テレビ東京と電通は,高校生eスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2021」を2021年8月12日〜8月14日に開催した。1日目と2日目には「リーグ・オブ・レジェンド」部門の決勝大会が行われ,日本一が決定した。本稿では決勝戦と優勝校へのインタビューの様子をお届けしていこう。
「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2021」(以下,STAGE:0)は高校生を対象としたeスポーツ大会。2019年にスタートし,今年で3回目となる。
競技種目は例年通りの「クラッシュ・ロワイヤル」「フォートナイト」「リーグ・オブ・レジェンド(以下,LoL)」に「Fall Guys: Ultimate Knockout」を加えた4作品。今年6月からオンライン予選が行われ,これを勝ち抜いた高校の代表たちが決勝大会を争った。LoL部門は角川ドワンゴ学園 N高等学校(N高)が2018年,2019年と2連覇中。N高が今年も優勝して記録を伸ばすのか,そして,N高を止められるのはどこなのかといった部分も見所となった。
決勝大会の1日目は8校9チームで争われた。クラーク記念国際の「sesa 飯食べ隊」と「Yuki 飯食べ隊」の2チーム,そしてIDAの「IDAGaming」と,本命であるN高の「N1」がそれぞれ準決勝に進出している。
決勝大会2日目は準決勝戦と決勝戦が行われた。準決勝第1試合はクラーク記念国際の「Yuki 飯食べ隊」対「sesa 飯食べ隊」というカード。この同校対決は,昨年のLoL部門で2位だった「Yuki 飯食べ隊」が危なげなく試合を進めて勝利した。
続く準決勝第2試合は「IDAGaming」対「N1」。今回の大会で本命と目される「N1」は,24キルを取りつつも「IDAGaming」には3キルしか許さず,わずか20分13秒で試合を決めるという圧倒的な実力を見せつけつつ決勝戦に駒を進めた。
決勝戦はBO3(3ゲーム勝負)となり,N高の「N1」とクラーク記念国際の「Yuki 飯食べ隊」が戦うことに。メンバーの入れ替わりこそあるものの,昨年と同じ学校が激突する,まさに因縁の戦いだ。
決勝戦GAME1はハイレベルな戦いが繰り広げられた。「Yuki 飯食べ隊」がキル数で勝り,「N1」が倒したタワーの数で勝るという緊迫した展開。集団戦を「Yuki 飯食べ隊」が制するものの,「N1」のrre選手が1対1の戦いで圧倒的な強さを発揮してチームを支える。34分ごろにドラゴンを巡る乱戦から「N1」の面々が「Yuki 飯食べ隊」を次々と撃破し,そのまま本陣へ攻め込んで勝利を掴んだ。
続くGAME2は「Yuki 飯食べ隊」がGAME1で活躍した「N1」のrre選手とmomo tqt選手を徹底的にマークするが,両選手はこれをものともしない活躍を見せる辺りはさすがの貫禄だ。「Yuki 飯食べ隊」がmomo tqt選手を4人で追えばrre選手がすかさず割って入り,「Yuki 飯食べ隊」が怯んだところにmomo tqt選手が果敢に突っ込んでゴッドライク(7キル)達成……と連携も冴え渡る。優位に立った「N1」だが,一旦退いて盤石の体制で「Yuki 飯食べ隊」本陣へアタック。キル数で30対15,倒されたタワー0という堂々たる勝利を飾り,3連覇を成し遂げた。
試合終了後,「N1」の面々に合同インタビューを行うことができたので,その様子をお伝えして本稿の締めくくりとしたい。
――見事優勝されましたが,今の気持ちを教えてください。
Acciy選手:
優勝できて嬉しい気持ちはあるんですが,自分のプレイがあまり良くなかったので,これから直していきたいです。コーチや先生,親,大会運営の方々には感謝の気持ちで一杯です。
zyunia選手:
凄く嬉しいんですが,決勝戦でいろいろとミスをしたシーンもありました。準決勝や準々決勝では上手くプレイできていたので,緊張に弱いということも自覚しました。
Yunocy選手:
準々決勝で1回しか出られなかったので,自分の力不足を感じました。その出番でも上手くやれたとはいえないんですけれど,チームはちゃんと勝ってくれたので嬉しいです。
rre選手:
3連覇がかかっていたり,「絶対王者」と呼ばれていたりということでプレッシャーがありましたから,優勝できてホッとしました。
momo tqt選手:
優勝できて嬉しいのは確かですが,個人としては集団戦などもっといろいろとやれたこともあったんじゃないかとも思います。凄く満足しているというよりは,もっと練習しないとと思いました。試合前の緊張が凄かったのも,練習が足りなかったせいだと思いますし。
ないな選手:
今までの努力が目に見える形で結実して嬉しいです。みなさんのサポートがあっての優勝なので,今はお世話になった方々に優勝できたことを伝えられるのが嬉しいです。
――リーダーのないな選手にお聞きします。練習において,大変だったところはありますか?
