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アリスアブ
アリスアブの幼虫。
この種はトビイロケアリの巣で暮らしています。
生息数も多く、日本で最も簡単に見つけられる種で、今までたくさん飼育をしてきたのですが、実は幼虫が餌を食べる場面を一度も見たことがありませんでした。
「アリの巣の生きもの図鑑」では、アリの幼虫やサナギを食べることが分かっている。と書かれているのですが、自分の目でその光景を見たことがなかったので、アリの幼虫を食べると言っても、ムシャムシャ食べるのか、ゴックンと丸飲みするのか、チューっと吸うのか、その方法も知りませんでした。
アリスアブの話をする機会は意外と多いのですが、自分の目で見ていないことを自信をもって説明はできないです。
日本で最も普通に見られるアリスアブの食事場面を見たことがなかったのが、ずっと心残りでした。

ヒメルリイロアリスアブ
アリスアブの仲間で、唯一捕食場面を見たことがあったのは、アズマオオズアリの巣で暮らすヒメルリイロアリスアブです。
この種はアズマオオズアリの幼虫の体液を吸います。
上の写真でアリスアブの体の淵に付いている白いものは、体液を吸われて萎んでしまったアリの幼虫です。
体液を吸う以外にも、去年はアリの幼虫を丸呑みにする様子も観察できました。

アリスアブ
トビイロケアリの巣の中での様子。
こんな感じに、一つの巣から複数のアリスアブを見つけることができます。

アリスアブ
巣の壁に張り付いて生活をしています。

アリスアブ成虫
こちらが成虫です。

アリスアブ
アリスアブの仲間は世界中にたくさんの種類があり、それぞれが決まった種類のアリと関係を持ちます。

アリスアブ
話はトビイロケアリの巣で暮らすアリスアブに戻ります。
今年も飼育をしているのですが、いつもは巣の中でじっと動かないことが多いのですが、この日は顔を出し入れして活発に動いていたのです。
もしかししたら何か見れるかもしれないと思い、しばらく観察していると、アリの幼虫を体の下に引っ張り込んだのです!
お~!これはもしかして長年見たかった食事場面?
しかし、体の下に持って行ってしまったので、上から見ていても何をしているか分かりませんでした。
そこで、裏側から見れるように別の容器に移して観察をしてみました。

アリスアブ
アリの幼虫を発見。

アリスアブ
頭部を出し入れして体の下に引っ張り込みます。

アリスアブ
アリスアブの幼虫は、裏側は柔らかいですが上側は固いので、このように下に隠すことで働きアリに怪しまれずに食事ができます。

アリスアブ
アリの幼虫が一気に萎みました!

アリスアブ
短時間で一気に萎むのです。

アリスアブ
硬い頭部はそのままですが、柔らかい体はシワシワになってしまいました。
よく観察してみたところ、アリの幼虫の下半身に口を刺して体の中身を吸っているようでした。
最後は固い頭部の中にまで口を入れて中身を残さず食べている様子が観察できました。

アリスアブ
中身をすべて食べ終わると、残った皮は外に吐き捨てたのです。
今回は連続して複数の幼虫を捕食する様子を観察しましたが、すべてがこの方法で、丸飲みにすることはありませんでした。
またアリの繭も近くに置いてみたのですが、こちらには興味はない様子でした。


動画でも撮影できましたので是非ご覧ください。
こんな危険で巨大な生物が巣に入り込んでいるというのに、アリたちは全く気が付いていないのがすごいですね。

今回観察をして、ある疑惑が出てきました。
以前ヒメルリイロアリスアブがアリの幼虫を丸飲みにしたと紹介しましたが、たしかにあの時一時的に口には入っていましたが、もしかしてあの後中身だけ吸って吐き出したのではないかということです。
これに関しては今後再び観察してみようと思います。

アリの巣のお客さん
丸山 宗利
あかね書房
2015-07-30


アリの巣の生きもの図鑑
貴, 小松
東海大学出版会
2013-03-01


アリとくらすむし (ふしぎいっぱい写真絵本)
島田 たく
ポプラ社
2015-04-03


アリのくらしに大接近
丸山 宗利
あかね書房
2015-07-30