犬はキョトンとした顔で首をかしげるときがあります。その行動はかわいらしいものですが、最近、そんな首をかしげる行動は、モノの名前を覚えることができる犬に共通して見られることが判明しました。犬は首をかしげながら、何をしているのでしょうか?
犬が首をかしげる動作は、左右非対称性の動作のひとつとして考えられています。人間が周囲の環境を認識するときの感覚は「右耳のほうが周囲の音を聞き取りやすい」「左目のほうがよく見える」というように、聴覚や視覚の信号を処理するときの認知は左右どちらかの耳や目が優先的に使われます。これは犬も同じで、例えば、物をつかむときに利き足がありますが、首をかしげる動作については研究されていませんでした。
そこで、この問題について調査をすることにしたのが、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学のチーム。あるとき彼らは、犬が首をかしげる動作は、犬が飼い主の言うことを聞いているときに多いことに気が付きました。このことから「認知と動作に関係性があるのではないか」と仮説を立てたのです。
それを証明するため、まず、この研究チームは、以前に犬の記憶力に関する実験を実施したときに撮影した動画を分析しました。この実験では、40匹の犬に複数のおもちゃの名前を覚えさせるトレーニングを3か月間実施。飼い主が犬に、別の部屋に置かれたおもちゃを取ってくるように指示し、犬がそれを実行できるかどうか観察しました。その結果、2つのおもちゃの名前を覚えられた犬は40匹中7匹のみで、大部分の犬はモノの名前を覚えることが苦手であることがわかったのです。
次に、同研究チームは、この実験で飼い主が犬におもちゃを持ってくるよう指示したとき、犬が首をかしげるかどうかを観察。すると、おもちゃの名前を覚えられなかった犬は、首をかしげることがほとんどなかったのに対して、おもちゃの名前を覚えられた7匹は首を頻繁にかしげていたことがわかりました。
そこで彼らは、おもちゃの名前を覚えることができる犬だけを使って、さらに2年間の追加実験を実施。これにより、犬によって首をかしげる方向が異なり、左右どちらか一定の方向に首を斜めにする傾向があることを突き止めました。
飼い主の言うことを理解するため?
この結果を受けて、同研究チームは、犬がおもちゃの名前を聞いたとき、犬が首をかしげる動作とおもちゃを持ってくることには、なんらかの関連性があると論じています。
モノの名前を覚えられる賢い犬は、首をかしげるという動作をしながら、脳をフル回転させているのかもしれないですね。
【出典】Sommese, A., Miklósi, Á., Pogány, Á. et al. An exploratory analysis of head-tilting in dogs. Anim Cogn (2021). https://doi.org/10.1007/s10071-021-01571-8