秋が深まり、日没も次第に早くなってきました。この時期、日没後しばらくは夏の星座が西空に残っていますが、夜半にかけて中心となるのは秋の星座です。そして夜中から明け方にかけては冬の星座が天高く昇ります。「星空と宇宙」第4回は、秋から初冬に楽しめる天体を紹介したいと思います。【手塚耕一郎】
秋の星空と聞いて、どのような星座を思いつくでしょうか?
秋は夏や冬に比べて明るい星が少なく、少し地味に感じるかもしれません。カシオペヤ座やペガスス座が見つけやすい星座として知られる一方で、星占いで有名な黄道12星座のやぎ座、みずがめ座、魚座は実はあまり目立ちません。
カシオペヤ座は北の空に見えるWの形が有名ですが、空高く昇ると上下逆のMの字になって見られます。ペガスス座はアンドロメダ座とつながっている大きな星座で、2~3等星がほぼ長方形に並んだ「ペガススの四辺形」が夜空で大きな目印になります。
アンドロメダ座の「アンドロメダ銀河」(M31)は、秋の星空で最も有名な天体です。アンドロメダ大星雲とも呼ばれ、明るさは4・4等。空の暗い場所なら肉眼でも星とは違う少しぼんやりした姿で眺めることができます。空の暗い場所で双眼鏡で眺めると、写真で見るような、楕円(だえん)の銀河がはっきりとわかります。アンドロメダ銀河は数千億の星が集まった渦巻き銀河で、天の川銀河より大きく直径は20万光年以上。見かけのサイズも月の直径の5倍以上あります。1924年、米天文学者のエドウィン・ハッブルは、この天体が天の川銀河の外側、はるか遠くにある別の銀河だということを発見しました。約250万光年の距離にあり、人間が肉眼で眺めることができる最も遠い天体の一つです。アンドロメダ銀河や天の川銀河の周辺には、大・小マゼラン雲など数十の銀河が集まった局所銀河群が形成されています。この銀河群の中で、アンドロメダ銀河と天の川銀河は特に大きな銀河ですが、これから40億年以上先、この二つの銀河が衝突するという予測が、欧米の研究機関から出されています。
ペルセウス座にある「二重星団」は、それぞれ300個ほどの星々が集まった4・4等と4・7等の散開星団が、寄り添うように並びます。散開星団はまだ若い数十から数百個の星の集まりで、この二重星団は生まれてから1400万年ほどです。ちなみに太陽は生まれて約46億年なので、比べるといかに若いか分かると思います。二つとも地球からの距離は約7500光年、肉眼でも存在は分かりますが、双眼鏡だと二つの星団がはっきりと分かり、より美しい姿で眺めることができます。
秋の星座と入れ替わるように明け方に星空の主役になるのは冬の星座です。おうし座で輝く「すばる」は、自動車メーカーの名前や歌の題材にもなっていて、眺めたことがある人は多いと思います。漢字では「昴」、英語名は「プレアデス星団」(M45)で、他にも六連星(むつらぼし)、一升星、羽子板星などさまざまな呼び名があります。肉眼では3~4等星が6~7個集まっているのがわかる程度ですが、双眼鏡で眺めると数十の青白い星が密集して輝きます。写真に撮ると、肉眼ではわかりにくい青いガスが星々の周りで光っている様子がはっきりと写ります。すばるも二重星団と同じ散開星団で、誕生して数千万年の若い星の集まりです。青白いガスは宇宙を漂う星間ガスで、すばるの星々の光を反射して見えています。
星雲や星団には上記でも書いたM45やM31などMの記号と番号がついている天体が数多くあります。これは、フランスの天文学者、シャルル・メシエが、1700年代後半に発表した「メシエカタログ」に記載されている天体です。メシエがM1~M103まで発表後、M110まで追加されました。18世紀に作られているため、明るく見やすい天体が多いのが特徴ですが、それらしい天体が無いなどいくつか疑問符がついている番号もあります。ちなみに、ウルトラマンに登場する「M78星雲」は、オリオン座の散光星雲M78として実在していますが、近くにあるオリオン大星雲などに比べると地味な存在です。今回、冬の代表的な星座であるオリオン座の天体はあえて入れませんでした。次の機会に紹介したいと思います。
観望&撮影memo
今回紹介した三つの天体は、いずれも肉眼で観察でき、双眼鏡があればより楽しむことができます。市街地のような明るい場所での観察は難しいので、夜空の暗い郊外などで観察してください。写真で撮る場合は天体を追尾できる「赤道儀」が必要になります。紹介したアップの写真はいずれも望遠鏡で、赤道儀による自動追尾で撮影しています。星の動きに合わせて架台を動かす赤道儀は、精度を求めると大きさや重量が増して扱いが大変です。ただ最近は軽量で高精度のポータブル赤道儀や、軽くてコンパクトな望遠レンズも増えていて、組み合わせて使えば、手軽に暗い天体を写すことも可能になってきています。
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