こじつけの逮捕、女性3人が連座した「浪曼事件」 絢爛たる娘時代一変

北林透馬宅での令女純情連盟の集まり。前列右から3番目が篠原あや、前列右端が透馬の妻で劇作家の北林余志子、中央後ろに立つ男性が透馬=1936年2月  太平洋戦争開戦前夜の1941年11月、横浜の文芸雑誌『浪曼(ろまん)』の同人たちが治安維持法違反容疑で特高警察に大量検挙された。「浪曼事件」と呼ばれ、女性3人も連座した。『浪曼』を率いた作家・望月義の妻、たか子(旧姓・沢野)、新劇俳優で銀行に勤めていた小笠原静子、詩人の篠原あや(1917~2016)である。(女性史研究者=江刺昭子)
 当事者たちの証言や記録が少なく、事件の詳細は不明だが、篠原あやは戦後、1966年から67年ま…

思想弾圧の先駆け「浪曼事件」が奪ったもの コロナ禍の今に通じる文化統制

望月たか子(旧姓・沢野)=1988年撮影  コロナ禍で飲食店の自粛が問題になる一方、文化活動の停滞はあまり騒がれない。大きなイベントだけでなく、数十人規模の読書会やグループ活動が次々に中止になっている。わたしが関わっているささやかな集まりや勉強会だけでも、かなりの数にのぼる。(女性史研究者=江刺昭子)
 公的な施設が閉鎖されたり、人数や使用時間が厳しく制限されたりしている上に、住民が互いに監視しあっての自粛ムードも強い。国や自治体による文化統制のようでもある。
 形は違うが、戦時下の思想統制とそのための弾圧を想起する。最大の弾圧は1942年に始まる横浜事件であろう。警…