、バッテリー残量などの確認もスマートフォンといったデバイスで可能に。

 

コロナ収束後もeバイクの人気は加速していくでしょう。既存自転車メーカーもスタートアップに負けまいと市場に乗り出しており、欧州はまさにeバイク戦国時代といった様相を呈しています。

 

【詳しく読む】

eバイク先進国で人気の「スマート電気自転車」3選。 日本で買えるものもピック

 

【食品】地産地消の促進と食品ロスを解決する代替肉

タイには「キンジェー」と呼ばれる菜食週間が存在しますが、最近、同国の首都・バンコクでトレンドになっているのがプラントベースフードです。これは植物由来の材料を使用した食べ物のことで、動物性の原材料をすべて排除するヴィーガンと異なり、あくまでも植物由来のものをできる限り摂取するという考え方に基づいています。

 

健康志向も追い風となり、肉の代替品となるプラントベースミートの人気は特に上昇中。原材料は大豆・米・ココナッツ・ビーツなどですが、なかでも繊維質の食感が米国南部の郷土料理「プルドポーク」に例えられる果物の「ジャックフルーツ」は、どんな調味料も吸収するため、消費者に人気のある代替肉の1つ。農園ではなく道端の植物として栽培されることが多く、これまではあまり食用として利用される機会はなかったのですが、現在はプラントベースミートとして加工や流通が拡大しました。地産地消を促進させるのに加え、食品ロスを減らすという観点からも注目されています。

 

【詳しく読む】

ブームを支える「道ばたの植物」ーー急速に広がるタイの「プラントベースフード」事情

 

【金融】若い世代で主流化する「グリーン・フィンテック」

英国では、デジタル・ネイティブ世代を中心に、エコ感覚を重視しながらスマートフォンを軸とした金融行動を実践する「グリーン・フィンテック」が主流になりつつあります。例えば、アプリ連動型のデビットカード・サービス「トレッド」は、ユーザーの消費活動をCO2排出量に置き換えてアプリに表示する英国初のサービス。トレッドはユーザーの行動を「CO2排出量」として計算し、消費行動を「食料品」や「移動費」などにカテゴリー化します。分類されたデータをさらに分析し、自分のライフスタイルの何が気候変動に最も影響を与えているかを、わかりやすい形で「見える化」してくれるのが大きな特徴。

 

毎月の消費傾向とエコ度が彩り豊かなグラフで表示されるので、それをもとに買い物の内容や移動の方法を変えれば、CO2の排出量を減らすことができるでしょう。炭素回収プロジェクトを行う他社のサブスクリプションにアプリ経由で参加すれば、植林を通じて自分のCO2排出量を相殺できるようになっています。

 

【詳しく読む】

デジタル・ネイティブ世代には当たり前! 英国で大人気の「グリーン・フィンテック」とは?

 

これら記事が示しているように、2021年は従来にも増してサステナブルな動きが目立ちました。気候変動の影響が厳しさを増す中、生活に密着したサステナブルな取り組みは今後さらに広がっていくと思われます。