消費者が自身の身体に取り入れる食材についてより高い意識を持つようになるにつれ、同時にペットに与えるものについても意識が向けられるようになっている。世界的なパンデミックによりペットと過ごす時間が増えたことがきっかけとなり、同業界の売上は2020年には1000億ドル(約11兆4000億円)を突破した。
オースティンを拠点とし、人間グレードの「生」ドッグフードを開発しているのがMaevだ。同社はローフード部門のシェアを拡大すべく、米国時間12月10日、Springdale Venturesが主導する資金調達ラウンドで900万ドル(約10億円)を調達したと発表した。同社はこれまでにもVMG Partners、Bolt、Willow Growthの支援を受けた非公開のラウンドを調達している。
同社のD2Cのペットケアブランドの構想は、2018年にCEOのKatie Spies(ケイティ・スピース)氏とChristine Busaba(クリスティン・ブサバ)氏によって発案された。3つの学位を持つスピース氏は、起業前、エンジニアとしてキャリアをスタートさせている。あるスタートアップ企業で製品開発マネージャーとして働いていたものの、やりたいことを模索するため辞職した。やがてドッグウォーカーとして犬の散歩の仕事をするようになった時のこと、同氏はドッグフード分野で何が必要とされているのかを実感することになる。
正式に会社を立ち上げたのは2019年だが、ブサバ氏とスピース氏が生ドッグフードの最初の製品を発売したのは2020年になってからだった。パンデミックがMaevの立ち上げに影響を与えたのだ。4人の従業員とともに、発売計画をずらしたり資金調達ラウンドを延期したりしなければならなかったという。結局はすべてがうまくいき、現在ではビタミンバーやボーンブロスのトッピングなどを製品パイプラインに追加している。
同社の食品は獣医栄養士チームとともに開発されており、健康な犬の栄養のギャップを解決するための臨床テストが行われている。冷凍食品には本物の肉、野菜、果物が使われており、解凍する必要がある他社製品とは異なりMaevの製品は冷凍庫から出してすぐに食べることができるとスピース氏は話している。
「当社は3つの製品からスタートしたのですが、ペットケアの未来を築いていきたいと考えています。この分野にはこれまでイノベーションがほとんど存在しませんでした。中にはすばらしい製品もありますが、ペットの飼い主たちは健康的な製品とは使いにくいものだと諦めていたのです。私たちは、より簡単で愛犬にとってすばらしい製品を作りたいと考えています」。
Maevは定期購入商品として製品を販売しており、コストは1食あたり平均2ドル(約230円)程度となっている。この1年で約2000人の顧客を獲得し、現在の従業員数は16名、募集職種は11枠だ。同社は収益と顧客基盤の両方を拡大し続けており、サプライチェーンへの投資とイノベーションの強化に取り組んでいる。
新しい資本を手に入れたスピース氏は、前月比20%の成長を25%に押し上げるべく「アクセルを踏み込む」計画だ。今後1年間はオムニチャネルで販売し、顧客の囲い込みに力を入れる。同社の92%の顧客が、1箱目を購入後も継続して購入しているという。これは他のペットフードブランドではあまり見られない統計で、業界平均は60%だとスピース氏は説明する。
同氏はこの新たな資本をオースティンへの本社移転、ブランド認知、マーケティングとサプライチェーンにわたる雇用に投資したいと考えている。顧客からの最大の要望の1つが鶏肉製品で、現在3カ月後の発売を目指して計画が進められている。この商品が現在の牛肉商品の売り上げを上回るだろうとスピース氏は見込んでいる。
米国には9500万頭の犬がいるとされており、同社には十分な成長余地があるとスピース氏は指摘する。同氏によると、ここ数年で新たなペットフード会社が112社も誕生しており、新規参入組が市場を揺さぶっている。Maevは、Alpha PawとJinxに続いて、この2カ月で新たにベンチャーの支援を得て資金を調達した企業となった。
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一方、既存のペットフード企業も健康志向の食品分野に手を伸ばしている。Freshpetは9月にベジタリアンドッグフード「Spring & Sprout」を発売し、Hill’s Pet Nutritionは2021年11月、Bond Pet Foodsと提携し、ペットフードとしての発酵による肉タンパク質の生産を発表した。
「市場の進化を見ることができて、本当におもしろいです。より多くの飼い主が標準的なペットフードの問題点について学び、愛犬に何を与えているのか懐疑的になっているのはすばらしいことです。しかし、最終的に愛犬のために何を選ぶかというのは、健康と長寿のためにとても重要なことです」。
細部へのこだわりとペットへの配慮こそが、同社が多くの投資家を惹きつけている理由である。
VMG PartnersのパートナーであるCarle Stenmark(カール・ステンマーク)氏は、声明で次のように伝えている。「VMGのポートフォリオに加えるブランドを検討する際、私たちは強いこだわりと規範を持っており、象徴的なブランドになるために必要な鍵を持つ企業に対しては、少額ずつかつ戦略的な投資を行うようにしています。私たちは、非常に熱心で意見を持った顧客基盤を持つMaevに惹かれ、また次世代のペットケアの基準を打ち立てているワールドクラスの創業者であるケイティとの連携に胸を躍らせています」。
Springdale Venturesの共同設立者でゼネラルパートナーのDan Graham(ダン・グラハム)氏は次のように付け加えている。「私たちの領域でいう革新とは、単に異なるフォーマットやパッケージの新製品を出すということではなく、消費者の生活に目を向け、彼らの期待を超え、彼らの愛する人やペットの日常生活を向上させる方法を見つけるということです。我々にとってペット分野への投資は初めてのことですが、同社の製品が健康的なペットフードというトレンドの最先端を行くすばらしい製品であることに加え、ペットとその飼い主の生活を変えるというケイティの情熱と決意に対して私たちは心から楽しみにしています」。
画像クレジット:Maev
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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)