もっと詳しく

<「グリーンピース・イースト・アジア」によると、東アジアで夏の到来が最も早まった都市は札幌だという> 東アジアの57都市のうち8割以上で、20年前と比べて夏の到来が早まっており、中でも札幌市は、調査対象となった都市の中で最もこの傾向が顕著であることが、グリーンピース・イースト・アジアがこのほど発表した報告書で明らかになった。 東京では20年で約11日夏が早まった 報告書は、国際環境保護団体グリーンピースの東アジア支部「グリーンピース・イースト・アジア」がまとめたもの。日本(21都市)、中国(28都市)、韓国(8都市)の計57都市で、気温を分析した。2001~2020年の20年間とその前の20年間(1981~2000年)で、夏の到来(その年で気温が初めて30度以上に達した日)を比較したほか、1960年代以降で「気温が非常に高くなった日」の日数を比較した。 夏の到来については、57都市中48都市で早まっていることが分かった。日本では気象庁のデータを元に、21都市を分析。その年に気温が初めて30度に達した日について、2001~2020年の平均値と、その前の20年間の平均値で比較したところ、18都市で日付が早くなっていた。 とりわけ顕著だったのが札幌市で、2001~2020年は、その前の20年間と比べて夏の到来が23.1日も早まった。この日数は、今回調査した57都市の中で最大。日本国内では仙台市(19.1日)と北九州市(17.1日)が続いた。 東京では、1981~2000年の夏の到来は平均で6月20日だったのが、2001~2020年では6月9日となり、10.9日早まった。 逆に、日本国内で夏の到来が遅くなっていたのは、神戸市マイナス2.7日、熊本市マイナス0.2日、静岡市マイナス0.1日の3都市だった。 中国では28都市中24都市が夏の到来が早まった。20年前と比べて最も早くなったのは湖南省の省都である長沙市の21.9日で、調査した都市全体としては、札幌市に次いで2番目の早さだった。また、南寧はマイナス6.0日で、57都市中夏の到来が最も遅くなっていた。 韓国は8都市中6都市で夏の到来が早まっており、一番顕著だったのは韓国南西部に位置する光州(クァンジュ)で、12.7日だった。 57都市中、夏の到来が早まった日数が多い10都市のうち、6つが日本の都市だった。 <夏の到来が早まった10都市> 札幌市 23.1日 長沙市(中国) 21.9日 仙台市 19.1日 北九州市 17.1日 青島市(中国) 16.2日 千葉市 15.1日 浜松市 14.4日 広島市 13.9日 重慶市(中国) 13.8日 無錫市(中国) 13.7日 ===== 熱波や高温日も増加 1年のうち気温が非常に高くなった日数については、1960年代からの気温を分析した。調査対象となった57都市の中で、1960年代と比べて日数が倍以上に達するケースもあった。 日本の21都市では、気温が33度以上に達する日数が増えた場所は17都市に上り、特に1980年代以降の増加が目立った。 東京では、1年のうち気温が33度を超えた日数は、1961年以降10年間で3日弱というペースで増加。1960年代では年間平均で13日だったが、2011~2020年の平均ではこれが26.9日となり、倍以上になった。 さいたま市では、1980年代以降10年間で5.1日のペースで増加。札幌市は、1年のうちに気温が30度以上になった日数は、1960年代には年間5.4日だったが、2010~2020年では年間12.2日と倍以上増加した。 中国では、北京、上海、広州/深センといった大都市部で、35度以上の日が3日以上続く「熱波」の頻度や激しさが増しており、1990年代以降が特に顕著だ。北京での熱波の頻度は、2000年以降で年間平均1.45回となり、それ以前の40年間の年間平均(0.54回)と比べ3倍近くに増えた。 広州では、1961~2019年の間に熱波が合計98回発生。うち74%は1998年以降で、期間も長期化しているという。 韓国では、プサンで33度以上になった日数は、1961~2010年では年間10日以下だったが、2013年にはこれが13日となり、2018年には18日と急増した。一方ソウルでは、気温が33度を超えた日の年間平均日数は1960年代では6.7日だったが、2010年代では12.6日に達した。 今年1月に医学誌ランセットに発表された報告書「健康と気候変動のカウントダウン」では、世界の死者のうち、高い気温が死因となった65歳以上の人の割合は、2000年から2018年の間で約54%増加しており、特に日本、中国東部、インド北部、中央ヨーロッパで多かったとしている。 グリーンピース・イースト・アジアはこうした研究や今回の分析を受け、各国政府や企業が、気候変動に向けてより迅速かつ大胆な手を打つ必要があると訴えた。化石燃料業界への資金提供をやめ、風力や太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーに出来るだけ早く完全に切り替えるよう求めている。