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NASA 監察総監室 (OIG) が 10 日発表した次世代宇宙服開発に関する調査報告書の中で、現状では 2024 年中に人類を再び月へ送るアルテミス計画に間に合わないとの見方を示している(報告書: PDFThe Register の記事The Verge の記事Space.com の記事)。

月面の有人探査では宇宙服と母艦接続用のハードウェアを含む船外活動ユニット (EMU) が必要だが、現在 NASA が使用している EMU はスペースシャトル計画で 45 年前に開発されたものだ。そのため、NASA は過去 14 年間にわたって次世代宇宙服技術の開発を進めており、5 年前には国際宇宙ステーション (ISS) やアルテミス計画での使用を目指す xEMU プロジェクトを開始している。NASA は宇宙服開発のため 14 年間で 4 億 2 千万ドルを費やしているが、2024 年 11 月までに宇宙で使用可能な xEMU を 2 人分製造する計画は困難に直面しているという。

開発スケジュールは予算不足や COVID-19 の影響、技術的困難による遅れで既に余裕はない。実際に 2 人分の xEMU が利用可能となるのは早くても 2025 年 4 月となり、その時点で次世代宇宙服の開発費用は 10 億ドルを超えると予想される。宇宙服開発の遅れで 2024 年中に再び人類を月面に送る計画は実現不可能となるが、計画に影響を与える遅延は宇宙服だけではない。OIG は昨年 11 月、アルテミス計画で使用するロケットや宇宙船の開発遅れにより 2024 年中の有人月探査実現は非現実的との見方を示しており、有人月着陸システム (HLS) 契約をめぐる抗議によりさらなる遅れも見込まれる。

OIG では NASA に対し、(1) 開発リスクを低減するための適切なスケジュール調整、(2) ハードウェア納入のほか、ゲートウェイや HLS など依存関係のあるプログラムで必要なトレーニングを統合したマスタースケジュールの開発、(3) ISS とアルテミス計画で使用する宇宙服の調達に向けた導入戦略を選定する前に次世代宇宙服の技術的要件が固まっていることを確実にする (4) ISS とアルテミス計画両方のニーズに合った次世代宇宙服導入戦略の開発、を勧告している。

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