日本のほとんどの学校では制服が採用されています。
制服のおかげで、「毎日の服装に悩まなくてよい」「個人差が出なくてよい」と考えている人は多いようです。
また中には、制服を着ることで帰属意識(特定の組織に属しているという意識)が高まったり、出席率が向上したりすると主張する人たちもいます。
ところが、アメリカ・オハイオ州立大学(OSU)人間生態学部に所属するアーヤ・アンサリ氏ら研究チームは、最新の研究で、制服は学生の行動や出席率になんの良い影響ももたらさない、と発表しました。
研究の詳細は11月5日付の学術誌『Early Childhood Research Quarterly』に掲載されています。
目次
- 「制服は正義」なのか?
- 制服が学生の行動や意識に良い影響を与えることはない
「制服は正義」なのか?
日本のほとんどの学生は、昔から制服の着用を求められてきました。
そして世界でも制服が徐々に一般的になってきています。
以前は私立高校での採用が多かったようですが、近年では、公立高校での採用も増えてきました。
「学生が制服を着るのは当たり前」という認識の人もいるようです。
しかし制服を着用するメリットについては、正確なことが知られていません。
それもそのはず、アンサリ氏によると、「過去20年を見ても、制服の価値を調べた研究はあまり行われていません」とのこと。
そのため研究チームは、制服のメリットについて新しく調査することにしました。
6000人以上の学生を対象に、制服と私服でどのような違いが生まれるか調べたのです。
制服が学生の行動や意識に良い影響を与えることはない
調査の結果、制服を着たからといって学生の行動や意識が向上するわけではない、と判明しました。
学生が抱える不安や攻撃性、また社交性は、制服の有無で違いが生じることはなかったのです。
また学生の出席率の差は、年間で1日未満でした。
この程度の違いであれば、制服は出席率とも関係がないと言えますね。
さらに制服の有無がいじめに影響を与えることもありませんでした。
そしてなぜか、制服ありの学校に通う生徒は、制服なしの学校に通う生徒に比べて、学校への帰属意識が低かったようです。
今回の研究では、この理由を明確に説明できません。
それでもアンサリ氏は、原因を次のように推測しています。
「制服は共同体としての意識を高めると考えられてきましたが、逆効果かもしれません。
ファッションは生徒にとって自己表現の1つであり、それは学校生活の重要な一部です。
生徒が制服によって個性を発揮できないと、自分の居場所を見つけづらくなるのかもしれません」
自分の個性を表現できる機会が少ないと、「自分はいてもいなくても同じだ」と考えてしまうのですね。
さて今回の研究から、制服は学生の行動や意識に何の良い影響も与えないと分かりました。
もちろん国や文化によって影響が異なる可能性はあります。
xそれでも「制服は正義」だとする固定観念は捨てるべきなのでしょう。
参考文献
School uniforms don’t improve child behavior, study finds
https://phys.org/news/2021-12-school-uniforms-dont-child-behavior.html
元論文
School uniforms and student behavior: is there a link?
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0885200621001162?via%3Dihub#!