アメリカ西部ネバダ州の地層から、約2億4600万年前に生息した新種魚竜の化石が発見されました。
見つかった頭蓋骨は長さ約1メートル90センチで、そこから全長約18メートル、体重50トン近くに達したと推定されています。
驚くべきは、種として巨大化するスピードです。
同等のサイズを誇る現代のクジラが数千万年かけて大きくなったのに対し、魚竜はわずか300万年でこのサイズに達したとのこと。
研究は、12月24日付けで学術誌『Science』に掲載されています。
目次
- 魚竜は恐竜の仲間ではない
魚竜は恐竜の仲間ではない
映画などの影響もあってか、魚竜はよく恐竜と混同されがちです。
しかし正確には、爬虫類の仲間であり、約2億5200万年前のペルム紀末に誕生しました。
この時期は、地球上で生物の大量絶滅が起こった時期であり、魚竜はその直後に、陸上から海に進出しています。
最初の魚竜は、イヌぐらいの大きさしかありませんでした。
ちなみに、恐竜が誕生したのは約2億3000万年前とされているので、それよりわずかに早く出現しています。
魚竜は、その流線型のボディやヒレ、大きな目から、今日のイルカやクジラのような見た目をしていました。
実際、魚竜とクジラ目には共通点があり、どちらも陸上の四肢動物が海に戻ったことで進化しています。
その後、魚竜は1億5000万年ほど繁栄しましたが、約9000万年前に恐竜より少し早く絶滅しました。
わずか300万年で急速に巨大化していた
今回、新種の化石は、約2億4600万年前の三畳紀に当たる地層から発見されました。
保存状態の良い頭蓋骨の他に、右腕や前脚、肩、背骨の一部も見つかっています。
これらの分析から、見た目は比較的細身で、長い鼻に尖った歯を持ち、かなりイルカに近かったようです。
全長は17メートル強で、当時の水中生物としては最大級だったと考えられます。
新種の学名は「キンボスポンディウス・ヤンゴルム(Cymbospondyus youngorum)」と命名されました。
また、新種の年齢や解剖学的特徴をほかの魚竜と比較した結果、進化の初期に急速な巨大化が起きていたことが分かりました。
クジラ目の系統図と比べたところ、クジラは5600万年の進化のうち4500万〜5000万年かけて巨大化したのに対し、魚竜は1億5000万年の進化のうち最初の300万年で現在のクジラとほぼ同じ体格になったことが判明しています。
つまり、魚竜は、ペルム紀末の大量絶滅後、かなり短期間で巨大化をなし遂げたということです。
研究のクレアモント・マッケナ大学(Claremont McKenna College・米)のラーズ・シュミッツ(Lars Schmitz)氏は、こう述べています。
「この化石は、生命がいかに高い回復力(resilient)を持ち、環境条件が整ってチャンスがあれば、いかに速く進化できるかを如実に証明しています。
地球全体が混乱するような大規模な絶滅イベントの後でも、生命は本当に速く多様化することができるのです」
研究チームは今後、食生活や海水温など、魚竜の巨大化に関与したと見られる変数について詳しく調べていく予定です。
参考文献
These ancient marine reptiles got very big, very fast
Earth’s First Giant: Newly Discovered Species of Ichthyosaur Was Behemoth of Dinosaurian Oceans
Earth’s First Giant: Newly Discovered Species of Ichthyosaur Was Behemoth of Dinosaurian Oceans
元論文
Early giant reveals faster evolution of large body size in ichthyosaurs than in cetaceans
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abf5787