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「まるで実写のようだ」という形容は、これまでゲーム史の中でたびたび使われてきました。特に、立体的な描画を特徴として打ち出した初代プレイステーション以降、現実に近いグラフィックを求めることが増え、その飽くなき追求が今日まで続いています。

初代PSを経てPS2が登場した際には、格段に進歩したビジュアルに驚きの声が上がりましたし、PS3やPS4とハードの進化を重ねるたびに、「映画みたい」と賞賛するコメントがその都度囁かれました。

ですが、「まるで~」や「~みたい」といった表現は、完全に同等ではなく、そこに近しくなったという意味合いもゼロではないでしょう。どこまでを「まるで」に含むかは人によりますが、同時代における映画作品や、それこそ現実世界と比べると、完全なる同格もしくは凌駕した、とまでは言い切れない点もあります。

ですが、PlayStation 5およびXbox Series X | S向けに配信が始まった『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』(以下、The Matrix Awakens)は、「まるで~」や「~みたい」といった言い回しを超えてもおかしくない、新たなグラフィック表現をゲームユーザーに提示。一足先に体験した方々に驚きと新たな興奮を与え、インターネット上の一部で話題になっています。

本作は純粋なゲーム作品ではなく、映画「マトリックス」シリーズをモチーフとしたアンリアルエンジン5の技術デモ。ですが、ただの映像といった受動的なものではなく、インタラクティブに楽しめるコンテンツであり、ゲームに近い表現で描かれた能動的な作品です。

そこで本記事では、この『The Matrix Awakens』のプレイ体験を通して、本作がどのようなコンテンツで、そこにいかなる驚きがあったのか、一ユーザーの視点から迫ってみました。本作未体験の方は、こちらで本質の一端をご覧ください。なお、今回はPS5によるプレイとなります。

■広大な描写と細部の両立に挑んだ『The Matrix Awakens』

この『The Matrix Awakens』では、「マトリックス」の世界をゲームプレイに近い感覚で楽しめます。ですが「マトリックス」を題材としたゲーム自体は、もう既に存在しています。しかし当時のゲーム作品は、映画の圧倒的なビジュアル表現と遜色ないレベルに達しているとまでは、残念ながら言えません。

その理由は、ハード側の限界など様々な理由がありますが、映像が作品の主体となる映画と異なり、ゲームの場合は“体験できる全て”を描写する必要があるという点も欠かせません。ビジュアルの点だけ見ても、ゲームは“プレイヤーキャラが移動できる場所”をすべて描かなければならず、特に3Dゲームだとそれが顕著です。

仮に開発費と開発期間が無限なら、いかなる箇所の細部も徹底的に作り上げることもできるでしょうが、現実的にはどちらも明確な制限があります。リソースは限られているので、必然的に重要な部分に多く割き、脇道や細部はどうしても優先度が下がります。

ですが、「神は細部に宿る」といった言い回しもある通り、細かい部分までこだわることで伝わるものもあります。特に、写実的な描写や現実感は、細部のちょっとした違和感だけでも失われてしまうので、そのバランス取りは常に難題です。

ゲームに限らない話ですが、モノ作りはいい意味で、手を抜ける部分は抜く必要があります。こだわり続けて完成しない作品は、決してユーザーフレンドリーとは言えません。しかし細部を疎かにすれば、写実的な描画による驚きと興奮は目減りが避けられません。まさしくジレンマと言えます。果たして、この『The Matrix Awakens』に、神は宿ったのでしょうか。

■起動直後から、デジタルとリアルが交錯

本作を立ち上げると、「マトリックス」の主要人物「トーマス・アンダーソン」から声をかけられるシーンから始まります。この時点で、室内の様子や描写もかなりリアルで驚かされますが、それはまだ些細な一歩に過ぎません。

トーマスは「現実とは何か」と語り続けますが、その直後、トーマス役の「キアヌ・リーブス」氏が登場。非常に酷似しているものの、よく見ると髭に違いがあるなど、同一ではないことが窺えます。

どちらも3DCGなのか、それともキアヌ氏は本人なのか。さきほどの「現実とは何か」を、視覚的に突きつけられます。

そして、同じモデルを元にした年齢差の描写や、トリニティー役を演じた「キャリー=アン・モス」氏と共に並ぶ多数の3Dキャラクターなど、デジタル世界における表現の可能性と幅広さを明確な形で示唆します。

この導入部は、「デジタルの世界が同じくらいリアルに感じられた時、現実とは何を意味するのでしょうか」といったメッセージで幕を閉じます。それは、「マトリックス」シリーズにも通じる投げかけであり、アンリアルエンジン5が可能とする新たな表現の世界でもあるのでしょう。

そして、デジタルとリアルの境目に迫る体験が、ここから始まりました。


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