日常を特別に…「家族写真」が人気
新型コロナウイルスの影響により、家族で遠くに出かけたり、帰省したりということが難しくなっている現在。
夏休みに入ったものの、毎日の“おうち時間”の過ごし方を模索している人も多いだろう。そんな中、ピクスタ株式会社が運営する家族・子供向け出張撮影サービス「fotowa」によると、「家族写真」の撮影件数がコロナ以前と比べ約20倍に増加しているというのだ。
「七五三」「お宮参り」「誕生日」「卒入園」といったいわゆる“ハレの日”に撮る子どもの記念写真を中心に利用されているというfotowa。
fotowaでは予約時にどんな目的(撮影ジャンル)の写真を撮りたいかを選択して申し込むフォームがあるが、2020年以降、七五三などの行事や家族イベントでの記念写真ではなく「家族写真」の申し込みが急増。
2019年には1~6月で22件だった「家族写真」の撮影件数が、同期比で2020年は188件、2021年には422件と、2年で約20倍にも需要が増えたという。
また、fotowaが実施した、小学生以下の子どもがいる親666人を対象とした調査(2021年6月24日〜6月28日、インターネットによるアンケート調査)によると、「コロナ禍において、子どもの思い出になる“家族イベント”が足りていると思うか」との質問に対し、「とても不足している/やや不足している」と答えた人の割合は77.1%。
他にも「子どもの成長や自分たち家族の様子を伝えるために、父母または義父母に家族写真を贈りたい」人が88.6%、「次に帰省できたときに父母と共に家族写真を撮りたい」人は84.7%と、家族写真への関心の高まりが分かったのだ。
この結果について、fotowaは「プロのフォトグラファーを自宅や近くの公園に招き撮影してもらう出張撮影が、コロナ禍で『家族のおでかけイベント』がしづらい今、日常をちょっと特別な日に変えられる『家族イベント』として受け入れられている」と分析している。
では、具体的にはどんな「家族写真」がコロナ禍の今、好まれているのだろうか。また、“アフターコロナ”の生活でも、この“家族写真ブーム”は続くのだろうか?
現在人気となっている「家族写真」と今後の写真ブームについて、fotowaにお話を聞いてみた。
「いつの間にこんなシーンを撮ったの?」という自然体の写真
――どんな「家族写真」が多く撮られている?
「自然体のもの」という表現が1番適切かと思います。fotowaをご利用くださるユーザーの8割以上は、未就学児(6歳以下)の小さなお子さまがいらっしゃるご家庭のママです。
__・公園で子どもと一緒にシャボン玉を吹いている
・子どもたちが駆け回っている
・親子で手をつないでお散歩している
・パパまたはママがお子さまを高い高いしている
・子どもがママに駆け寄ってきた瞬間 __
など、お子さまと戯れている日常の一コマを、まるで映画のワンシーンのように、雑誌の一コマのように美しく切り取ったものと思っていただければと思います。
中にはしっかりと記念写真のような「親子で並んでカメラ目線で笑顔の写真」ももちろん納めていますが、喜ばれているのは「いつの間にこんなシーンを撮影していたんだろう」という「瞬間を切り取った写真」です。
――「家族写真」の依頼が増えたことをどう受け止めている?
