バイデン大統領は、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の、パウエル議長を再任すると発表した。
これを受け、23日のアジアの外国為替市場で、円相場は一時、1ドル = 115円台をつけた。
パウエル氏は、トランプ前政権時代の2018年に、FRBの議長に就任し、2022年2月が任期となっていた。
アメリカのバイデン大統領「アメリカ経済に、大きな可能性と不確実性がある今、FRBには安定と独立性が必要だ」
バイデン大統領は、22日の会見で、パウエル氏の再任について、新型コロナウイルスの感染拡大後に、大規模な金融緩和で、経済を回復軌道に乗せた成果を強調した。
アメリカ経済は、インフレへの懸念が強まっていて、パウエル氏は、物価の安定に向けた手腕が問われることなる。
再任は、議会の承認を経て正式に決まる。
そして、パウエル議長の再任発表を受け、アメリカが今後、利上げに向かうとの見方が強まり、円を売ってドルを買う動きが加速した。
一時、1ドル = 115円台まで下落し、およそ4年8カ月ぶりの円安ドル高水準となった。
このニュースについて、経済アナリストの馬渕磨理子氏に聞く。
三田友梨佳キャスター「市場の分析にくわしい馬渕さんの目には、円安の進行、どのように映っていますか」
馬渕磨理子氏「今、日本よりアメリカの金利が高まりつつあります。この高い金利に引き寄せられるように、円を売ってドルを買う動きが活発になっていますので、しばらく、円安基調は続くと思われます。これからさらに円安が加速して、120円台に向かって進む可能性があります」
三田キャスター「円安は、輸出企業にとってはプラスとなりますが、輸入企業にとってはマイナスに働きますから、企業経営への影響も大きいですよね」
馬渕氏「おっしゃるとおりで、例えば輸出企業の代表であるトヨタの決算を見ると、資材の高騰による圧迫はあるんですけれど、為替の円安によって、営業利益が4,300億円分かさ上げされて、通期の見通しを上方修正しました。一方で、輸入企業を代表する電力大手10社の決算は、火力発電に使用するLNG(液化天然ガス)などの価格高騰が、重くのしかかります。このため、東京電力ホールディングスと中国電力の2社が、赤字に転落する見込みとなっています。これは先々、電気代の値上げとなって、暮らしを直撃すると思われます」
三田キャスター「あとは、23日の円安の加速は、アメリカのFRB議長に、パウエル氏が再任されたことが影響しているようですが、こちらについてはいかがですか」
馬渕氏「今回のポイントは、金融政策の“継続性の確保”です。今、アメリカは世の中に出回るドルを減らして、テーパリングと呼ばれる緩和の縮小と利上げに向かう、重要な転換期になります。アメリカは、景気が力強く回復して、人々の給料が上がるスピードよりも早く、物価の上昇が続いているんです。どこかで、加熱した景気を抑える利上げを行う必要があります。そのタイミングを、慎重に図ろうとする既定路線のパウエル氏の再任が望ましいと、バイデン大統領は判断したと思います。実際、市場との対話を重視するパウエル議長の再任が伝わると、ダウは一時、300ドルを超える上昇となり、市場も歓迎しているようです。バイデン大統領にとって、経済は政権維持の命綱ですので、やはり日本経済に大きな影響を与えるドル高円安は、しばらく続くと思われます」
三田キャスター「日本とアメリカとの金融政策の方向性の違いから、このまま円安が続くとなると、コロナ禍からの経済回復が期待される中ではありますが、家計や企業の負担が増えることで、日本経済の足を引っ張る懸念も強まりそうです」