もっと詳しく

イヤホン・ヘッドホンブランド「NUARL」がコロナ禍で厳しい状況にあるミュージシャンや音楽ファンを応援し、生の音楽を楽しんだ日常とその喜びを想い出して欲しいと願って企画されたイベント「BACK TO STAGE ONLINE LIVE」の第3弾が7月16日に開催。ホフディラン、柴田聡子、tetoの小池貞利によるライヴが東京・下北沢のLIVE HAUSから生配信された。

 

【ライヴアーカイブ動画】

 

 

 

 

 

トップバッターとして登場した小池だが、この配信ライヴの2週間前にギターの山崎陸とドラムの福田裕介がバンドを脱退。「BACK TO STAGE」の特設サイトで、心境を赤裸々に語ったインタビューが掲載されているが、この日のパフォーマンスも小池の心に渦巻くあらゆる感情が吐露されたようなエモーショナルなものとなった。

 

「tetoを代表して小池貞利が歌います」と挨拶をして、歌い出したのは「光るまち」。ライヴハウスの情景を写実的に描き出した歌詞は、今回の配信イベントとまさにリンクするもので、小池自身もライヴハウスで歌えることの喜びを身体全体で発しているようだった。

 

 

 

2曲目の「手」に続いて披露したのは、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」のカヴァー。筒美京平を敬愛する小池が愛する曲でもあり、切々と歌い上げるパフォーマンスはtetoから醸し出される歌謡曲のテイストを垣間見た気がした。4曲目の「燕」は8月4日にリリースされるアルバム『愛と例話』から。歌い出す前に「脱退したメンバーと最後に作ったアルバムなので、ぜひ聴いてください」と告げてから絶唱。その後の「拝啓」とラストの「LIFE」も汗まみれになりながら音楽と向き合い、もがく小池の姿が最後まで目に焼き付いた。

 

 

二番手の柴田聡子もアコースティック・ギター1本で登場し、現在のところの最新作『がんばれ!メロディー』収録曲「涙」からスタート。まるで自分以外はそこに存在しないというほどに歌に没入して、弦を爪弾き、すうぅーっと伸びていく歌声が会場のLIVE HAUSに満ちていく。歌い終わり、はにかんだ表情で頭を下げたところで意識がこっちに戻ってきたようで、そんな佇まいを目にして、この人は真正の歌い手だな、と思った。

 

続く、抑揚がある2曲目「後悔」でも声を枯らさんばかりに熱唱。語頭と語尾を弾けさせるような発声がつぶてのように耳に飛んできて、アコースティック・ギター1本というのを忘れてしまうほど強いインパクトを与える。柴田も中盤でカヴァーを演奏。「私の原点である安室奈美恵さんをやります」と、2007年発表の「Baby Don’t Cry」を歌い出した。ギターを爪弾き、まろやかな音を奏でながら、これ以上ないほど切なく歌う姿に心を奪われっぱなしで、そのままラストの「変な島」まで時を忘れて聴き入ってしまった。

 

 

柴田の天性の魅力もさることながら、ダブ・マスターXによるPAもすばらしかった。絶妙なタイミングでのリヴァーブと、生々しいギターの音色はYouTubeでも伝わってくるので、ぜひ音質についても関心を払って聴いてもらいたい。

 

 

そして、ラストは「BACK TO STAGE」のスペシャル・インタビュアー、サニーデイ・サービスの田中 貴とも交流が深いホフディラン。1曲目は、ちょうど当日に梅雨明け宣言が発表された夜にふさわしい2009年発表の「summer time POP!」。小宮山雄飛の軽快なキーボードに連れられながら、ワタナベイビー、小宮山、そしてコーラスで参加の真城めぐみがハーモニーを重ねていった。後半のオリエンタルな雰囲気を醸し出す鍵盤の調べも含めて、気持ちのよいスタートを切った。

 

ところが、次の曲を演奏する前にMCでワタナベイビーが本番5分前に到着するアクシデントを小宮山が暴露。その遅刻の理由を生々しく語るワタナベイビーに、容赦なくツッコミを入れていく小宮山のコンビネーションはデビュー25周年を迎えても変わらず。頬を緩めながら2曲目の「デジャデジャブーブー」へ。これも軽快なギターとキーボードが耳に転がるナンバーで、続く3曲目「ドライブ」と共に画面の前で思わず身体が揺れてしまった。

 

4曲目は森 七菜がCMでカヴァーした1996年発表のデビュー・シングル「スマイル」。25年前の曲ながら、みずみずしさは失われておらず、3人が実に楽しそうに演奏する姿を目にして、こちらもにんまりしっぱなしに。ラストは「恋はいつも幻のように」。リアルタイムで聴いていた人は色々な思い出が去来するだろうし、森 七菜の「スマイル」でホフディランを知った人にはさらに名曲があったのかと喜ぶはずだろう。ホフディランの25年の軌跡を凝縮したかのような演奏だった。

 

 

 

配信ライヴ終了後には11月に「BACK TO STAGE FES.(仮)」が開催されることも発表になるなど、コロナ以前には戻るのが難しいエンターテイメント業界を引き続き支援する動きを見せる「BACK TO STAGE」。そのラインナップを楽しみに待ちながら、3度目の配信ライヴを心ゆくまで楽しみたい。

 

【ライヴアーカイブ動画】

 

 

 

【ライヴフォトをギャラリーで見る】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。















 

撮影/古溪一道