日本で初めて卓球女子シングルスで銅メダルを手にした伊藤美誠選手。イット!では加藤綾子キャスターが7月29日行われた3位決定戦を取材した。
準決勝の敗戦からおよそ7時間後、3位決定戦に臨んだ伊藤選手。対戦するのはシンガポールのユー・モンユー選手(31)。準々決勝で石川佳純選手を破った31歳のベテランだ。
ピンチでは「笑み」を浮かべて…
第1ゲーム、ユー・モンユー選手の粘りに伊藤選手はミスを連発。6対11で奪われる。
しかし、第2ゲームを取り返すと、勢いに乗った伊藤選手は6連続ポイントで第3ゲームも連取。続く第4ゲームでも順調にポイントを重ね、3連続ポイントで6対1と大きくリード。
実況:バックで食らいついていく。折り返した!ノータッチで抜いた~!
実況:ストレート!バックハンド!ノータッチ~!
実況:決めました~!これもミドル!的確に突いていきます!
しかし、じわじわと追いすがるユー・モンユー選手。
この時ポイントを許すたびに伊藤選手が見せたのは、自ら口角を上げたきりっとした笑み。これはミスで劣勢になったときに伊藤選手がよく浮かべる表情で、意識的な笑みに見える。
8対7。ついに1点差まで迫られたところでタイムアウトをとり、コーチのもとへ。その会話を聞いてみると…
伊藤美誠選手:
(自分が)打っていっていいんだけど、打っていってるのがミスっているから、だったら変化させての方がいいかも…
自分が攻めているのはいいが、それでミスをしているので、球の変化が必要だと伊藤選手自ら冷静に分析していた。このタイムアウト直後…
__実況:サーブが決まりました~!
解説:この1本大きいですよ!__
変化の効いたサーブが決まり、この笑顔。
それまでのピンチの時に見せていた意識的な笑みとは明らかに違う笑顔が浮かんだ。このポイント以降、波に乗った伊藤選手は3ポイントを連取して一気に第4ゲームを取る。
「高速卓球」で歴史的偉業達成へ
そして迎えた第5ゲーム。
実況:これは速い!超高速スピード卓球!
10対6とリード。あと1ポイントで銅メダル。日本卓球女子シングルス史上初のメダル獲得までの重い、あと1点。
実況:歴史の扉はいつも重いものです。しかし伊藤にはその扉を開ける力があります。
そして…
実況:決まった~!伊藤美誠、銅メダル獲得!
会場の加藤綾子キャスター:
卓球女子シングルス史上初のメダルとなります。ものすごい静けさと緊迫感の中、見事勝ちました。最初は少しどうなるのかなと、ドキッとする場面もあったんですけれども、ゲームが進むにつれて、伊藤選手らしさが出てきたように思えます
「全体が良くなった状態で試合に臨めなかった」
日本女子初の快挙を達成した伊藤選手。
しかし、勝利の直後に笑顔はなく、コーチと話してようやく笑みを浮かべたものの、すぐに固い表情に。
直後のインタビューでは…
伊藤美誠選手:
実際すごく勝ったことはうれしいんですけど、正直悔しい気持ちの方が大きいかなと思います
ーー敗れた準決勝が尾を引いている?
伊藤美誠選手:
そうですね。実際今日はまず勝てたことが一番だと思うんですけど、その3位決定戦の時もすべてというかサーブレシーブはすごく良くなったと思います。ただやっぱりこう全体が良くなった状態で試合に臨めなかったのでそこはちょっと悔しい気持ちです
ーーチームメート、松崎コーチ、お母さんも、日本中が頑張りをたたえていると思いますが?
伊藤美誠選手:
負けた後もたくさん励ましてもらって、すごく皆さん明るく接してくれて、実際に気持ちを切り替えることは早くはできたんですけど、正直勝ってもちょっとやっぱり準決勝の何か悔しい気持ちと自分がうまくいかなかった気持ちがちょっと残っています。
ーーその涙は悔し涙でしょうか?
伊藤美誠選手:
はい、悔し涙です。
日本卓球女子初の偉業にもかかわらず、流した悔し涙は金メダルだけを目指してきた伊藤選手だからこそのものだった。
表彰式を終えた伊藤選手に加藤キャスターが話を聞いた。
加藤綾子キャスター:
今、銅メダルを首からかけてどんな気持ちですか?
伊藤美誠選手:
そうですね。少し時間が空いたのでちょっと落ち着いたんですけど、ただやっぱり悔しい気持ちは全然まだまだ残っているので、団体戦でしっかりリベンジを果たせるように一戦一戦頑張っていきたいと思います
加藤綾子キャスター:
女子シングルスでは史上初のことですよ。すごいことじゃないですか?
伊藤美誠選手:
すごいことなんでしょうけど私にはあんまり実感がまだなくて、ミックスダブルスの優勝も全然実感がまだないので、まだまだ金メダルを見たのはその日だけなので、しっかり団体戦が終わってからゆっくりじっくり見たいと思います
伊藤選手が中国勢にリベンジしての2つ目の金を目指す団体戦は明後日1日から始まる。
史上初のメダルも「通過点」
イット!のスタジオでは、コメンテーターの齋藤孝教授に話を聞いた。
加藤綾子キャスター:
取材をしていても伊藤選手はメダルの嬉しさよりも悔しさが圧倒的なんだなと感じたのですが、それは高みを目指す選手の強さだと感じましたし、もっともっと強くなっていくんだろうなと感じました。シングルス女子史上初のメダルということよりも、伊藤選手にとってはやっぱり金メダル。それから中国に勝つということが最大の目標だったんだろうなと思います
明治大学・齋藤孝教授:
中国選手は強いですから負けても仕方ないというのが今まではあった。伊藤選手はこれまでの実績から中国選手に負けないという強い気持ちから、悔しがる資格が伊藤選手にはあるんですよね
加藤綾子キャスター:
だから今回も通過点というか、史上初のメダルですけれど、ひとつの通過点であってこの先まだまだ続いていくんだなという期待感を感じさせてもらいました
榎並大二郎キャスター:
まだ20歳ですから、これだけの経歴をお持ちですけれどもですから中国にとっては本当に脅威な存在にどんどんなっていくんだろうなと思いますよね
加藤綾子キャスター:
中国勢にこれからきっとどんどん迫っていくそんな伊藤選手を期待しています。団体戦も頑張ってください!
(イット! 7月30日放送より)