ないな選手:
最初はコミュニケーションが上手く取れなくて,みんな自分のやりたいことを優先していたんですが,今はチームとしてしっかりまとまっていることを実感していますね。
――STAGE:0に参加して良かったことはありますか?
Acciy選手:
「LoL」は他の競技と変わらない位に競技性が高く,本当にスポーツ的だと感じられることが多いです。チーム力を求められるので,自分の気持ちを抑えたり,怒りたくないけれど怒らないといけないこともあります。そういう中でもケンカせずにチームでいられて団結できるところがスポーツ的で,やっていて気持ちがいいです。STAGE:0がこうした舞台を用意してくれたのが本当に嬉しいですね。
zyunia選手:
自分はチーム競技が苦手だったんですが,「LoL」でチームの一員になれて凄く成長できたと思います。部活として真剣に取り組む中で,個人のスキルも成長していい結果が出ていると感じていますね。
Yunocy選手:
試合会場では緊張もあって思うようにプレイできないこともあるんですが,こうした経験を早めに積めて良かったです。
rre選手:
沢山の方が見ているところでプレイでき,チームとして頑張っているところを見せられたのが嬉しいです。
momo tqt選手:
これまではeスポーツ大会に対して「家でやってるゲームと変わらないんじゃないの?」というイメージを持っていたんですが,今回部活として取り組む中,チームとして活動することの面白さや楽しさに気づかせてもらえました。人間として,プレイヤーとして成長できた感覚があり,こうした機会を設けてくださったことに感謝したいです。
ないな選手:
大舞台でプレイするのも初めてですし,インタビューでもしっかりしゃべれなかったんですが,回数を重ねるうちにちゃんと受け答えできるようになったので,いい経験になったと思います。また,eスポーツの魅力を分かりやすく解説してくれ,新しい人が入りやすいようにしてくれたことには感謝しかないです。
――Yunocy選手は準決勝戦でmomo tqt選手の代わりに出場されました。この試合では序盤は苦しい展開が続きましたが,焦りは感じていましたか?
Yunocy選手:
本当に緊張がひどかったので,プレイよりは声だしでチームに貢献するしかないと思い,できるだけしゃべっていました。
――学生として選手が入れ替わっていく中での3連覇は大変だったと思います。先輩から後輩へ継承されていく「N高らしさ」のようなものはありますか?
momo tqt選手:
N高では先輩・後輩のコミュニケーションがしっかり取れているんです。だから,今年卒業していく3年生たちもこれまでと同じように後輩たちをコーチングできれば,4連覇も目指していけるんじゃないかなと思います。
Acciy選手:
N高では「LoL」をプレイしている人が他の学校に比べると多いです。練習相手が見つからないときに,そうした人が協力してくださったりします。また,強い先輩たちが後輩に教えるといった風土もあります。僕自身も1年生に教えていたりもしますし。みんな「LoL」が好きなので,強制されてではなく,自主的なんです。
――部活として取り組む上で,コーチの存在は大きいものなのでしょうか?
momo tqt選手:
凄く大きいですね。コーチがいないチームだと,自分たちの何が悪かったのか分かりませんし,新しい戦術というのも自分たちだけでは出てきにくいですから。しっかりとした知識を持つ,プロ経験のある方がコーチしてくださるというのは,こうした課題に対しての正解を持っているということですし,本当に頼もしいですし,安心感があります。
――3年生の中で,プロになることを考えておられる方がおられましたら,皆さんが考える「プロを目指す上でN高に入るメリット」について教えてください。
ないな選手:
やはり,ちゃんとしたコーチがいることでしょうか。N高に入る前はチームでプレイするゲームへの知識をまったく持っていなかったんですが,コーチのおかげでプレイヤーとして成長でき,プロになりたいと考えるようになりましたから。
Acciy選手:
他の学校ではなかなか得られない,プロとの交流機会があることだと思います。普通だとそうしたチャンスもあまりありませんが,N高だと先輩に紹介していただくことで,プロにお話を伺えたりもして,勉強になりますね。
Yunocy選手:
普通にプレイしていても,自分が強くない限り,強い方から教えていただくような機会もなかなかありません。でもN高だと同じ学校の生徒ということで,こうしたチャンスが得られるのが強みです。
momo tqt選手:
N高はLJLで活躍されている方や,LJL関係者の方と関わる機会があるのがメリットだと思います。
――ありがとうございました。