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 大阪府の吉村洋文知事は30日、新型コロナウイルスの感染者を1か所に集めて治療する、いわゆる「野戦病院」構想について、主に入院やホテルでの宿泊療養の対象にならない若い世代の軽症者を受け入れる方針を明らかにした。府幹部によると、10月中の開設を目指し、最大1000床規模を想定しているが、看護師の確保という高いハードルがある。

 改正新型インフルエンザ対策特別措置法は、医療機関が不足し、医療の提供に支障が生じている場合、知事が「臨時の医療施設」を開設すると定めている。野戦病院はその一つ。患者を大フロアに集めることで、個室に入る宿泊療養施設より目が行き届きやすく、効率的な運用が期待できるという。

 府内の軽症・中等症病床(2585床)は
逼迫ひっぱく
しており、30日現在の使用率は90%に達した。府はリスクのある人を確実に宿泊療養ホテルに入れるため、今月13日から対象者を原則40歳以上とし、40歳未満は基礎疾患のある人などを除いて自宅療養にしている。

 看護師が常駐するホテルでの宿泊療養と違い、自宅療養中は容体の急変に対応しにくい。今春の第4波では、自宅で死亡した人が19人いた。自宅療養者は30日現在、約1万7000人に上る。

 吉村知事は30日、記者団に「野戦病院を入院やホテル療養の対象外になる人の受け皿としたい。自宅療養で亡くなる人を1人でも減らしたい」と強調した。

 野戦病院では、まずは健康観察と酸素投与が中心になり、重症者の治療はできないが、態勢が整えば、薬の投与も行うという。

 吉村知事が野戦病院の開設を目指す方針を打ち出したのは、施設の監修を阪大病院に引き受けてもらえたことが大きい。吉村知事は27日夜、阪大医学部の
忽那くつな
賢志教授(感染制御学)と面会し、協力を取り付けた。

 開設場所は、大阪南港の大型展示場「インテックス大阪」(大阪市住之江区)とする予定で、施設を所有する大阪市の松井一郎市長も記者団に「全面的に協力する」と述べた。

 大阪府医師会の茂松茂人会長は「原則自宅療養となる40歳未満の軽症者らが、自宅以外で生活できる場所をつくるのは重要だ。隔離することで家庭内感染の防止につながる」と話す。

 最終的に1000床規模を目指す施設に常駐する看護師の確保は容易ではない。府看護協会には、9月中旬までに21か所から31か所に拡充する宿泊療養施設で勤務する看護師の確保に注力してもらう予定で、府は他の確保策を見つける必要がある。阪大病院も、看護師の派遣はしないという。

 ホテルでの宿泊療養に比べ、プライバシーの確保や風呂などの住環境は劣ることになり、どれだけのニーズがあるかは不透明だ。

 吉村知事は記者団に、野戦病院の開設時期は明言せず、「できるだけ早く」と述べるにとどめた。府幹部によると、吉村知事は10月中の稼働を目指して準備するよう指示しているという。