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「高齢者の孤独」「若者の孤独」など年代や環境によって様々な孤独が世界の社会問題になる中、コロナ禍の”非接触”な人間関係によってさらに孤独感を強めていった人も多いかもしれない。世界はどう孤独と向き合っているのか、各国の取り組みを取材した。

【画像】AI技術で通行人を24時間監視 橋の欄干に手を掛けるとアラームがなる仕組みはこちら

AI活用で自殺を未然に防ぐ:韓国

過酷な競争社会で知られる韓国では、若者の孤独が深刻化している。ソウル中心部を流れる漢江では、橋から飛び降り自殺を図る人が2021年は9月までに486人と2020年より大幅に増えている。そこでソウル市は自殺を未然に防ごうと、新たに『AI』の活用を始めた。

橋の通行人を24時間監視し、あらかじめAIに自殺の危険がある行動パターンを記憶させる。不自然に歩き回ったり、欄干に手を掛けたりするとアラームが鳴り、速やかな救助につなげる仕組みだ。

韓国はOECD加盟国の中で自殺率が最も高く、特に10代から30代で上昇している。若年層に広がる閉塞感をいかに解消するか…抜本的な解決策は見えないままだ。

世界初の孤独担当大臣を任命した英国

定年退職などで社会とのつながりを失い孤独を感じている人たちが、日曜大工などの作業を通じて交流する「Men in Sheds」(男たちの小屋)。廃材などを使って様々なものを作り、地域の公園や近隣の小学校などへ提供している。2018年に世界初の孤独担当大臣を設け、孤独対策に取り組んできたイギリスでは、国内におよそ600もの「Men in Sheds」が設置されている。ここには街の人たちが集まり思い思いにDIYを楽しむことが出来るのだ。
Men in Sheds でDIYを楽しむ男性:「ここにいる多くの人は妻に先立たれ、一人暮らしです。でも、ここに来れば人に会える」
誰もが感じる人とつながりたいという思いに応える場所をどう作っていくのか、日本にとっても大きな課題だ。

わずか1坪のコーヒー店で孤独を解消:タイ

急速に高齢化が進むタイで、孤独な女性が始めたコーヒー店が大人気となり注目を集めている。現在70歳でバンコクに住むピムさん。定年退職から日が経つにつれ寂しさを感じ、塞ぎ込みがちな日々を過ごしていた。しかし、息子の勧めで、わずか1坪ほどの場所で大好きなコーヒーの店を始めると、こだわりの味が若者を中心に評判に。今では支店に加えて、各地のフェスティバルにも招かれる人気ぶりとなった。
ピムさん:「とっても楽しい 忙しすぎて幸せなのか苦しいのか分からないくらい」
ピムさんは、高齢者向けの焙煎教室を開くなど、自らの経験を元に高齢者の孤独解消にも取り組んでいる。

ハンディのある人たちが働きやすいカフェ:上海

壁の穴からぬいぐるみのクマの手が商品を渡すことで人気の「クマの手カフェ」。今、その進化が話題になっている。このアイデアは生まれつき身体にハンディのある人たちが働きやすいようにと、2020年の1号店オープンの際に取り入れられた。これまでの店は中の様子が外から見えないようになっていたが、12月にできた店は店員が客と直接触れ合あう接客がメインだ。会話ができるかなどハンディの有無は帽子の耳の色で見分ける仕組みになっている。
手話で伝える女性店員:「お客さんが親しく接してくれたり、簡単な手話を覚えたりしてくれてうれしい。私はこの仕事が大好きです」
孤独になりがちともいわれるハンディある人たちにとって、このカフェは活力になっている。

スウェーデン国王から贈られた石の瞑想室:NY

国連本部に観光で訪れた人も必ず通るロビーのすぐそばに、神秘的な場所がある。『瞑想室』と呼ばれるこの部屋は、思想・信条や宗教にかかわらず、自らの内面を見つめることができるように静けさが保たれている。シンプルな室内でひときわ目を引くのが大きな直方体のブロック。スウェーデン国王から贈られたこのブロックは重さ6トンもある鉄鉱石でできてる。記者も手をふれてみたが、なぜか自然と心が落ち着くような気がした。
熱い議論が交わされる国連の場でもここに来れば、孤独にひたることが出来る。新型コロナウイルスの収束も見えない世界で、改めて自らと向き合う時間の大切さを感じさせる場所となっている。

