日本大学理事長の田中英寿容疑者(74)が所得税法違反容疑で逮捕された事件で、日大工学部(福島県郡山市)の災害復旧工事などを請け負った北陸地方の建設業者が、日大元理事の井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=に現金3千万円を提供していた疑いがあることが30日、関係者への取材で分かった。
井ノ口被告は他にも日大関連契約を受注した業者にリベートを要求していたとみられ、東京地検特捜部は一部が田中容疑者に流れた可能性があるとみて捜査している。
関係者によると、井ノ口被告はこの業者に「日大の工事を受注できたのは、俺のおかげだ」と現金提供を要求。業者は昨年9月、井ノ口被告の東京都杉並区の自宅マンションに呼び出され、現金3千万円が入った紙袋を手渡したという。
この業者は令和元年10月の台風で被害を受けた日大工学部の工事のほか、田中容疑者の杉並区の自宅改修工事も請け負った。この際にも井ノ口被告は約1億円が相場の工事を7割程度安く済ませるように要求し、業者は応じたという。
田中容疑者は1億数千万円の所得を隠し、平成30年、令和2年の所得税約5300万円を脱税した疑いで逮捕された。田中容疑者が隠した所得の中には、こうした手口で井ノ口被告が業者に要求して得たリベート収入や、医療法人前理事長の籔本雅巳被告(61)=同=が「提供した」と供述した3千万円も含まれているとみられる。
特捜部は田中容疑者が常習的にリベート収入を得ていたとみており、日大と取引のある関係者を幅広く聴取している。