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★絶品必食編

 さて前回、牛タンの構造について説明したが、やっぱりおいしく焼けなければ牛タンじゃない! というわけで、焼肉店における牛タン、とりわけ難度の高い厚切りタンの焼き方だ。

 目指すゴールは「表面パリッ!」の内部ミディアム・レアである。

 前回も紹介したように牛タンは肉の繊維が縦横無尽に走っている。そして筋繊維がしっかりしている。内部まで温めないと、タンならではの「ザクッ!」とした食感が出ない。かといって、焼きすぎはNG。表面に強い焼きを入れながら、内部を均一なロゼ色に焼き上げたい。

 さて、焼肉店で厚切り肉を焼くときに欠かせないのが「お休み処」。ひとつ余計に皿をもらって、常温でしっかり休ませることを覚えたい。

 焼きの時間は火加減によって変わるが、中火で40秒ずつ両面を焼き、皿の上で2分休ませる−を1セットと考える。

 厚切りタンには切り目を入れる店も多い。その場合は必ず、切り目を下に(先に)焼く。断面が多い側を先に焼いてムダな肉汁の流出を防ぐ。

 よく肉焼きに際して「肉汁が浮いてきたら返す」というが、厳密に言うと浮いてきたときにはもう遅い。返した瞬間肉汁をロースターに飲ませることになってしまう。

 断面積が多ければなおさらだ。「まずは切り目から焼く」を鉄則としたい。これで勝利への道筋は見えてくる。

 切り目側の表面がジュクジュクと泡立ち、焼き色がついたら返しどき。切り目の奥まで火が入っているか確認し、逆側も同じ焼き色をつけ、ジュクジュクするまでを焼いたら皿上で休ませる。

 休ませるとき、今度は切り目を上に向ける。肉のドリップは断面積の多い部分からしみ出してくる。切り目を下にすると皿に肉汁を飲ませてしまうことになる。

 そして2分の休憩を終えたとき、指でもトングでもいいので肉を押してみる。中心から強く跳ね返すような弾力を感じたら、あとは仕上げの焼き。また切り目を下にして、両面をパリッと仕上げ焼き。

 まだ柔らかさを感じたら、焼きの工程を繰り返す。

 回数や秒数はあくまで目安。自分の感覚を鍛えたい。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。