はてなのシステムプラットフォーム部で SRE をしている id:nabeop です。はてなでは定期的に、普段の業務を離れて新しいサービスのプロトタイプを作ったり、集中して新技術を検証したりする試みとして、開発合宿を開催しています。
はてな20周年でデラックスに開催!
2021年6月の開発合宿では、はてな20周年の社内イベントという形で規模を拡大し、次の2つをテーマに掲げたデラックス (DX) 版として開催しました。
- モノづくりを楽しむ体験を通じて、他職種・他チーム間の交流を深める
- これからのはてなを面白くするアイディア (サービス、機能、事業など) の種を募る
テーマは「交流」で職種や業務を超える
オフィスランチやさまざまな社内イベントで職種や業務を超えた交流が活発だったはてなですが、かつてのようなオフィスならではの偶発的なコミュニケーションも在宅勤務によって減少しています。前回の開発合宿に関するアンケートで、エンジニア以外の職種のスタッフとも一緒に参加したいという声が多かったことも受けて、今回の開発合宿 DX では「交流」を大きな目的としたことが特徴です。
結果としてエンジニアのほか、デザイナー、企画、ディレクター、カスタマーサポート、営業、事業開発、編集などさまざま職種から計64名、16チームが参加しました。この合宿を通じて交流しながら、さまざまなサービスのプロトタイプなどが作られました。
チームビルディングから結果発表まで
今回は 6/16 から 6/18 の3日間を合宿当日とする以下のスケジュールで開催しました。
日付 | 実施内容 |
---|---|
5/13 | 企画プレゼンとチームビルディング |
6/16 | 合宿1日目 開会の挨拶のあとは、ひたすら企画を考えて実装 |
6/17 | 合宿2日目 |
6/18 | 合宿3日目 夕方から成果発表会 |
まず開催1ヶ月前の 5/13 に、参加したい人があらかじめ集まってチームビルディングを実施しました。合宿中に取り組みたい企画を持っている人が、合宿用の Scrapbox に概要を書いておき、チームビルディング会でプレゼンを行い、共感した人同士でチームを作る形式としました。
合宿当日としては3日間を確保していますが、実際に手を動かせる期間は2日弱しかありませんので、短い時間で効率的に開発したりゴールを設定したりする必要があります。前もってある程度を作り込んできたチームもありました。
最終日には、開発に参加したメンバーだけでなく、全スタッフが参加できる成果発表会も実施しました。各チームの成果プレゼンを聞いたスタッフによる投票で、順位が決められました1。
合宿中の交流を促進する新しい取り組み
昨今の情勢により実際に集まって合宿することは難しいため、リモートでの開催となりました。これまでもリモートによる開発合宿は何回か開催しており、そこで得られた知見はこのブログでも2020年11月に掲載した次の記事にまとめています。
ここで説明しているように、これまで Google Meets や Discord といったビデオ通話をつなぎっぱなしにすることで、チーム内での活発な同期的コミュニケーションをリモートでも促進してきました。
しかし、チーム内でこそ合宿感が出るものの、どうしてもコミュニケーションがチームごとに完結してしまい、多くのメンバーが参加する合宿ならではのコミュニケーションが生まれにくいという課題がありました。
そこで「交流」をテーマとしている今回は、さらに交流を促進させる工夫をいくつか用意しました。
チームごとに oVice 上に集合して合宿感を創出
まず、なるべくいろいろな人の様子が分かるように、バーチャル空間で距離感を保てる oVice 上に会場を作って、各チームが1つのフロアに固まってコミュニケーションを取るようにしました。
oVice ではフロアを超えて他チームにふらっと遊びに行けるため、物理的に集合することと同様の体験とまではいかなくても、気分転換に他チームの様子を見に行ってみるなど、より合宿感が出たように思えました。
また oVice 上でそのあたりにいる人を捕まえてユーザインタビューするなど、チームを超えたコミュニケーションも発生していたようです。僕は後述する「社内報チーム」としてウロウロし、議論の様子を後ろから聞いてはインタビューに突撃していました。
さらには oVice 上にプロトタイプへの導線を出現させて、アピールするチームもありました。
社内報で雰囲気を全社に共有
交流促進のもう1つの工夫として、スタッフのみが閲覧可能な「社内報」を用意し、各チームの様子をレポートするエントリを午前と午後それぞれで作成しました。
更新すると、社内のほぼ全てのスタッフが入っているチャットのチャンネルに流したため、仕事の合間に合宿の様子が分かって良かったというコメントもありました。業務などの都合で参加できなかった人にも雰囲気が伝わる取り組みとなりました。
この社内報チームには、僕も更新担当として参加しました。3日間で21エントリを公開し、開発合宿の盛り上げや会話のきっかけに一役買えたかなと思っています。
ちなみに次にスクリーンショットは id:onishi によるレポートの一部です。このように oVice では賑わっていながら、リアル (オフィス) では合宿が開催されているとは思えない静けさでした。
どんな技術で合宿の開発に取り組んだのか
この合宿でさまざまなプロトタイプが作成されましたが、技術的な傾向としては、大きく「普段使っている技術を深掘り」するチームと「普段は使っていない技術を試してみる」チームに分かれました。
特に後者では、チームビルディング時にはまだ開催されていなかった WWDC21 を見越して「発表された何かを使って何かを作ります!」というアグレッシブな企画を立てたチームもありました。
他にも「普段は AWS を使っているけど、この機会に Google Cloud の Cloud Run の使用感を確かめてみる」など、気になっている技術を使ってみることで、普段の業務に活かせるように考えたチームもありました。
新しい交流スタイルが見えてきた
コロナ禍でリモートワーク主体になり、普段の仕事では直接の関わりがないメンバーと交流する機会も少なくなっていました。この合宿では、チームのみならず職種を超えて1つの企画やプロダクトを作ることで、以前のような交流を持つことができました。
開催後に運営チームで取ったアンケートでも、冒頭に掲げた2つのテーマの双方で満足度が非常に高い結果となりました。
さらに開発合宿の企画として、社内の交流を促進する社内ツールを開発するチームもあり、リモートワーク環境での新しい交流スタイルも見えてきたように思えます。
サービスと技術の成果と課題も見えてきた
開発合宿の成果の中には、まさに「これからのはてなを面白くするアイディア」がたくさんありました。いくつかは形を変えて世に出るかもしれないと思うと、とても楽しみです。
また、僕が所属しているシステムプラットフォーム部はサービスで使用する基盤部分の整備もしているので、今回の開発合宿で出てきた今後のサービスで使われるであろう技術やサービスの課題には、とても興味深いものがありました。特に普段は使っていない技術やサービスを積極的に採用したプロトタイプの作成で、今後の課題などが見えてきたようにも思えます。
次の20年に挑戦する仲間を募集
今回の開発合宿は、サービス開始から20周年という節目の年にあらためて全社イベントとしてモノづくりに取り組む良い機会になりました。
はてなでは、このように職種を超えたコラボレーションで既存サービスの改善や新サービスの開発に挑戦する仲間を募集しています。どんな雰囲気なのか知りたい方は、ぜひカジュアル面談を気軽に希望してください。興味ある方の応募を待っています!
-
はてなでは同様の投票システムで、毎月の成果を「ほたて(ホットな、タスクを、手がけた)」賞として祝うイベントを実施しています。↩