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ひまわりは漢字で「向日葵」と書くように、太陽の方角を向いて咲くことがよく知られています。でも実際には、太陽に向かって咲くのは一部のひまわりだけで、多くのひまわりは東の方角を向いて咲きます。これは一体なぜでしょうか? 最近、明らかにされたその合理的な理由を説明します。

↑東を向くとハチが来る

 

太陽は一日の中で時間帯によって位置を変え、その動きと合わせるように、ひまわりは花の向きを変えます。ところが、花が成熟し茎が硬くなってくると、太陽の方角に合わせて花の向きを変える動きが減り、やがて東の方角しか向かなくなります。

 

7月下旬、米国・カリフォルニア大学デービス校の植物生物学の研究チームは、ひまわりのこの性質について論文を発表しました。この研究チームは長年ひまわりを研究しており、以前に「ひまわりが太陽の方角に合わせて動くのは、体内時計でコントロールされているから」という説を発表しています。

 

そんな研究チームの一員があるとき、ひまわりの鉢植えの向きを変えたところ、東の方角を向いたひまわりには、西を向いたものと比べて、特に朝の時間帯により多くのハチが集まっていることに気づいたのです。

 

東を向いて子孫を残す

そこで、東向きのひまわりの秘密を探ってみると、東向きのひまわりのほうが大きくて重い種を作る傾向があり、早朝から花粉を放出していることがわかりました。その時間はハチがひまわりに集まる時間帯と合致しています。この性質は花の温度の影響を受けているようで、西向きのひまわりでも花の部分をヒーターで温めると、東向きのひまわりと同じような結果が見られたそうです。

 

さらに、この研究チームは「種は作れるけど、花粉は作れない」という実験用ひまわりを作りました。それを東向きと西向きのひまわりの近くに置き、この実験用ひまわりが、どちらのひまわりの花粉をより多く授粉するのかをジェノタイピング(遺伝子型判定)を使って観察。その結果、西向きのひまわりより、東向きのひまわりの花粉がより多く授粉されていたことが判明したのです。

 

これらの実験結果から導かれるのは、ひまわりは東を向いて咲くことで、ハチが集まる時間帯により多くの花粉を放出し、ハチが花粉を媒介しやすくなっているということ。つまり、ひまわりが東向きに咲くのは子孫をたくさん残すことができるから、と結論づけられるのです。

 

元気いっぱいに花を咲かせるひまわりにとっても、子孫を残せるかどうかは重要な問題。少しでも多くの花粉がハチによって運ばれて授粉するように、ひまわりは進化したのでしょう。ひまわりを見かけたときは、どの方角を向いているかチェックしてみると面白いかもしれませんね。

 

【出典】Creux, N.M., Brown, E.A., Garner, A.G., Saeed, S., Scher, C.L., Holalu, S.V., Yang, D., Maloof, J.N., Blackman, B.K. and Harmer, S.L. (2021), Flower orientation influences floral temperature, pollinator visits and plant fitness. New Phytol. https://doi.org/10.1111/nph.17627