「世界で最も孤独な仕事」アメリカ大統領

「世界で最も孤独な仕事」と言われるアメリカ大統領。加速するインフレとモノ不足によって高まった国民の不満が、大統領を直撃している。
バイデン大統領「(インフレは)多くの人々が考えているより急速に変化するだろう」)
バイデン氏はインフレが「峠を超えた」と強調するが、見通しは不透明なまま。ハリス副大統領との不仲も報じられ足元も瓦解寸前なのに加え、2022年の中間選挙を前に与党議員の「バイデン離れ」も始まっていて、孤独は深まるばかりだ。
自らの不人気をテレビ番組で聞かれると「もう諦めた」と自虐のジョークで返したバイデン氏。孤立無援の戦いが続く。

世界で一番孤独な宇宙飛行士:ロシア

日本の民間人として初めてISS=国際宇宙ステーションに滞在しているZOZOの創業者・|前澤友作さんが宇宙生活での”気づき”を語りました。
前澤氏「冷蔵庫がないんですよ。冷たい水が飲めないのが意外とストレスなんだな、と」
宇宙飛行士は「世界で一番孤独」とも言われますが、1986年に地球に最も近づいたハレー彗星(すいせい)をきっかけに宇宙を夢見た前澤さんは元気いっぱい。無重力空間を全力で楽しんでいます。前澤さんの宇宙旅行をめぐりネット上で「金持ちの道楽論争」が起きていることについては、「ホントにごくごく一部の人の話」と一蹴。今後は宇宙での新婚旅行や記念撮影などに備え、宇宙酔いなどの症状改善に協力したいということです。

マラソンランナーの孤独:ハワイ

ハワイのホノルルマラソンが2年ぶりに復活し、まだ薄暗いワイキキビーチの前をランナーたちが走り抜けていく。新型コロナ前は、ランナーの半数近いおよそ1万5000人が日本からの参加者だったが、今回はおよそ200人と激減した。孤独な競技のマラソンだが、この大会ではハワイの絶景と地元の人たちの応援がランナーを後押しし、コロナ禍を乗り越えようという一体感に包まれた。
日本から参加したランナー「隔離期間が延びたことでどうしようかなって不安もあったんですけど、一度決めたことはやり切りたいなと思って挑戦しました」
大会の主催者は「ハワイは困難を乗り越え確実に前に進んでいる」と話し、50回目の2022年には日本からのランナーが戻ることを待ち望んでいる。

会社員の4割が心理的苦痛を感じるテレワーク:フランス

コロナ禍で広がったテレワーク、フランスでも「孤独」感を感じる人が多く、対策が急がれている。テレワークをめぐっては、会社員の4割ほどが心理的に苦痛を感じているという調査結果もあり、中には心のバランスを崩してしまう人もいる。会社での対策を聞いてみると…
57歳男性 会社の管理職:「コロナ禍は誰にとっても難しい。何でも相談できるチャットを立ち上げましたよ」
60歳男性 コンサルタント会社の社長「孤独を感じないよう、テレワーク中にみんながパソコンのカメラを立ち上げる時間を設けました」
オミクロン株への警戒から、フランス政府が週に少なくとも2日か3日テレワークをするよう呼びかける中、孤独感を減らす様々な工夫がなされている。

「ノーコロナ政策」の孤独:北京

「ノーコロナ政策」を貫く中国に入国するには今も長い隔離措置を課せられる。数週間におよぶ孤独な生活は辛いが、様々なことを教えてくれる。隔離生活中も、メールや電話で外部と連絡は出来るが、部屋からは一歩も出られず、一般の人と接することは出来ない。1人きりの生活は、煩わしい人間関係から開放される一方、社会からも切り離されてしまうため、ストレスを感じる人も多い。SNSが発達したとはいえ、人と直接会い、面と向かって話す価値に改めて気づかされる。人権や自由が著しく制限される中国だが、長期の隔離政策によって図らずも、人として大事なものを実感させられる。

【取材:FNN海外特派員取材班】