コロナ禍で「家族の絆」は改めて見直されていると感じています。いわゆる記念日等の「ハレの日」の撮影の中でも「家族写真も撮ってほしい」というオーダーは肌感覚でも増えており「家族写真を残したい」という需要の高まりを感じます。 背景には、複合的な要因があると感じています。
(1)家族の絆が見直されたこと
当たり前だと思っていた日常が当たり前ではなくなったこと、いつでもできると思っていたことができなくなったこと、会いたいと思った時に会えるわけではないということなどを、コロナ禍で痛感したことで、家族が今一緒にいられることを大切に思う気持ちが高まり、家族の今を残したいという気持ちが「家族写真」という需要となって現れているのではないかと思います。
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(2)帰省ができず、孫を祖父母に会わせられないということ __
アンケート調査の結果としても出たのですが、1年以上も帰省できておらず子ども(孫)を祖父母に会わせられないという現象が強制的に起きています。幼い子どもの成長は早く、1年で顔も身体も変化していきます(ちょっと見ないうちに大きくなってる!という現象ですね)。
孫を祖父母に会わせられない、成長をみせたい、様子を伝えたい、我が家は元気にやっているよということを伝えたいという思いから「せめて写真を撮って贈ろう」という需要につながっているのではと考えています。 実際にfotowaを利用してくださった方からは「祖父母に写真を贈るつもりです」という声がよく届きます。
(3)家族イベントの減少
旅行など家族の思い出となる「イベント」が作れないので、必然的に家族写真を残す機会は減りました。「楽しみにできる非日常」がないなら、非日常を作るしかなく、「そういえば家族写真がない」「祖父母にも見せたいし」という思いが重なり、非日常の家族イベントとして「せっかくだからプロのカメラマンを呼んで家族写真を撮る」ということを「イベント化」し、家族の思い出を記憶と記録に残そうとしているのではないかと考えています。
実際に、fotowaには納品された写真そのものだけでなく「撮影時間そのものが思い出になった」という声が届いており、プロのカメラマンに写真を撮ってもらうことそのものが、エンターテイメントのひとつとして受け入れられていると考えています。
fotowaによると、いま人気の「家族写真」は、日常の一コマを切り取った一瞬をとらえたもの。記念写真というと、やはり家族全員で並んでカメラに向かって笑顔…というイメージだが、そうではなく「こんな瞬間を撮っていたんだ」と思わず驚いてしまうような、自然体のファミリーをおさめたものが好評だという。
写真を「会えない祖父母に贈りたい」という需要
なお家族写真の需要が大きく増す中、「七五三」「お宮参り」といった定番の家族イベントについても撮影依頼は減っているわけではなく、2021年1月〜3月の撮影件数は、前年同期比で128.7%と伸びているそう。
特に、生後2〜3週間のうちに撮影する「ニューボーンフォト」と呼ばれる新生児の記念写真が需要を伸ばしており、2021年は1月〜5月の同期比で、コロナ以前の2019年から2.6倍、2020年からは1.8倍に伸びているとのことだ。
――定番の家族イベントの写真も増えているのは、どうして?
七五三はシーズンがこれからなのでなんとも言えませんが、2020年は初めてのコロナ禍での七五三ということで「3密を避ける」という需要から、従来は写真スタジオをご利用されていた方々が出張撮影を選ぶケースが多く、需要を伸ばしました。
一方で、非対面を徹底したい親御さんや、七五三の撮影を断念された方もいらっしゃいました。お宮参りも同様の傾向がありますが、今年はコロナ禍も2年目で「どこまでが大丈夫なラインなのか」がなんとなくわかってきたのか、実施されるご家庭は多いようです。
ただ、やはり遠方に住む祖父母をお宮参りに同行させることはためらわれるようで、家族3人でお宮参りを行い、写真をとって祖父母に贈ろうと思っているという声は多く聞かれております。
今後「写真を撮る」こと自体がエンターテインメントになる
これまでの定番ができないことから、伸びを見せているのが「家族写真を撮る」という新しいイベント。
以前よりも細かに子どもの成長や家族の歩みを記録できるというメリットがありそうだが、アフターコロナの生活が訪れ再び「直接会う」ことが増えたときに「家族写真を撮る習慣」はどうなっていくのだろうか。最後に聞いてみた。
――今後「家族写真を撮る」ことは根付いていくと思う?
今回のアンケート調査結果でも「次に帰省したら祖父母と一緒に家族写真をとりたい」という回答が8割を越えておりました。
今まで会えなかったからこそ、また「気軽にいつでも会える」ということが貴重なものだったと気づかされたのが「コロナ禍」だったと思います。このため、アフターコロナにおいても、家族写真の撮影機会は増加するものと考えています。
また、出張撮影を体験した方々は、撮影時間そのものが家族のエンターテインメントとしての「イベントにできる」と気づいた方も一定数いると考えております。自然体で我が家らしい写真の良さも相まって「あの楽しかった時間をもう一度」と考える方もいるだろうことも考えられるので、少なくとも誕生日などの機会の際に、これまで写真スタジオで撮影するという選択肢に新たに「出張撮影」という選択肢が生まれるのではと考えています。
fotowaによる家族・子ども向け出張撮影サービスは、指名料・出張料・撮影料・データ納品料などを含め、21,780円(平日料金・税込)から。
おうち時間が増え、「何をしていいかわからない…」という人も多いだろう。日々変わる感染状況と十分に相談しつつ、なんでもない日常の一瞬を切り取る「家族写真」を、一枚残してみるのもいいかもしれない。