オランダのアムステルダムは、160以上の運河が縦横に巡る美しい都市です。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者たちは、このアムステルダムの運河を運航する完全自律型の小型船舶を開発しました。
彼らが開発した3番目のモデル「Roboat Ⅲ」は、乗組員の操作を必要とせず、乗客や荷物、商品を目的地まで運べます。
目次
- 操縦士のいらない自律型船舶「Roboat Ⅲ」が都市の運河を巡る
- 運河の障害物をスキャンし学習する制御アルゴリズムを搭載
操縦士のいらない自律型船舶「Roboat Ⅲ」が都市の運河を巡る
自律型船舶「Roboat」のプロジェクトは、2015年末から始まりました。
このプロジェクトはいくつかの段階に分かれており、単なる小型船舶の機能だけでなく、橋の役割を果たせる公共インフラとして、柔軟な活躍が期待されてきました。
複数のRoboatがドッキングすることで瞬時に浮橋を形成したり、単純に船舶として物流に利用したりするのです。
そしてシリーズ最終作として完成したのが、今回のRoboat Ⅲです。
Roboat Ⅲは特に人や物を運ぶ能力が強化されており、自律的にそのすべてを行えます。
全長4mの船体には5人乗ることができますが、操縦士が乗船する必要はありません。
すべてのRoboat Ⅲが自律的に運航するため、50艘以上のRoboat Ⅲの監視に必要なのは、陸上の管理者たった1人です。
しかもRoboat Ⅲは、作業内容に応じて、甲板部分を切り替えられるようなっています。
イスが装備された乗客用デッキは簡単に取り外し可能。
平らな足場デッキに切り替え、他のRoboat Ⅲとドッキングするなら、即席の浮橋に早変わりします。
このようにRoboat Ⅲは、汎用性のある自律型船舶として様々な活躍が期待できるでしょう。
では、これらの機能に欠かせない自律性はどのように確立されているのでしょうか?
運河の障害物をスキャンし学習する制御アルゴリズムを搭載
Roboat Ⅲは電気によって稼働し、搭載されたバッテリーで最大10時間の連続運航が可能。
さらにバッテリーはワイヤレス充電にも対応しています。
そしてRoboat Ⅲの自律機能は、複数のシステムによって確立されています。
まずGPSを利用することで、ある地点から目的地まで安全なルートを自律的に決定します。
その際、橋や柱、他の船舶などとの衝突を避けるため、常に周囲をスキャンしているとのこと。
これは船体の前後に装備されたカメラ・センサーによって可能になっており、360°の視野を確保できます。
そして制御アルゴリズムはスキャンした物体を徐々に学習していくようです。
例えば、システムが新しい物体をスキャンすると、アルゴリズムはその物体に対して「unknown(不明)」というタグ付けを行います。
後日チームは、収集したデータを元に、不明タグに対して「カヌー」などと名前を付けていけるのです。
これにより安全で適用力のある自律システムが確立され、操縦士が必要なくなりました。
チームはすでに、2艘のRoboatをアムステルダムに配備しており、今後は一般利用に向けた実証実験が行われる予定です。
参考文献
One autonomous taxi, please
https://news.mit.edu/2021/autonomous-taxi-roboats-1027
MIT deploys first full-scale autonomous Roboat on canals of Amsterdam
https://newatlas.com/marine/mit-first-full-scale-autonomous-roboat-amsterdam/