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タリバンが米軍の顔・指紋認証装置とデータベースを押収し現地協力者に報復リスク、人権団体が基本的な防御策を助言

Man using mobile phone for facial recognition. imaginima via Getty Images

アフガニスタンでは米軍が撤退開始後、反武装勢力タリバンが首都カブールを制圧し、16日には勝利宣言。日米や各国が支えてきたガニ政権は崩壊し、タリバンが実権を掌握したことで大変な混乱のもとにあります。

その中で憂慮すべき事態のひとつは、米軍の顔認証・指紋認証装置とデータベースがタリバンに押収されたことです。これらには軍関係者だけでなく、連合軍に協力したアフガニスタンの人々の身元データも含まれており、タリバンから報復される恐れがあるためです。

こうした事態に関して、ある人権団体が、iPhoneのFace IDが身を守るために活用できる、との見解を表明しています。

まず「米軍が使っていた生体認証キットがタリバンに押収された」ことを伝えたのが、米インターネットメディアのインターセプト(The Intercept)でした。同メディアは、かつてCIA元職員のエドワード・スノーデン氏が持ち出した米政府の機密文書(いわゆるスノーデン文書)を公開したことで知られています。

米統合特殊作戦司令部(JSOC)関係者と3人の元米軍関係者によると、このキットはHIIDE(Handheld Interagency Identity Detection Equipment)と呼ばれる装置であり、虹彩スキャンや指紋などの生体認証データおよび経歴情報が含まれており、大規模な中央データベースにアクセスするために使用されるとのことです。

こうした生体情報は軍関係者だけでなく、外交関係者からも集められていた模様です。たとえば最近の米国務省の請負業者による求人広告では、HIIDEなどの使用経験がある生体認証技術者を募集しており、米国大使館や領事館が雇い入れる人材の審査や現地のアフガニスタン人の登録の支援が謳われていたとのことです。

そして人権団体のHuman Rights Firstによると、この技術には顔認識も含まれており、これを欺くことは極めて困難だと述べられています。つまり、従来は協力者が米軍や連合軍などと働くための顔パスとされていた生体情報が、一転して「タリバンへの敵対者をあぶり出す」ことに利用されてしまう可能性があるわけです。

Human Rights Firstいわく、一般的な監視カメラに対する基本的な防御策は「下を向くこと」であり、照合が成功する確率が下がるそうです。また顔かたちを変えるために化粧品を使うことも推奨。ただし、それでも成功するのは難しいとしています。

そして、こういった対策が有効かどうかを確かめる簡単なテストとして有効と紹介しているのが、Face IDというわけです。

ただしここでも、iPhoneのFace IDを欺ければ絶対に安全だ、と言っているわけではありません。同団体はFace IDを「かなり原始的な技術」と評しつつ「スマートフォンを欺くことができなければ、より高度な技術を用いた顔認証技術を欺くことはできないでしょう」として、最低限クリアすべき水準だと示唆しています。

米国の顔認証装置により支援者のデータベースを作成することについては、タリバンなどの敵勢力にハッキングされる危険性があるとして、以前から懸念が表明されていたようです。まして、それらが敵の手に渡った場合のさらなるリスクに関してはあまり考慮されてなかったと思われますが、今回のHuman Rights Firstの助言が必要な人々の元に届くよう祈りたいところです。

(Source:The InterceptHuman RIghts First。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)