公園や駅のホーム、都会の広場に行けば、ハトには簡単に出会えます。
他の鳥に比べて人に対する警戒心が薄いため、目と鼻の先まで近づくことも可能です。
そのおかげもあって、ハトの鳴き声を聞くチャンスは多いのですが、さすがに会話の内容までは分かりません。
それでも、ハトたちが何を話しているのか、知りたいと思いませんか?
アメリカの博物学者で、サイエンスライターのローズマリー・モスコ(Rosemary Mosco)氏は、このほど出版された新刊『A Pocket Guide to Pigeon Watching: Getting to Know the World’s Most Misunderstood Bird』(ハトウォッチングのためのポケットガイド:世界一誤解されている鳥を知ってもらうために)で、その秘密を紹介しました。
日頃聞いている鳴き声にはどんな意味があるのか、以下で見ていきましょう。
クルックーは「自己アピール」
最もオーソドックスな鳴き声は、「クー」とか「クルックー」といった、喉の奥深くから鳴る振動音でしょう。
モスコ氏によると、これは「自分の存在を周りにアピールするため」のもの。
鳴き声を上げるとき、多くの鳥はくちばしを大きく開けますが、ハトは口を閉じたままです。
ハトが鳴くときは、空気がシュリンクス(気管の根元にある発声器官)を通過して、膨らんだ胸部の中に溜まっていきます。
特にオスがこの鳴き声を多用し、交尾の準備が整うと、踊りのような動きをしながら、クルックーと鳴きます。
鳴いている間、オスはお辞儀をしたり、尻尾を広げたりして、メスの周りをウロウロします。
しかし、オスはメスに言い寄ることだけに興味があるわけではありません。
近くにいる他のオスを威嚇するときにも使用します。
ですから、ハトに近づいたときにクルックーと鳴かれたら、誘われているか、「アッチ行け」と言われているかのどちらかでしょう。
「メスへの宣伝」のウー、オー
こちらはあまり聞く機会もないと思いますが、「ウー」とか「オー」という低い鳴き声があります。
人がうめいているようにも聞こえるので、少し不気味です。
ベランダに巣を作られた経験があるなら、この鳴き声を聞いたことがあるかもしれません。
その主な意味は、先ほどと似ていますが、「メスへの宣伝」です。
オスは交際の準備ができたら、巣を作る場所の近くに陣取って、メスがやってくるまで「ウー、オー」と鳴き続けます。
また、パートナーができた後も、オスメスともにこの鳴き声を使います。
それによって互いの絆が深まったり、オスが巣作りのために小枝を集めに行くようになるのです。
鳴き声に加えて、頭を振ったり、翼を動かしたりして、効果を高めることもあります。
ピーピーは「食べ物ちょうだい!」
こちらはヒナが用いるフードコールの一種で、他の鳥でも共通して見られます。
音としては、口笛のようにハイピッチな「ピーピー」という高い音です。
モスコ氏によると、これは「僕は赤ちゃんで、お腹が空いているんだよ。エサをちょうだい!」と言っているとのこと。
ハトのヒナは、生後7〜8週間までは大人のような深い声で鳴くことができません。
4〜6週間後に巣立った後も、しばらくは口笛を吹いて食べ物を要求したり、近くのハトに「自分は脅威ではない」ことを伝えたりします。
この声が聞こえたら、近くに巣があることは間違いないでしょう。
翼のバタバタは「警戒せよ!」
こちらは鳴き声ではありませんが、「ウィング・クラップ」といって、翼を拍手のように叩き合わせて出す音です。
大抵は飛び立つときに出しており、周囲の仲間に「警戒せよ!」と知らせる意味合いがあります。
公園にいるハトの群れに向かって走ったら、いっせいにバッと飛び立つ様子を見たことがあるでしょう。
あれは脅威に気づいたハトが最初に飛んでウィング・クラップをし、それを聞いたハトが連鎖するように飛んで行くのです。
ハトは羽ばたきの上昇時に、翼端の筋肉と硬い羽毛を叩き合わせています。
イメージとしては、私たちが左右にまっすぐ広げた両手を頭上に上げて、手の甲を叩き合わせるようなものでしょう。
また、これと別に、ハトが飛び立つときに「ピピピ!」と鳴る甲高い音もあります。
これは「ウィング・ホイッスル」といって、羽の空洞に風が通ることで、笛のような音が鳴るのです。
下の動画で、その様子が見れます。
意味合いは、ウィング・クラップとほとんど同じで、仲間に危険を知らせる目的があります。
これらの音を近くで出されたら、ハトに恐がられている証拠でしょう。
他にもハトには、色んな意味合いを持つ鳴き声や振る舞いがあります。
今度、街中でハトを見かけたら鳴き声に注意して、何を欲しているか、どんな状態かを観察してみるといいかもしれません。