池の水をぜんぶ抜く、というテレビ企画が日本では人気を博しましたが、英国では自然保護区の整備で貯水池の水を抜いたところ、飛んでもないものが発見されました。
それは魚竜の完全な状態の骨格で、英国で発見された同種の化石としては最大のものだったといいます。
ジュラ紀の海洋において、捕食者の頂点にいたとされるこの魚竜の化石は、10mもの大きさがあり、人が横に寝転んで並ぶとそのスケールの凄さがよくわかります。
目次
- 貯水池の水を抜いたら現れた巨大魚竜の化石
- ジュラ紀の海洋の覇者
貯水池の水を抜いたら現れた巨大魚竜の化石
2021年2月に、英国のラトランド・ウォーター自然保護区では、定期整備のために貯水池の排水が行われていました。
このとき、保護区の保全チームリーダーのジョー・デイビス(Joe Davis)氏は、泥の中からパイプのようなものが突き出ているのを発見したのです。
彼の同僚で、予備役(有事のみ招集される軍人)のポール・トレバー(Paul Trevor)氏は、以前ヘブリティーズ諸島で働いていたとき、クジラやイルカの骨格を見ていたため、これがそれとよく似ていることに気づきました。
これが何らかの生き物の背骨だと気づいた彼らは、これを伝っていき顎骨のようなものも発見しました。
それは非常に巨大で、普通の生き物でないことは明らかでした。
そこでジョーは、「恐竜の化石を見つけたみたいだ」と郡議会へ連絡したのです。
実際彼らが発見した巨大な骨は、恐竜ではありませんでした。
それは魚竜と呼ばれる種類のもので、約2億5000千万年前から9000万年前までの期間海に生息していた、巨大な海洋爬虫類です。
魚竜は1メートルから25メートル近くまで、さまざまなサイズがおり、一般的にイルカに似た体型をしていました。
21年の8月から、古生物学者の専門チームがこの骨の発掘を開始しました。
そして、それによりこの発見が予想以上に重大だったことが明らかになるのです。
発見された骨格は、ほぼ完全な状態を維持しており、全長は10メートルを超えていて、英国で発見されたこの種の中では、最大かつ完全な化石だったのです。
ラトランド・ウォーター自然保護区では以前にも小さい魚竜の化石が発見されたことはありました。
しかし、ここまで立派なものが見つかったことはありません。
人が並ぶとそのスケール感がよく伝わります。
この発見された巨大な魚竜は、生前どのような姿をしたものだったのでしょうか?
ジュラ紀の海洋の覇者
発掘を担当した研究者たちは、今回発見された化石が、ジュラ紀の海に生息していた魚竜「テムノドントサウルス(学名:Temnodontosaurus)」であると特定しました。
これは約2億年前から1億7500万年前に開けた海洋の深い海域にいたと考えられていて、遊泳速度は速く当時の捕食者の頂点だったと予想されています。
見た目はイルカににていますが、尾は魚と同様垂直にヒレが立っており、その高さは胴体と同等かそれ以上ある大きなものだったようです。
顎には円錐型の歯が並んでおり、非常に巨大な目が特徴でした。
ラトランド・ウォーター自然保護区は、海岸から50キロメートル近く離れていますが、2億年前は海面が高かったため、この辺りは海の底でした。
これはこの種の生物の発見としては、英国で最大となるため、発掘に参加した古生物学者たちはかなり興奮しています。
レスター大学の客員研究員であり英国南極観測局のマーク・エバンス博士は次のように述べます。
「最初の露出した標本を見た時点で、これがこの地域で知られている中でも最大の魚竜だということはわかりました。
しかし、それが尾の先端までほぼ完全に存在していると気付いたのは、発掘が完了した後です。
これは、国内および国際的に非常に重要な発見ですm周辺地域の人々にとってももっと重大なニュースでしょう」
マンチェスター大学に所属する古生物学者ディーン・ロマックス博士も「これは本当に前例のない発見であり、英国の古生物学の歴史の中で最も優れた発見の1つです」と驚きと喜びを述べています。
参考文献
Britain’s largest ‘Sea Dragon’ discovered in UK’s smallest county
https://www.lrwt.org.uk/seadragon
Ichthyosaur: Huge fossilised ‘sea dragon’ found in Rutland reservoir
https://www.bbc.com/news/science-environment-59915689